
このディスク 2020(国内編)
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#01 『Kondo IMA21/Live Typhoon 19』
しかし、カッコいい古稀がいるものである。近藤等則の功績のひとつを考えたとき、ジャズメンの姿から暗さや小難しいイメージを開放し、理屈抜きに「カッコいい」と一般に知らしめたことも外せない。そのプレゼンスそのものがひとつのアイコンであり、宇宙であった。
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#02 『浦邊雅祥 / Mobilis in Mobili』
浦邊にとって音の鳴り方と魂の震え方に違いはない。両者が同じ振動で波打つことが、浦邊雅祥の音楽の魅力であり怖さなのだと思う。
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#03 『山田貴子トリオ/Remembrance -記憶-』
自分は ずっとこのような音を脳髄の奥底できっと無意識のうちに待ち焦がれていたのだろう。だからこの作品が確実に私のなかに決して消え去ることのない”記憶という名の楔”となり、また一つそして深くこの身に打ち込んでくれた。
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#04 『Great 3:菊地雅章|ゲイリー・ピーコック|富樫雅彦/コンプリート・セッションズ1994』
『Great 3:Masabumi Kikuchi|Gary peacock|Masahiko Togashi/Complete Sessions 1994』絶頂期にあった3者がテーマから予断を許さない展開を見せるスリルと傑出した内容に何度聴いても惹き込まれるのだ。
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#05 『福盛進也/アナザー・ストーリー 月・花』 『Shinya Fukumori / Another Story – Moon – Flower』
ECMからデビューしミュンヘンを拠点に活躍するドラマー福盛進也が設立した新レーベル「nagalu」の初リリースとなる2枚組アルバム。藤本一馬、林正樹、佐藤浩一をはじめ個性的なアーティストが集結し、新しい物語が動き始めた。
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#06 『片山広明4SAX / 刻 HASHed Music』
片山広明、最後のバンドによるライブ盤。どこまでも生々しい傑作である。
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#07 『Great 3:菊地雅章|ゲイリー・ピーコック|富樫雅彦/完全版 セッションズ 1994』
『Great 3: Masabumi Kikuchi|Gary Peacock|Masahiko Togashi / Complete Sessions 1994』(ライヴ盤)キレのいいピアノのサウンドと、ベースが音像を固める。パーカッションはやや音像を引いている。ここは私の判断で、かぶりを避けた。
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#08 『林栄一 Mazuru Orchestra/ Naadam 2020 』
とにかく、骨太のオーケストラによる、ぎっしり中身の詰まった演奏に、自由奔放さもワンセットになっているのが、この上なく貴重なことだと思う
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#09 『Sabu Toyozumi+Mats Gustafsson / Hokusai』
豊住もグスタフソンも、そのプレイは独自の身体の方法論に基づくものであり、アスリート的なものでも、音楽の職人的なものでもない。本盤を聴くと、ふたりが互いの音に呼応しあうプロセスを追体験することができる。
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#10 『阿部海太郎 / 世界で一番美しい本』
『Umitaro Abe / Le plus beau livre du monde』浮かんでくるアイディアにはデリカシーと密かなユーモアが込められて、まるで音を慈しむような、作者の愉しみが伝わる「しごと」ぶりだ。
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#11 『藤井郷子ピアノ・ソロ/葉月』
『Satoko Fujii Piano Solo / Hazuki』100枚(!)に近い田村夏樹=藤井郷子の吹込作品作品の中で、私が一押ししたい作品である。
このディスク 2020(海外編)
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#01 『Sun Ra Arkestra / Swirling』
『サン・ラ・アーケストラ/渦を巻く』『クトゥルフ神話』や『スター・ウォーズ』や『グイン・サーガ』の異端音楽版とも呼べる、壮大なるSun Ra Mythology(サン・ラ神話)が着実に語り継がれていることが証明された。
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#02 『The David Liebman Trio with special guest John Ruocco / Lieb Plays The Beatles』
『デイヴ・リーブマン・トリオ w Special Guest ジョン・ルオッコ/リーブ・プレイズ・ザ・ビートルズ』現代ジャス界の求道者:デイヴ...。おいちゃんのなかではもう「あのかた」を遥かに超えた存在である。
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#03 『Masayuki Takayanagi=Nobuyoshi Ino with Masabumi PUU Kikuchi / Live at Jazz inn Lovely 1990』
『高柳昌行=井野信義 with 菊地雅章 /ライヴ・アット・ジャズイン・ラブリー』』高柳が没する半年ほど前の井野信義、菊地雅章との演奏だが長年連れ添った井野がコントロール・タワー的役割を演じている。
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#04 『Tigran Hamasyan / The Call Within』 『ティグラン・ハマシアン / ザ・コール・ウィズイン』
音楽の地平を切り拓く存在として、ジャズミュージシャンたちの尊敬を集める、アルメニア出身の鬼才ピアニスト、ティグラン・ハマシアンが、自身の夢のような内面世界を探求する旅へ向かう。
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#05 『アントニオ・アドルフォ/ブルーマ〜ミルトン・ナシメントに捧ぐ』
『Antonio Adorfo / BruMa』アントニオ・アドルフォのナシメント集を彼の功績を称える意味でも、今年のベスト作に推奨したい。
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#06 『アヴィシャイ・コーエン/ビッグ・ビシャス』
