#650 ZEK3 - Feb. 2014 Knuttel House

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2014年2月13日(木) 入谷・なってるハウス

Reported & photographed by 剛田 武

 

ZEK3:
清水くるみ(p)
米木康志(b)
本田珠也(ds)

[Set List]

1st Set:

  • WE’RE GONNA GROOVE
  • KASHMIR
  • THE WANTON SONG
  • SINCE I’VE BEEN LOVING YOU
  • FOUR STICKS

2nd Set:

  • OVER THE HILL FARAWAY
  • WHAT IS AND WHAT SHOULD NEVER BE
  • FRIENDS
  • THE RAIN SONG
  • IMMIGRANT SONG

Encore
– ROCK AND ROLL

 

絶頂と悦楽と感動の彼方へと聴き手を誘うトリオ。

1月21日新宿ピットインに於ける「本田珠也SESSION」で、本田がヘヴィメタル・バンドのTシャツを着ていたのが気になり、彼のブログをチェックしたところ、たいへん興味深い記事を見つけた。「Led Zeppelin そして ZEK3 へ」と題されたその記事の中で、本田はエルヴィン・ジョーンズにボンゾ(ジョン・ボーナム)を感じ、ジャズも楽しそうだと思ったのが、ジャズを始めたきっかけだと述べている。「これほどゼップ(いやボンゾかな)に造詣の深いジャズ(とは微塵も感じていないけど)ドラマーも、いないと思います」と記す通り、その記述にはロックマニアならではのこだわりと愛情が溢れている。ツェッペリン好きなロック少年が父親と同じジャズの道を志した大きな動機のひとつは、ボンゾになれると思ったからに違いない。

灰野敬二、近藤等則、ナスノミツルと繰り広げたピットインでのセッションはもちろん、それ以前に観たペーター・ブロッツマンや坂田明との共演でもいわゆるジャズを超えた激烈プレイを聴かせた本田が、「このバンドを聴くということは、僕のドラムが解かるということ」と語るZEK3(ゼックトリオ)は、Led Zeppelinの作品のみを演奏するピアノトリオである。メンバーは本田(ds)と清水くるみ(p)と米木康志(b)。

本田珠也の父・本田竹曠に師事し、84年にソロ・デビューした清水は、男勝りの剛腕プレイで知られる実力派だが、ジャンルに囚われない柔軟な感性は女性ならでは。清水のデビュー作にも参加した米木は今年62歳のベテラン・ベーシストで、珠也と同時期に竹曠率いるネイティヴ・サンのメンバーだった。

ZEKとはレッド・ツェッペリンの略称「ZEP(ゼップ)」と「絶句(ゼック)」をもじった名前で、こんな破天荒なユニットは世界に唯一なのでみんなが絶句するだろう、という意味。結成のきっかけは本田の記憶によれば、以前清水とセッションをした時にツェッペリンの楽曲があり、ZEP好きな本田が食いついて「ツェッペリンの曲だけのセッションをやろう」と提案したことだいう。結成の経緯についてはメンバー間で記憶の食い違いがあるが、ZEPの曲に即興演奏の可能性を感じたことが根本にあるのは間違いない。

清水はレッド・ツェッペリンを、「森羅万象全てがある事においてはバッハはじめ、巨匠達と同列」と捉え、最大限の敬意を持っている。米木は1972年のレッド・ツェッペリン唯一の来日公演を観たという経歴がある。2003年末に一回きりの予定で行ったセッションに手応えを感じた三人は意気投合し、2004年からレギュラー・ユニットとして地方ツアーを含むライヴを積極的に行うようになり、今年で結成10周年を迎える。関連プロジェクトとして林栄一(as)を加えたZEK4や大編成のZEKオーケストラもある。

この日は、西荻窪アケタの店と並ぶフリー・ジャズの拠点、なってるハウスに初出演。清水と米木が楽譜を見ながらぎりぎりまで曲順やアレンジを話し合っている。ステージに上がった3人はお揃いのブラックの「ZEK」Tシャツ。清水が軽く挨拶し、演奏曲目は完全には決まっていないと語る。その場で内容を決めるスタイルは即興演奏ならでは。

メロディーやコード進行はツェッペリンのオリジナルに準じているので、いわゆるジャズ的なテーマとソロの繰り返しではなく、ストーリー性のあるドラマチックな演奏が展開される。その流れの中で各自が時に破天荒に、時にメロディアスに繰り広げるプレイが面白い。フリー・ジャズのスポンテニアスな即興ではなく、ひとつのグルーヴに貫かれたアドリブは、3人が進む方向を同じくしているが故に、完全即興よりずっとエモーショナルで、ずっとエクストリームで、ずっとジャンルレスな表現になる。ZEPフリークらしく、セットリストはかなりレアな曲で占められた。実は筆者はツェッペリンはライヴLP『永遠の詩』収録の有名曲以外は詳しくないので、聴き覚えの無い曲が多い。が、ツェッペリンならではのブルース感覚とエキゾチックな風情が強調された演奏に聴き手の心は激しく幻惑される。もちろん歌いながら演奏するミュージシャン自身も同じく『Dazed & Confused(幻惑されて)』いるに違いない。

アンコールを含むラスト2曲の有名曲が、観客を巻き込んで『Celebration Day(祭典の日)』のようなカタストロフをもたらした。このトリオに絶句するのは演奏に接したことが無い者だけだろう。誰でも一度ライヴを経験すれば、類い稀な「絶頂感」(Z)と「悦楽」(E)と「感動」(K)に包まれることは間違いない。

このトリオをぜひスタンディングのクラブかフェスティバルで聴いてみたい、と思っていたら、7月26日に宮崎フェニックス・シーガイア・リゾートで開催されるジャズフェス「UMK Jam Night」に出演が決まったとのこと。ZEK3を南国の太陽の下で楽しめるとは、『Stairway To Heaven(天国への階段)』を上るような気持ちがするに違いない。

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筆者注:『』内はレッド・ツェッペリンの曲名です。

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剛田武

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら、「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」 http://blog.goo.ne.jp/googoogoo2005_01

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