小野健彦の Live after Live #46~#54

閲覧回数 8,445 回

text & photos by Takehiko Ono 小野健彦

#046 12月13日 (金)
西荻窪 アケタの店
http://www.aketa.org/mise.html

原田依幸 (p) 時岡秀雄 (ts) 望月英明 (b) 石塚俊明 (ds) 一噌幸弘 (笛)

この日から遡ること2週間の週末は、鹿嶋、越生と、少し遠出のライブ行脚が続いていたが、この週末は、国分寺の叔母宅を根城にした中央線のハコ巡り。
当夜は、昨年遅まきながら得難いご縁を頂いたピアニストがバンマスのバンドだ。
私の今宵のライウbは、浪漫と抑制の美の錬金術師ピアニスト原田依幸氏のグループ@西荻窪 アケタの店。
このバンドは、このハコには、ほぼ月一回定例での出演であるが、私は、これまで中々タイミングが合わずに、この年の瀬に滑り込みでの初見参とあいなった。
ライブはまるで、「放課後の校庭」を駆け回るやんちゃな友同士の戯れにも似て、観ているこちらも、自然と愉快な心持ちになって来る。
鬼ごっこか、缶蹴りか、ドロ警か、はたまた、だるまさんが転んだか、兎に角、誰がソロでもバックでもない。続々と攻守が入れ替り息つく暇もないほどのスリリングな展開。4人の演者が、あくまで耽美を基調に、それぞれのリズムを刻み、メロディを奏でて行く。
固まり、止まることを徹底的に拒絶した疾風怒涛の勢いで、連綿と繋がって行く圧倒的に清々しい個の主張。それが、いつしか絶妙に絡み合い、こちら聴き手を恍惚のステージへと引っ張って行く。
今宵は思いがけず、原田氏との共作もある能楽師 一噌幸弘氏の飛び入りもあり、5つの粒子が冬の夜の穴蔵に弾け飛んだ賑わいのひととき。
因みに、一噌氏は、能管・田楽笛・篠笛に加えて、ゲノムホルン・つの笛までくりだして音場に鮮やかなアクセントをつけてくれた。
原田さんに招かれて、静かな風のように登場され、バンドに舞い込んだ一噌さんの、その一連の動きの流れがなんとも言えず、視覚にも訴えるライブであった。

#047 12月14日 (土)
Live Space Yellow Vison
http://www.yellowvision.jp/

ミクロマクロ:蜂谷真紀 (vo) 加藤崇之 (g)

take the chuo lineのこの週末。今日は、阿佐ヶ谷でのハシゴ・ライブ。
共に初見参のハコだけに胸が躍った。まずは、昼の部、北口のイエロービジョンから。
現場に着いてすぐ、このハコの居心地の良さを痛感することに。ご亭主の小林さんにお聞きすると、店は2011年創業とのこと。歴史は決して古くはないが、日夜、オールジャンルの音を密かに聴いている空間が持つなんとも言えない包容力がある。
私の今日のライブは、ミクロマクロ。
ボイス・パフォーマーの蜂谷真紀氏とガットギターの加藤崇之氏の結成25年を迎える鉄壁のduoチームだ。事前の蜂谷氏のふれ込みでは、オールブラジル即興、コードとリズムの「あうん」とあったので、おおいなる期待を持って駆けつけた。
ライブは2部構成で、通低音にブラジル音楽を据えた。1stはいわば「ブラジル点描組曲」で、2ndは、「先鋭的自画像」の趣きであった。
1stステージは、10-15分の肌合いの異なる小品がいくつか配された構成。
開演早々、場は、アマゾンの原生林へ。
加藤氏が森の化身となって1本1本と樹を植えて行く。粗から密へ。その樹樹の中を群れ飛ぶ蝶を蜂谷氏が見事に表現した。しかし、まだ陽は高い。それから、加藤氏の日時計を追うように蜂谷氏は、虫になり、鳥になる。加藤氏のパッセージとテンポが控えめになって、森に夜の帳が降りて来る。すると蜂谷氏はふくろうに、奇声を発する獣にと、自在にその風景を切り取って行く。どこからか、部族の祈りの唄も聞こえて来る。数点の小品を経た後、曲の断片らしきものも見えてきた。ボサに包んだ童謡シャボン玉が、一転ボサの名曲3月の水へと変容を遂げる。ここで、このステージはおしまい。
たっぷりのブレイクの後で始まった2ndステージは、お互いの技が炸裂する。加藤氏のリズムとテンポ、蜂谷氏のワイドレンジのスキャットが冴え渡る。
蜂谷氏の息の続く限り、加藤氏の指の続く限りの激闘が繰り広げられ、ライブは、終わった。アマゾンの森も無事、朝をむかえることができたという訳だ。
ライブの終わったその後のバーカウンターで、加藤氏が蜂谷氏にかけたひとことがなんともふるっていたので是非ともご紹介したい。「お前さんと出会ってここまで来たが、今日は楽しすぎた。」まさに今日は、このひと言につきる感があった。 師走のブラジル音絵巻、存分に楽しませて頂きました。

