小野健彦のLive after Live #93~#100

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text and photos by Takehiko Ono 小野健彦

前口上

極めて数奇な御縁を得て、このコラム『Live after Live』の連載を昨年夏の [No.257]より担当させて頂くことになった。

以来、新型コロナウイルス禍による緊急事態宣言発令で、ライブの現場に足を運べず、アーカイブ映像紹介でなんとかしのいだNo.267を挟み本号が連載12回目となり、レポート数の累計は、今月号に及び、記念すべきジャスト100本を達成出来る運びと相成った。

それらを通してご紹介した表現者は179人 (重複除く) にのぼり、同じくライブの現場は45か所を数えた。

まずもって、ジャーナリストでもない私如きの雑文に目を通して頂いた数多くの読者の方々にこの場をお借りして、厚くお礼を申し上げたい。

また、私にとって掛け替えのないジャズという音楽を通して自らを表現するという、想像だにしなかった『生きがい』の場を辛抱強く提供し続けて下さった本誌編集長の稲岡邦彌氏を始めとした編集部スタッフの皆様にも最大限の感謝を申し上げたいと思う。

更には何より、これまでにご縁を頂いた数々の表現者の方々、並びに各種苦境の中にあってもライブの現場を必死に守り続けて下さっている各地のハコの御亭主の皆様にも引き続きの御愛顧を願わずにはいられない。

そうして最後に、障害のある身ながら、週末の殆どをライブの現場に繰り出し家を空け続ける夫/父を呆れながらも見守り続けてくれる我が家族にも感謝したいと思う。

今後は、以上の様なことをもっとスマートに書けるよう今まで以上に精進致す所存ですので、引き続きの御贔屓を宜しくお願い申し上げ奉りまする。

さて、前置きはこのくらいにして、今月号では、#100ゴールラインに向けた第4コーナーからの疾走の如き8本(内、4夜連続を含む) のライブレポをお届けしますので、例月同様ご笑読頂ければ幸いです。

更に、もう一つこの場でご報告させて頂きたい、極めて手前味噌な事柄があり、イントロとして、この場で簡単にご紹介させて頂きたく(詳細は別項ご参照の程)。
本号では、別項 ‘gallery’のコーナー内で、前月号まで、本コラムの口絵を飾って頂いていた、『信州・松本の即興絵師・大久保哲郎氏の「jazz曼荼羅」の即興絵』に触発されて、我が義母(姑)の市川鐵子が制作致しましたるパナマ・民族手芸「MOLA」をご紹介させて頂く運びとなりました。そちらも合わせてご覧頂ければ、誠に幸甚にて。
2020年長月五日 小野健彦拝

#093 7月18日(土)
カフェバー masa2sets小田急読売ランド前店
https://www.masa2sets.com/yomiuriland
菊地雅晃トリオ w/special guest 近藤等則

私にとって怩懇のベーシスト菊地雅晃氏が、最近繁く行動を共にするトリオに驚きのゲストを迎え、自身馴染みのハコに出演するというニュースが私の眼に飛び込んで来た。

早速、久しぶりに雅晃氏に連絡をし、「凄いことになりましたねえ」と切り出すと、直ぐに「近藤さんとのこと?」との返事が返って来た。続けて、「でも、俺、近藤さんのこと、あんまりよく知らないんだよねえ」とも。この辺りが、叔父にpooさんこと偉大なるジャズピアニスト故菊地雅章氏を持ちながらも、既存のジャズ界のしがらみに絡みとられることなく、我が道をノンシャランに進んでいる氏の人柄が滲み出ていてなんとも愉快な気分になってしまった。そう、私の今夜のライブは@masa2sets小田急読売ランド前店。

雅晃氏によれば、こちらの本店にあたる向が丘遊園店を互いが利用していたことが今回の驚きの共演に繋がったとのことであった。

キーボードに弱冠22歳の市川空氏、ドラムにベテラン藤井信雄氏を擁した菊地雅晃トリオが迎えるのは、エレクトリック・トランペッター(電気ラッパ)の近藤等則氏である。私は氏とは、新宿ピットイン50周年コンサートの際に少しく会話させて頂く機会を得たが、その際の先鋭的な音楽とは一見対照的な極めて物静かな物腰の柔らさが強く印象に残っていた。言わば「武闘派の衣を着た超人情派」とでも言おうか。今宵も、時間と空間を鋭くしなやかに切り裂きながらも、終始その音場はウタゴコロ(麗しいメロディとリズム)に溢れていた。しかし、小さなケーキ屋の脇にある細い袋小路の、そのまた奥の、狭い階段を降りた地下スペースに、いかにして、太陽を、月を、風を、花を、鳥を、川の流れを、そうして荒野迄をも呼び込んだのであろうか?

