Jazz and Far Beyond
ジム・ホールから始まる、コンテンポラリー・ジャズ・ギタリストの系譜。その正統な後継者に君臨し、ジャズ・アメリカーナを体現するジュリアン・ラージ。イスラエル出身のギラッド・ヘクセルマンは、その牙城に肉迫するニュー・アルバム『Ask For Chaos』を、発表した。ニューヨークのSmallsでのリリース・ライヴは、ギラッドのポテンシャルを100パーセント発揮するものだった。コンテンポラリー・ジャズ・ギターを牽引するこの2人の今後に目が離せない。
今年も、というべきか。とりわけこの数年は、ライヴの現場に足を運ぶことが多くなり、その分CDを聴く機会が極端にといっておかしくないほど減った。
3者それぞれ、名匠にふさわしい技量があればこそ、超越した音楽観があればこその演奏だった。
初来日のマタナ・ロバーツが、1回かぎりのステージで、圧巻のアルトソロを披露した。そのブロウには血や情や泥が溢れんばかりに詰まっていた。
雑多なものが混ざり込み、降って沸いたようなアイデアがすんなりと演奏につながっていく。
初来日のマタナ・ロバーツは、アルトサックス1本を抱えて満員の観客の前に登場し、実に生々しい音楽を聴かせてくれた。
マドリッド出身のピアニスト、ルイス・フェルナンド・ペレスによる、アルベニスのピアノ作品の集大成、遺作にして難曲の<イベリア>全曲演奏。その力強さと繊細さとグルーヴに圧倒され、スペインの魂が伝わるような名演だった。
2018年、数々体験した来日ミュージシャンのライブの中で、ひときわ鮮烈な印象を残したのはケヴィン・コーコランのパーカッションプレイだった
リューダスは4日間を通じ気力、実力ともに充実し切っており胸を借りるつもりの日本勢をインスパイアしつづけ、それに応えた日本勢と素晴らしい演奏を展開した。
この10月に経験したグラスパーのライブは、涙が溢れたというような感動を味あわせてくれるものではなかったが、筆者にとって多分一生忘れないであろう数少ないライブ体験になったことと思う。グラスパーは確実にマイルスを継いでいる。つまり、その時代を包括して次に進む音楽を構築するという作業だ。しかもマイルス同様ライブでのクリエイティビティーが実にスリル満点だ。
濃いコーヒーで眠気と闘いながらパソコンの画面で眺めた異物感たっぷりのパフォーマンスは、間違いなく今この瞬間の生のライヴ体験だった。
過激さの呪縛を超越した、芳醇と円熟による凄みの境地。