#048 12月14日 (土)
Asagaya Loft a
http://www.loft-prj.co.jp/lofta/

友川カズキ (vo, g)

前稿の昼の部のミクロマクロ@阿佐ヶ谷北口イエロービジョンの後に向かった夜の部は、@阿佐ヶ谷南口ロフトA。
演者は、私が昨年、氏の著作等に出会って以来どうしてもお会いしたかった表現者だ。実は、彼の見たであろう景色をもとめ、平塚競輪場にも行ったほどだ。その人こそ、歌手であり、作家にして競輪評論家の友川カズキ氏だ。
年末恒例というこの超人気ライブ。開場前から長蛇の列が出来ている。いつものように、私は周囲の気になる先輩にお声掛けをして開場の時を待った。この出会いが後で奇跡を生むことに。今日のお話のお相手は、青森出身のO氏。先輩は、私より早い入場ながら、キャパギリギリの150名状態を察して、なんと身体が不自由な私のために席を確保して待っていてくださった。その懐の深い粋な計らいに、いきなり心根をわし掴みにされた私、涙。
さて、肝心のライブだ。言魂を自らにぶつけるように唄う友川氏の確信犯的な脱力感と背中合わせの凄みにぐっと引き込まれる。私の陳腐な表現の代わりに、氏の歌った曲名の一部を記そう。「イカを買いに行く」「祭りの花を買いに行く」「ワルツ」「生きてるって言ってみろ」「ひとりぼっちは絵描きになる」、次だけは、曲名ではなく、氏の最新ドキュメンタリーの題名「どこへ出しても恥かしい人」等々。これらの言語センスには、圧倒的に参ってしまった。 他にも、彼ほどのビッグネームにもかかわらず、オープニング・アクトに奄美出身の若手歌手、筑秋雄氏を抜擢したり、病で一線を離れていた友の火取ゆき氏をゲストに迎えるなどの暖かく心憎い配慮を見せたところに、彼の崇高なる人間性を感じた。終演後のサイン会にて、氏と少しく話すことができたが、時代を作った男はあまりにもノンシャランで魅力的だった。
ともかく、私の初、生、友川さんは、同じく年末恒例だった浅川マキ氏の池袋文芸坐ル・ピリエ公演と同様に、私の年中行事になる予感大。

#049 12月19日 (木)
横浜白楽 Bitches Brew for hipsters only
https://utautaicunico.wixsite.com/bitches-brew

纐纈雅代 (as)