どこからともなく現れ、未知の方向へと去って行った、とてつもなく大きな気が畝った2ステージ全約1時間強。それはまるで陰陽師の如く、否、「地球を吹く」を長くライフワークとして来た氏らしく、自らが地球との媒体となり、その事象の具現者/触媒として在ったそののひととき。聴き人は、その魔術妖術に引き込まれ、解き放たれ、最後は、眼の前に突如出現した母なる地球の自然の断片の前で途方に暮れるしかなかった。浅川マキさんがもしこの場にいらしたら「やられたわね。そう、これ、まさにゼロアワー」と呟いたに違いない。なんてことをふと思ってしまった。その近藤さん、このコロナ禍の中で、スタジオに行ってもラッパに全く手がのびない日々もあったようだが、最近では、この時期だからこそと、創作の炎も再びもえたぎり始め、コロナ禍前に「地球を愛そう」をテーマに制作した6アルバムに続くかたちで、氏自身「月刊小説だよ」と語ってくれた『CDR月刊ミュージックマガジン』BEYOND CORONAをこの5月から鋭意敢行中。(内容、購入手続きの詳細等は、氏のHPに詳しいので、ご興味のある方は是非ともチェックされたし) しかし、何とも得難いご縁を頂けた稀有な覚醒の夜だった。氏にとっては、5か月振りのステージだったとのことで、ステージ後の談笑の中に垣間見えたその充実感に溢れた表情も特に印象に残った。その決して昔を振り返ることなく、これからを見据えつづける表現者との濃密な時空から立ち去り難く、更にはご機嫌で盃を重ね過ぎて店に携帯電話を忘れ一度駅まで行きながらまた店に戻るなどの大ポカをしたせいで、私は、結果終電を逃すという、これまた思い出に残るであろうオチ迄付いた夜だった。

#094 7月23日(木)
西荻窪アケタの店
http://www.aketa.org/
原田依幸グループ

過去最高の新型コロナウィルス感染者366人/日の発表をする小池東京都知事の声を背後に聞きながら、さて、魅惑の4連休の始まりです。ライブの現場のバンドスタンドに居並ぶ表現者達とは異なり、こちら勤め人の聴き人には、呑気に休みなどというものがある訳だから、良いご身分だとつくづく感じてしまう。さて、今宵のライブは原田依幸グループ@西荻窪アケタの店だ。このライブの現場を訪れるのも、同じ面子でのgigを、啓蟄明けの3/6に聴いて以来となる。依幸さん・理香さんご夫婦とは、先日のなってるハウスで既に久しぶりの再会を果たしているが、ここ、ホームグラウンドの「アケタ」で、グループメンバー、及び店の名番頭・島田さんも交えてお逢いすると、また格別の感がある。

不動の四人衆は、今宵も変幻自在のリズムとメロディを繰り出しながら、抑制された幽幻の趣きと疾風怒涛の勢いをしなやかに同居させつつ、こちら聴き人と空間全体をも飲み込んでそのいかにも痛快で、圧倒的なバントサウンドを披露してくれた。

閑話休題。

そう言えば、今思い返してみると、スイングジャーナル誌の恒例企画に、楽器別の人気投票があったが、そこにバンドorユニット部門はあっただろうか?(ビッグバンド部門があった記憶は朧げに有り)現在、もし仮に私が投票するとしたら、そこには(敬称略)小林洋子&池長一美の the third tribe、秋山一将の trial trip、 大口純一郎&林栄一4、渋谷毅&石渡明廣の月の鳥、早坂紗知&永田利樹&RioらのTReS、鈴木勲の oma sound、山崎比呂志TRYANGLE 等と並んで、この原田依幸Gを間違いなく挙げることになるだろう。

それは、其々の個が、強烈に個を主張しながら、バンマスの強力でエレガントな迄に均整のとれたdirectionの下、集団の形態をもってしかなし得ない音創りを毎月定期的に行い、その表現を地道に錬金させている稀代のバンドサウンドの説得力が桁外れているからに他ない。恐らく、メンバー各人でさえその終着点を知らない一切の予定調和のない言わば円環を描いて行くところに、このバンドの醍醐味がある。時事刻々とその様相を変える音場の温度を、聴き人に対して決してお仕着せがましくなく、しかし強烈な勢いを以て体感させることで、音場全体の熱量のボルテージを加速度的に上げて行くその協働作業のスリルにこそこのバンドの真骨頂があると言えよう。

話が全くそれるが、今宵は、ライブ前の夕食に馴染みの居酒屋に入る気分には、なんとなくなれず(それは、見慣れぬカウンター上のアクリルボードに怯んだことに端を発して、恐らく、久しぶりのこのバンドとのご対面に気持ちの昂りがあったと思われる)以前から気になっていた駅南口近くのフランス料理屋「こけし屋」さんを初訪問。こちらは、創業71年の歴史を誇り、かつては、田川水泡、井伏鱒二、徳川夢声、そうして、松本清張らの文化人がこよなく贔屓にしたと言う名店。結果的に、今宵は、夕飯、ライブのハコ、表現者が、全て極上の老舗尽くしとなった、なんともゴージャスな夜だった。

#095 7月24日(金)
新宿ピットイン
http://pit-inn.com/
大口純一郎パーカッシブトリオ

引き続いてのLive after Live 私の今宵のライブは、店内の様相も随分と変化した(ソーシャル・ディスタンスを考慮した以前の約半分の座席数max40人運営の)聖地新宿ピットインで行われた、大口純一郎パーカッシブトリオ・レコ発記念ライブ。当夜はゲストとして招かれた同作品のライナーノートを執筆された人気DJ大塚広子さんもステージの合間にお皿を回し、その祝宴にご機嫌なスパイスで華を添えていたことも特記しておこう。

私にとっては4回目のこのユニットであるが、かなり久しぶりのご対面。(特に大口氏とは、一時期は、毎月の様にお逢いしていたのに!)

