Jazz and Far Beyond
まともに各項目に1点づつ推すという理想にはほど遠かった。しかし、好意的な解釈をすれば、それだけ甲乙つけがたい秀演が多かったということになるだろう。
ベストというからには一つに絞るべきなのだろうが、今回はあえてベルリン・ジャズ祭で観た2つのヨーロッパのオーケストラ、アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ率いるグローブ・ユニティ・オーケストラ50周年記念コンサートと、フランスの若手イヴ・リッサのホワイト・デザート・オーケストラを挙げたい。
エヴァン・パーカー、高橋悠治、異能のデュオ。
今、最も注目したいピアニスト、シャイ・マエストロは、1987年2月イスラエル生まれの29歳。繊細で色彩豊かなピアノの表現力と絶妙なタイム感を持ち、オリジナルな音楽世界を聴かせる。2016年6月には自己のトリオで来日し、期待通りの美しく素晴らしい演奏を聴かせてくれた。
ダーク系のコスチューム(小橋は黒のドレス)で登場した3人が演奏したのはチェンバー・ジャズとでもいうべきか、かつてのMJQを彷彿させるような雰囲気を醸し出す。
初めて訪れた中国で、しかも前衛音楽専門のフェスティバルを体験できたことは、2016年というよりも50余年の人生の中でも特筆すべき出来事だった。
ピアノは残酷な楽器で、叩きだされたコードひとつで力量が知れてしまうが、カウフマンのピアノを聴けばその筋の良さが瞬速で伝わる。集中力も並外れている。瀬尾高志のフレキシブルな対応力には定評があるが、この日も楽器間の歩み寄りの「極み」と思えるような忘我の瞬間がいくつかあった。