リーダー格、客演と合わせて、実に様々な編成で、その表現者に触れられたことは、私の昨年のジャズ史に確かな痕跡を残してくれた。
回を重ねる毎に、その可憐さと凄味が加速度的に増した感が強い。生まれながらの才覚に加えて、稀代のバンドリーダーや、先輩に鍛えられ、かつ、容赦ない仲間達に揉まれながらも、それに耐え、鍛錬を積んだことで、今、そのスター性が、大輪の花となって開花し始めていることは、万人が認める所であろう。
ということで、私の今宵のライブは、アルトサックス纐纈雅代氏のソロ@横浜白楽bitches brewだ。
席亭の杉田誠一氏に伺うと、すでにこのハコでの彼女のライブは数え切れないほどにのぼると言う。
その慣れ親しんだ空間での席亭とお客様の醸し出す磁場がそうさせるのだろう。
自らを極限にまで律した抑制の美を孕んだ疾走感、滲み、ゆらぎ、などの彼女の持ち味が、今宵のgigでも存分に発揮された。
私は、これほどまでに切なく鮮烈な独り言を聴いたことはそうそうない。
纐纈氏の最新自伝本『音の深みへ』彩流社刊からの言葉を借りれば、
「話す」は、「放す」こと、だと。
自らに向けて話す独り言が、自らを解き放って、それがひいては、我々聴き手の心をも解放して行く。
この表現者のさらなる進化変容の道程を一人でも多くの方々に目撃して頂きたいものだ。
そう、強く実感した宵。

#050 12月21日 (土)
豊島区立目白庭園赤鳥庵 和室
https://www.seibu-la.co.jp/mejiro-garden/guide/

張理香 独演会滅紫月「けしむらさきのつき」vol31

この日は両国で午後から参加したトークショーが予想より早目に終了したので、そんな時のためにと心積りしておいた夜の部に向かうことにした。大急ぎでタクシーを拾って、首都高速を直走り、目的地の目白に向かった。
所要時間30分、開場時間には、なんとか間に合った。ということで、夜の部は、韓国伝統音楽のライブだ。前月、六本木「はん居」で開催された長唄の杵屋三七郎氏の公演に客演されたのをお聴きして以来完全に心奪われた表現者、張理香氏の独演会滅紫月「けしむらさきのつき」vol31@豊島区立目白庭園赤鳥庵 和室。もう、開演まで時間がないので、広大な池泉回遊式の庭園を横目に高台に建つ数寄屋造りの会場へと駆け込む。
受付で杖の先を拭く雑巾を貸して頂き、脚の装具を脱いで待機していると、理香さんの御主人でピアニストの原田依幸氏が現れて、会場の畳敷きの和室までご丁寧に案内して下さった。 定刻の18時を少し過ぎた頃、室内が暗転する。
庭園は既に闇に包まれ軒先につるされた仮設の照明がほのかな光を放っている。
庭園の向こうを、時々電車らしきものが走って行くのが見える。あれは、山手線だろうか?
そうこうしていると客席後方の襖が開き、理香さんが、静々と現れた。チョゴリの衣摺れの音を聴きながらこれから出現する音場を想い胸が高鳴る。
今宵彼女は、伽耶琴(カヤグム)と、玄琴(コムンゴ)の2種を弾きわけるようだ。上手天井から垂れ下がる2枚の布と演者だけが、闇を背にしてライトに浮かび上がる舞台がなんとも幽玄だ。今回の公演に際しては、理香さんの詳細な解説リーフレットが用意されていたので、大凡の演目の内容と流れはわかるが、まだまだ私は理解不足の感が否めないため、いつか機会を見つけてご本人に教えを乞うて、知識の肉付けをしたいところである。
今日は、大小の「散調」をいくつか聴かせて頂いた。この散調は、朝鮮半島の即興的な器楽様式であり、演者に与えられる自由度がかなり広く感じられるところが、私にとっての大いなる魅力。 演者は、リズムとメロディの断片を1度裸のまま、自らの外に投げ出した後、再び自らの内に取り込み、瞬時に十分吟味咀嚼した上で再び呼吸の如く自らの外に放つ。その演者の内と外との循環の高まりは、演者自身もかなり予測不可能なのであろう。
いま現在出た一瞬の音が、そこで、立ち止まる時もあれば、それが全体を予感させる時もある点がなんともスリリングである。それは、こちら聴き手にとっては勿論のことだから、何よりも演者ご本人にとっては尚さらであろう。
この韓弦楽の公演は、巷でも決して頻度は多くないようだが、ご興味のある方は、是非とも根気強く探して足を運んで頂きたいものである。 「心の琴線に触れる」という言葉があるが、これは、なんとも「涙腺に触れる」音場ですから。

