RIP Curtis Fuller

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Photo & Text by Tak. Tokiwa 常盤武彦

 

ハードバップを代表するトロンボーン・プレイヤー、カーティス・フラーが逝去した。2000年代初頭に、友人のピアニストの百々徹が、彼のグループに参加して聴いたことがあった。この人がジョン・コルトレーン(ts,ss)の『Blue Train』で見事なプレイをしていたカーティス・フラーかと感慨はあったが、あまり接点はなく、いつしかNYのシーンで見かけることも少なくなった。2018年に毎年取材をしているデトロイト・ジャズ・フェスティヴァル(DJF)の初日の夜に、ホテルのボールルームで、”The Legacy Series 2018″と題して、デトロイト出身のカーティス・フラーの、その長年の功績が顕彰された。その頃には演奏活動から引退して故郷に帰り、介護施設で暮らしていたそうだ。その年のアーティスト・イン・レジデンスのチック・コリア(p,kb)、ジェリ・アレン(p)・トリビュートで3つのコンサートでプレイするテリ・リン・キャリントン(ds)、DJFのアーティスティック・ディレクター/代表のクリス・コリンズ(ts,cl,bs)に祝福されて、観衆の大拍手ににこやかに応えていた。彼の業績を振り返るビデオは、『Blue Train』のトロンボーン・ソロで始まり、黄金時代を支えたジャズ・メッセンジャーズ、アート・ファーマー(tp,flgh)、ベニー・ゴルソン(ts)とのジャズテットと、まさにハードバップ時代のトロンボーン・シーンを牽引した様が映し出される。またこの年には、彼の名を冠した”The Curtis Fuller National Jazz Trombone / Low Brass Competition”が、開催され、多くの若手トロンボーン/ チューバ /バリトン・サックス・プレイヤーが参加した。

1957年にニューヨークに進出して名を馳せたカーティス・フラー。この時に、その前史のデトロイト時代を初めて知ることとなった。1934年に生まれ幼少期に両親を亡くし孤児院で育った彼は、尼僧に連れて行ってもらったコンサートで、J.J.ジョンソン(tb)のプレイに触れ、憧れを抱くようになったという。ハンク、サド、エルヴィンのジョーンズ兄弟など、多くの才能を輩出したデトロイトで青春時代を過ごしたフラーは、バリー・ハリス(p)の薫陶を受ける。1953年から1955年の軍役の期間は、ケンタッキー州ルイヴィルで、キャノンボール・アダレイ(as)が率いるダンス・バンドに参加、そこには、ダニー・リッチモンド(ds)や、チャールス・ミンガス(b)もおり、重要なコネクションを結ぶことになる。退役後、デトロイトに戻ったフラーは、ペッパー・アダムス(bs)と双頭バンドを結成し、ローカル・シーンや、テレビ・ショウに出演して活躍する。1955年にデトロイトで参加したポール・チェンバース(b)のセクステットのレコーディングで、ジョン・コルトレーンの知己を得る。またユセフ・ラティーフ(ts,obe,fl)とは、深い信頼関係で結ばれていた。二人でクラブに出演した後に、デトロイト川河畔で、さらに練習をしていると、クラブの客がついて来て、彼らの演奏を聴いていたそうだ。酒もタバコも嗜まないフラーは、ジャズ・クラブに大きなミルクのボトルを置いていて、ミルクばかり飲んでいた。デトロイトの豊潤なジャズ・シーンで育まれ、カーティス・フラーはニューヨークで大きく羽ばき、ハードバップ黄金時代を駆け抜けた。ジャズの伝統の松明は、後進へと託された。今は、謹んでご冥福をお祈りしたい。

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常盤武彦

常盤武彦 Takehiko Tokiwa 1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。2017年4月、29年のニューヨーク生活を終えて帰国。翌年2010年以降の目撃してきたニューヨーク・ジャズ・シーンの変遷をまとめた『New York Jazz Update』(小学館、2018)を上梓。現在横浜在住。デトロイト・ジャズ・フェスティヴァルと日本のジャズ・フェスティヴァルの交流プロジェクトに携わり、オフィシャル・フォトグラファーとして毎年8月下旬から9月初旬にかけて渡米し、最新のアメリカのジャズ・シーンを引き続き追っている。Official Website : https://tokiwaphoto.com/

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