『Avishai Cohen / Big Vicious』素晴らしい録音技法の重ねが引き出す音像に陶酔。気持ちがいい。
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#07 『Hard To Understand/Jaromír Honzák (ヤロミール・ホンザーク)』
全般に存在しない映画のための映画音楽のような曲が多い。チェコを代表するこのベーシストの作品をまだ聴いていない人に、まず聴いてほしい一枚だ。
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#08 『Carla Bley, Andy Sheppard, Steve Swallow / Life Goes On』
淡々と演奏していながらも底知れないユーモアと機微を含み持つ音楽である。3人とも自然体そのものだ。余計な力など何も感じられなかった。
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#09 『Marcin Wasilewski Trio, Joe Lovano / Arctic Riff』
『マルチン・ヴァシレフスキ・トリオ、ジョー・ロヴァーノ/アークティック・リフ』アイヒャーはラヴァーノとヴァシレフスキ・トリオから音楽のエッセンスをあっというまに掬いとってしまう。そうして5分を少し超えるほどの11のトラックに封じ込め、キュレートしてみせているのは神業に近い。
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#10 『Maria Schneider Orchestra / Data Lords』
『マリア・シュナイダー・オーケストラ/データ・ロード』オーケストレイターとしてのマリア・シュナイダーの評価を決定的なものにするダブル・アルバム
このパフォーマンス 2020
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#01 喜多直毅クァルテット『異土』
深層から絞り出されるメロディの儚(はかな)さはリアリティへの絶望を映す鏡だ。なぜ沈黙や郷愁の残滓に心震えるのか。それを意識して改めて気づく薄ら寒い現況がある。
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#02 2020年 不失者コンサート
かつてハードロックの突然変異と呼ばれた不失者は、決して特殊な異端者ではなく、音楽表現の在り方としては正統派に他ならない。それはコロナ禍が完全に収束しない中、演奏するのが待ちきれないとばかりに出演を快諾したゲスト・ミュージシャンの満足そうな笑顔を見れば明らかだ。
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#03 Theo Croker, Blue Note NYC【ライブ配信】
パンデミックで3月からライブが皆無だった2020年、ライブ配信のおかげで普段見ない、または見られないようなアーティストのライブを、無料もしくはお手頃な値段でたくさん鑑賞する機会に恵まれた。そんな中でやはり筆者のお気に入りのTheo Croker(シオ・クローカー)のステージは最高だった。いつ聴いてもこんなにドキドキさせてくれる音楽はマイルス以来だ。
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#04 山田貴子 & 類家心平 first tour
後は二曲のアンコールまでそんな一瞬たりとも気を抜かぬ二人の演奏に心底痺れ、夢中で拍手をし、両の瞳は涙で霞んだ…。
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#05『JAZZ ART TRIO』with 沖至
開催直前に病没した沖至の姿は会場には見かけられなかったが、沖至のソウルと音楽はまちがいなく会場にみなぎっていた。フェスティバルのプロデューサ−3人が組んだユニット「Jazz Art Trio」に沖はスクリーンから参加した。
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#06 小曽根 真 Welcome to Our Living Room 〜 自宅から53夜連続のピアノソロ配信
ジャズ、クラシックなどのジャンルを超え世界で”ボーダーレス”に活躍するピアニスト小曽根 真が、2020年4月9日から5月30日まで53夜にわたってピアノソロ配信を敢行し、ジャズファン層を拡大し音楽を発展させ、以降のライヴ再開に向けても大きな力と影響を与えることになった。
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#07 NYC Winter JazzFest 2020 – Mark Guiliana etc NYCウインター・ジャズフェスト 2020〜マーク・ジュリアナ他
ニューヨークの20会場で、150グループ、600人以上のアーチストが出演する世界最大級のジャズフェスティヴァル。最先端のジャズが生まれる瞬間を楽しめる特別なイベントは2020年1月かろじて開催された。
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#08 藤山裕子・谷中秀治
ニューヨーク在住のピアニスト藤山裕子と、富山在住のベーシスト谷中秀治の共演。自由な即興演奏を心から楽しむような藤山の姿が強く印象に残った。
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#09 LRK Trio Live at Bonds Rosary
緩急つけるという言葉では追いつかないスリルが織り込まれていく。LRK Trioのライヴの迫力がこれほどとは想像しておらず、圧倒されるばかりだった。
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#10 清水くるみトリオ plays Porgy and Bess
ステージは、終始くるみさんの極めて強靭なタッチとキレのある明快な主張、さらには米木・原両氏の確かな技巧等に依る間口・奥行き共に広く大きな世界観を感じさせる立体感のあるものであった。
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#11 照内央晴+柳川芳命+Meg Mazaki
三者とも、そのサウンドを「このような」と一言で説明することができない。それがかれらの音楽性の深さと広さを物語っている。
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#12 SAVE THE CLASSICS FOR THE NEW ERA Vol. 1, 2, 3
ピアニストの林正樹は公園通りクラシックスの存続を願い、オンライン・イベントを3回に亘って主催した。コロナ禍で海外ミュージシャンのとの交流がリアルでは難しくなっている昨今ゆえ、出演者は日本在住ミュージシャンがほとんど。プログラムからもわかるようにローカルシーンの豊かさと日常の大切さを改めて気づかせてくれた。
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#13 挾間美帆 Neo-Symphonic Jazz 芸劇 2020
あの巨大な東京芸術劇場のステージに勢ぞろいした50名を超えるジャンルを超えた巨大な演奏者たちを見事にコントロールし、テキパキと指示を出し、カッコよくまとめ上げた指揮ぶりには好感が持てた。