#051 12月27日 (金)
合羽橋 jazz& gallery なってるハウス
http://www.knuttelhouse.com/

「夢」デュオ shoomy (vo,p) 加藤崇之(g)

私が幼き頃、年の暮れもこの時期になると、亡き母は、おせちのお重作りの準備を本格化させたものである。それは、田作り、おにしめ、昆布巻き、栗きんとん、黒豆、紅白なます等の比較的地味なものから始まって、泥棒猫の私の目には触れないようにして、最終コーナーで、満を待して、「カネメ」の数の子の仕込みに取り掛かっていった。私の暮れの主担当は、窓のガラス磨き。その合間に、母に呼ばれて台所に行くと、小さな数の子のかけらが、口に放り込まれる。すると、私は勢い、数の子の味見役へと華麗な変身を遂げていたのも懐かしい想い出だ。まさに、この瞬間が、年越しへの最高のプロローグだった。
そうして完成した我が家のおせちは、一見お重の中に食材が無造作に並べられているようで、それでいて、それぞれの食材が五感に向けてしっかりと主張するモノであった。
今日の音場も、さしづめそのような趣きであった。私の当夜のライブは、昨年デビューを飾り、ほぼ毎月のように訪れた@合羽橋なってるハウス。今宵は、ボーカル&ピアノのshoomy氏とギターの加藤崇之氏の名コンビ「夢duo」が、ゆかりの表現者と仲間を迎えて送る年末謝恩スペシャルバンドだ。1stセットは、ゲストのハーモニカ中山ふじえさん、ボーカル柳家小春さん、ピアノ川口信子さんらが呼び込まれ、ジョビンのボサ、shoomyさんのオリジナル、そうして、オブリビオン等のタンゴ曲が快調に奏でられて行く、穏やかな流れ。対して、2ndセットになり、バンド中心の展開になると、俄然、その音場はドライブがかかり凄味を増した。何よりの圧巻は、ジャズ・スタンダードの三連荘。それは、For All We Know に始まり、So Many Starsから、Blame It On My Youth に繋ぐというくだり。ベースの清水氏のメローなラインがまるでまろやかな出汁のように、サウンドの下支えをする中で、堂本氏のドラムと藤の木氏のパーカッションが、そこにカラフルな味付けを施す。サックスとフルートの松風氏のサブトーンが、絶妙な哀愁を味わい深いアクセントとして呼び込み、それらを引っくるめて、加藤氏とshoomy氏は、その36年の共闘の歴史に裏づけられたあうんの呼吸を持ってして、バンド全体を鮮やかなボイシングでまとめ上げて行く。実にタイトで趣味の良いバンドサウンドだ。演者各々が、其々の味わいを醸し出して行く。それはまさに、圧巻の見栄えと味わいを纏った祝いのお重の如し。
しかし、今夜の食材は、演者だけではなかった。客席もこの表現者達の昔からの熱心なファンの皆さんが多かったと見え、最終曲の「歩こうよ」では、客席のあちらこちらから、堪えきれずにそのメロディを静かに口ずさむ声が湧き上がって来た。
決して派手ではないが、確実に自己主調する個が溶け合う充実の音場。それは私がかつて味わっていたおせちのお重と年越し前の「数の子」のように、なんとも幸せな新年へのプロローグとなった。

#052 12月28日 (土)
横浜馬車道「上町63」
http://kanmachi63.blog.fc2.com/

渋谷毅 (p)

