JAZZ meets 杉田誠一 #112 「追悼 橋本孝之」

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photo above©杉田誠一 LtoR 橋本孝之・sara・林聡@Bitches Brew 2014.6.22

text & photos by Seiichi Sugita 杉田誠一

ジャズは、ジャズを超えることでしかジャズでは在りえない。永遠に。
すべては、阿部薫 (1949~1978) から始まった。その正系が浦邉雅祥(as)、川島誠(as)、橋本孝之(as)である。阿部薫と出会ったのは1968年、川崎 OLEO だけれども、浦邉雅祥、川島誠、橋本孝之のホーム=根拠地は、くしくも Bitches Brewである(と言ってもいいのでは?)。
その「永遠」を共にみた現場主義の視座で、あまりに突然に逝ってしまった橋本孝之についてしっかり書きとどめておきたい。
別記ドキュメントにあるように、初めて橋本孝之を招聘することになったのは、リキッド・ライトの雄サトウ・アキラの紹介による。「大阪に凄い奴がいる。あの<非常階段>とたったひとりで渡り合ったんだからね」。
こうして、橋本孝之が拠点としているギャラリー・ノマルのCD/AD 林聡、橋本孝之が10年間DUO活動を続けた”.es”のsara(p)らノマルのアーティスト、サトウ。アキラとそのホットな仲間たちでいっぱいになる。
橋本孝之のアルトがすさまじいまでのスピードで音を発した瞬間、ぼくにとってはあまりになつかしい殺意にも似た緊張と戦慄が走る。
そう、これは1968年、旧赤線地帯の川崎OLEOで初めて体験した気配というか空気感である。瞬時にして時空を変質せしめたのは、阿部薫である。
かつて阿部は言った。
「僕の音楽は胎盤さ。コミットするんじゃなくて生殖だ」(アサヒグラフ 6/19, 1970)。
そう、交感するのは自から生みだす音なので。瞬時に対峙しつつもただちの乗り超え、さらなる音を生み出す。
真摯なまでに渇望するのはひたすら創出すること。創造とは、研ぎ澄まされた感覚で自己否定し続けること。
「閃光する音」といったのは、川島誠だっただろうか?同じく阿部薫の正系ならではの表現ではある。
「間」と激烈に計りあうインプロバイズドを経て、到達するのは、美しいメロディー・ライン。あのときは「アカシアの雨」だった。
実は、ぼくはいつもここで誤謬を犯していた。これは決して劇的終末(カタストロフィー)ではない。実は、たまさか創造の出発点ではないのですよ。

なお、橋本孝之の音楽のルーツには、阿部薫に留まらず、小杉武久をも孕んでいる。橋本孝之にのガット・ギターには、いくつものオルゴールが埋められ、そのスリリングな非日常の時空が、決して偶然なるものではなく、橋本自身による創造されたものであることをしかと覚醒させる。
また、橋本孝之によって血肉化されるハープ(ハーモニカ)は、殆ど雅楽の笙と化す。
さらに、”.es” と名付けられた sara Dotes (p) とのユニットは、元々スペイン音楽の極北=アバンギャルドを志向していた。
ぼくは夢想する。橋本孝之の「間」を共有するアルトとsaraがたゆとうように波動する踊りを。
そのめくるめく交感は、”.es” が志向した未踏の「超ジャズ」であろうか? 少なくとも、Bitches Brewデビューのsara (p) は、それまで構築されてきたフリーの様式をすべて包摂してしまった新たなる地平を切り拓いていた。

橋本孝之が逝ったとしても、必ず第2、第3の橋本孝之が、阿部薫が、生まれるに違いない。
ジャズに生きるとは、ジャズを超えることでしかありえない、永遠に。
心よりご冥福をお祈りいたします。
合掌。

2014年6月22日 サトウアキラ(light) 橋本孝之(as,harp) sara(p)

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◆ 2014年10月26日 橋本隆之 vs 竹内 直(reeds)雨宮 拓(p)庄田次郎(tp)

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注:以下は、データのアーカイヴにアクセスできず、筆者のFacebookからの転載です;

◆ 2015年02月08 日 橋本孝之+木村由 (dance)
橋本孝之さん。小杉武久のタージ・マハル旅行団と繋がる。1969年は、ぼくにとっては、即興演奏家、小杉武久(vln)と出会った年でもある。橋本孝之さんのギターには、オルゴールが幾つも埋め込まれている。


◆ 2015年4月11 日 橋本孝之(as) レンカ(踊り) 庄田次郎(tp,as,perc)
この春も、橋本孝之さんから、聖護院(since 1689)生八ツ橋をいただく。「さくら」、大変美味しゅうございます。

橋本孝之さん(as)が、殆ど唯一意識しているのは、浦邊雅祥(as)である。

◆ 2015年4月27日  蜂谷真紀(vo,p) 橋本孝之(as)
ハープ(ハーモニカ)する橋本孝之さん。まるで、雅楽の笙のよう。

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◆ 2015年5年31月 橋本孝之(as) Sara Dotes (p)

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◆ 2016年6月   橋本孝之(as) 白石民夫(sax)工藤冬里(p)

杉田誠一

杉田誠一 Seiichi Sugita 1945年4月新潟県新発田市生まれ。獨協大学卒。1965年5月月刊『ジャズ』、1999年11月『Out there』をそれぞれ創刊。2006年12月横浜市白楽にカフェ・バー「Bitches Brew for hipsters only」を開く。著書に、『ジャズ幻視行』『ジャズ&ジャズ』『ぼくのジャズ感情旅行』他。

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