JAZZ meets 杉田誠一 #107 「齋藤 徹」

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text by Seiichi Sugita 杉田誠一
photo: copy & pasted from Facebook Tetsu Saitoh as per request by the author

 

2019年5月18日11時36分、コントラバス奏者 齋藤徹さんが、ガンとの闘病生活を経て死去された。享年63。 心より、ご冥福をお祈り申し上げます。 合掌。
齋藤徹を語るとき、まずは、バール・フィリップスに触れなくてはならない。バールは、世界で初めてソロ・インプロビゼーション (LP両面) をものしたコントラバス奏者である。 ぼくの記憶が定かであれば、横浜馬車道のバンクアートで、齋藤徹とバールは、いわば同志として、果てしない交感=DUOを未明へと開示したのだ。 齋藤徹とバール愛用コントラバスは、くしくもライオン・ヘッドのオールド (19世紀のガン・ベル) で、2人は、その前年、いうなれば同志の証としてお互いのコントラバスを交換する。 齋藤徹自身に聞いたところでは、ソロ・アルバムは、元々は、共演者が予定されていたのだけれども、ドタキャンとなり、仕方なくソロとなったそう。ちなみに、ぼくの愛聴盤は、 Barre Phillips『Un accompanied Barre』 (Music Man SML601 /1968年10月30日、ロンドン聖ジェームス・ナラウンド教会) バールのコントラバスは、噴出しようとする情念のほとばしりをクールにコントロールすることにある。 リズム・セクションに徹するという伝統的な拘束を最初に解放せしめたコントラバス奏者である。
バールの流れを汲んだ齋藤徹が初めて出演することになった (@Bitches Brew) のは、奇しくもあの「3. 11」である。 その夜、やっと携帯で連絡がとれたのは、23時近く。まだ、齋藤徹は、多摩川の手前であった。Bitches Brew は、神奈川県横浜市神奈川区西神奈川に位置する。 後日、齋藤徹 @Bitches Brewは、実現する。

抑えきれない情念をとてつもなく静謐にコントロールするという意味では、バール・フィリップスと齋藤徹は、明らかに表現の根底でしっかり通底する。 しかし、バールと齋藤徹との明確な違いは、齋藤徹がすぐれて日本的な個有の様式美を確立していることなのだ。初めての @Bitches Brew で、さりげなく齋藤徹は、限りなく自然に、コントラバスをまるで琴のように優しく床にねかせる。 そして、正座して、指だけではなく、強靭に弓も駆使するのである。 それから、すっと静かに音を立てずに、コントラバスとともに極めてスポンティニアスに立ち上がり、その流れに乗って、演奏をつづけるのです。 それは、日本固有の様式とも思えるが、ジャズ特有の「間」の重さを志向してのことであろうか? 齋藤徹は、バール・フィリップスと深く激烈に相互浸透しつつも、自ら個有のスタイルを確立し、未踏の「個」たちと、永遠への発展途上を勇猛果敢に志向しつつあった。 あらためて、齋藤徹さんのご冥福をを深くお祈り申し上げます。 合掌。

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杉田誠一

杉田誠一 Seiichi Sugita 1945年4月新潟県新発田市生まれ。獨協大学卒。1965年5月月刊『ジャズ』、1999年11月『Out there』をそれぞれ創刊。2006年12月横浜市白楽にカフェ・バー「Bitches Brew for hipsters only」を開く。著書に、『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』『ぼくのジャズ感情旅行』他。

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