今夜のライブは、久しぶりの@横浜馬車道「上町63」。
渋谷毅さんがひとりで演奏する時、それは、「ソロピアノ」よりも「ピアノソロ」と呼ぶほうがなんとなくしっくり来る気がする。ちょうど1年前の同日同刻も、この場所から渋谷さんがピアノを弾くのを眺めていた。ひとつ違うことと言えば、前夜にお会いしたということか。前夜は別のハコで、同じ客という立場で時間と空間を共有して、一夜開けて、今夜は、演者と客として相対した。おまけに、今夜の客席には、前夜の演者のひとり、藤の木みかさんのお顔も見えて、私の頭の中では、2つの夜という時間感覚と、ステージと客席という空間感覚が奇妙にもつれあって、何とも不思議な気分。勿論渋谷さんには、そんなことは関係ない訳で、昨夜も、洒脱で良く歌うピアノの至芸を、2ステージ、各約40分間に渡り、静かに、それでいて、熱く届けて頂いた。オープニングは、私の大好きな、〈i didn’t know about you〉。私の中には、夭折した武田和命さんの哀切のブローが鮮やかに蘇る。そうして、約1時間後の2ステージ目のオープニングは、なんと、かつてこの時期になると、渋谷さんが連夜に亘り浅川マキさんと奏でていた〈my man〉が!その後もマキさんとのコンビで慣れ親しまれた〈夜〉や〈グッド バイ〉などを挟みながら、滔滔と時が流れてゆく。今や、渋谷さんと言えばこの曲、いや、この曲と言えば渋谷さんとも言える〈body & soul〉も飛び出しながら、いよいよ今宵のエンディングへと向かう。本編の最終は、いつも渋谷さんがアンコールで取り上げることが多い三曲が並んだ。順に〈Lotus blossom〉〈Looking glass〉〈danny boy〉それらはまさに、圧巻のメロディメドレー、そうして、最後の最後にアンコールとして、「そうだ、もう一曲あった」とコメントして弾いてくださったのは、マキさんの歌う〈無題〉。?、この曲って〈BEYOND the FLAMES〉という曲名ではないのかな?終演後、その点を渋谷さんにお聞きすると、「あれは、詩が付くと前者、今日は詩がないから後者だね」と丁寧に教えてくださった。家に帰りその曲が入ったCDを聴き直すと、全31分の11分頃から、詩と共にお馴染みのフレーズが出て来た。もう、何年も手元にありながら、ちゃんと聴きこんでいなかったことを深く反省。マキさんが歌うのを聴いても、〈BEYOND the FLAMES〉だと思っていたのだから、バチあたりなものだ。
しかし、振り返り、宴が終わったその後で、家路につくお客様の一様に満足そうなお顔はなんとも言えず印象的だった。ご亭主の佐々木オーナーの「これで気持ち良く新年を迎えられるわあ」の言葉も実感がこもっていたなあ。とにかく、皆が幸せを感じられたかけがえのないひととき。かつてのマキさんの大晦日迄公演@池袋文芸坐ル・ピリエのように、是非とも、年末のカンマチの名物興行として継続して開催して頂きたいものである。

#053 12月29日 (日)
Jazz  Coffee & Whisky Nica’s
http://nicas.html.xdomain.jp/

渡辺文男(ds) 峰厚介(ts) 山本剛(p) 鈴木良雄(b) 増尾好秋(g)

期せずして、前夜と同じく、1年前の同日同刻と同じハコで同じ表現者を眺める趣向の夜と相成った。
場所は、@町田ニカズ。ドラムの渡辺文男氏のバースデイ・ライブに集ったのは、ピアノの山本剛氏、テナーの峰厚介氏に加えて、ペースの鈴木「チン」良雄氏だ。
さらに加えて今夜は、旧知の仲間がステージに登場し、齢81歳を数える文男さんの祝いの宴に華を添えた。まず、スタートから、サプライズ・ゲストが呼び込まれる。チンさんが、その人のアメリカへの帰国が例年よりずれているタイミングを逃さず今宵のgigに誘ったというギターの増尾好秋氏だ。1stステージは、このカルテット編成で通した。続く2ndステージでは、さらにゲストが加わる。まずは、文男さんからスイッチして、村田憲一郎氏がタイコの椅子に座る。続いてチンさんに代わって小杉敏氏がペースを抱く。ボーカルの海老原淳子氏に続いて、普段はステージからの呼び込みのリクエストに応じることは滅多にない、マスターでピアノの元岡一英氏までがステージにあがる。そうして、最後には、この日遊びに来ていた、高田馬場 gateoneの看板娘  舞さんまでドラムの椅子に座った。 全編を通して、ヘッドアレンジの大スタンダード大会であったが、そこは昭和平成の荒波を生き残って来た猛者達。兎に角、その懐の深さたるや半端ない。肩の力の抜けた、ゆったりとした時が流れて行く。決して気をてらわない、ストレートな音魂が、こちら聴く者のハートにダイレクトに届いて来る大変趣味の良いステージ。
〈スイングしなけりゃ意味ないね〉という曲があるが、私は、いつもジャズを聴く時、「愛がなければ意味ないね」と思って、表現者に対している。それは、己れに対する愛、相棒である楽器に対する愛、客に対する愛、ハコに対する愛、そうして仲間に対する愛などなど。今夜の音場は、それらがぜーんぶ強く感じられた理想的なものだった。
宴が終わったその後で、互いに抱き合い、名残惜しそうに再会を誓って別れて行く演者達の後ろ姿は、一様にとても美しかった。

#054 12月31日 (火)
西荻窪アケタの店
http://www.aketa.org/mise.html

年越しオールナイトJAM

さあ、いよいよ私の2019ラストライブは大晦日の夜20時半時から開始され、元旦の朝5時半迄続いた年越しオールナイトJAM@西荻窪アケタの店。本稿はその31日分の記録。
5時半迄続いたというのは、正確には私が帰路についたのが元日の大凡5時半であり、その時点でもアケタさんは、「10時までは、やるぞ!」とおっしゃっていたので、もしかすると本当に10時まで続いたのかもしれない。私の約40年のジャズ歴の中で、この企画に参加するのは長年の夢であったが、2019年、その階段に手摺りが付いたことが、その実現を強く後押ししてくれた。家を出る時に家人から、「良いお年を!」と言われて送り出されたのも初めてで、これには家長として、一抹の後ろめたさも無くはなかったが、脳梗塞の後遺症を抱えて、来年の大晦日迄生きていられる保証もないので、断固、断行することに。
JAMとうたっているように、店主アケタさんとマネージャー?島田さんのdirectionで、次々と演者がステージに上がって行く。思いがけないあんな組み合わせやこんな組み合わせで、あんな曲やこんな曲が奏でられる日本のジャズの縮図のような。広辞苑のような。でも、皆さん、入り方、去り方に、それぞれの流儀がありつつ、意外にも、あっさりとしていてウダウダ感は皆無なのが良かったというのが印象。各グループとも短い持ち時間の中での濃密な演奏を、私は堪能させて頂きました。
今宵のステージ写真は、いつものように、島田さんがアケタの店のHPに、整理してアップして下さっているが、以下に、私は、五月雨式に添付しちゃいます。

≪写真注≫ 順に①原田依幸 (p)セット ②小太刀のばら (p)セット ③石田幹雄 (p) セット

小野 健彦

小野 健彦

小野健彦(Takehiko Ono) 1969年生まれ、出生直後から川崎で育つ。1992年、大阪に本社を置く某電器メーカーに就職。2012年、インドネシア・ジャカルタへ海外赴任1年後に現地にて脳梗塞を発症。後遺症による左半身片麻痺状態ながら勤務の合間にジャズ・ライヴ通いを続ける。。

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。