しかし、全国津津浦々への旅も含めて濃密な時間を共有し、更に数々のライブの現場での交歓を重ね、満を侍してレコーディングに臨んだそのトータルユニットとしての表現の緊密度の深化振りには舌を巻いた。リズムが伸び縮みし、カラフルなメロディが横溢するこのユニットの特徴的な持ち味の、そのひとつひとつのポテンシャルの増強と、それを表出する際のダイナミクスが格段に増幅されていることに正直驚きを隠せなかった。

まさに、ライブの現場でこそ味わい尽くしたいバンドサウンドを届けてくれたと言えよう。しかし、今宵は、特に店側の急遽調達によるキーボード迄を駆使しながら、相変わらずのクールなサウンドを届けてくれた大口氏の確信犯的な冴えのある音場創りを久しぶりにおおいに堪能出来たひとときとなった。大口氏の冴えがグルーヴの呼び水となってバンド全体が転がる様をより多くの聴き人に体感して頂きたかった。そんな宵だった。

#096 7月25日(土)
CLOP CLOP (クラップクラップ)
http://www.clopclop.jp/
『ね』

感染予防策については、万全には万全を期してのLive after Live.。一昨日に引き続いて西荻窪の夜に降りたった私の今夜のライブ。向かうは、南口clopcclop。ご亭主の貴さんとも本当に久しぶりの再会であり、様々な想いが頭をよぎる。加えて今夜のステージには、意外にもグループとしては初対面の面々が登場するとあって、待望のひとときを待つ私のウキウキ度は急上昇。しかし、このグループには極めて縁の深いこのハコで出会えたことが私には何より嬉しかった。

既に、その創造主は天に召されて久しいが、メンバーの変遷はありつつも、その意志が確実に引き継がれていることを強く感じさせる特異なユニット。それが「ね」に対して頂いていた私の想像であった。今宵のステージで実際にその実体に接してみて、その想像は間違っていなかった。古沢良治郎氏という一粒の種子にその起源を発し、そこから発芽した樹々は、それぞれにすっくと成長し、青々とした葉を携えながら、師が常に指向した、愛と平和を尊びつつ人生を謳歌するという、実はなかなかに幾何学的な唄の数々を実にシンプルに奏でてくれた。長めの1ステージ約80分、なんだかちょっぴりセンチメンタルな気分にもなった夜だった。それぞれがマルチプレイヤーとして、バンドに多彩な色合いを流し込んだ今宵の表現者達、津上研太さん、藤の木みかさん、そうして、S氏 (故あってのこの表現、店看板の標記では「あの人」)。更に加えて、この場を守り抜いて下さっている貴さん、ありがとうございました。また、会いましょう。

#097 7月26日(日)
西荻窪アケタの店
http://www.aketa.org/
榎本秀一グループ

このコロナ禍における蟄居幽閉軟禁生活の状況の中で、Facebookが意外なご縁を生み出すことが少なからずあったが、今夜のバンマスもそんな中のおひとり。私の今宵のライブは、二日振りの西荻窪アケタの店。しかし、1週間の内に西荻窪訪問3回は流石に初体験。

今夜のステージには、テナーサックス&尺八の榎本秀一氏のグループが登場した。脇を固めるのは、過去の作品群からも分かるように、榎本氏からの信頼絶大なピアニスト藤沢由二氏(私は今日がお初)に、こちらは私は共に旧知のベース安東昇氏とドラムの安藤信二氏である。豪放かつ思慮深く深いトーンで吹き込んで行く榎本氏に対して、ステディに寄り添いながら、適度にバンマスをプッシュし続けたリズムセクションとの全体バランスが何とも言えず心地良い。ジョーヘンも、モンクも、ロリンズも、オリジナルも、皆、ジグザグとしたラインが収斂された先には、ストレートな一筋の道が見えて来る。そんな無骨で実直な外連味の無いジャズを堪能出来た、そんな夜だった。しかし、この4連休は、西荻窪新宿西荻窪西荻窪と、それはさながら「独り中央線ジャズ・フェスティバル」だった。日に日に不透明さを増している世情の中で、ここに狙いを定めて心と身体のコンディションをを持ってきた甲斐のあるひとときでした。その後体調の異変も全くなし。とにもかくにも、この数日でお逢いできた表現者の皆様と「ライブハウス」のスタッフの方々には改めて御礼を申し上げたい気分で一杯になった首都東京・夜の日々の記録、連続4編これにて完。

#098 7月30日(木)
横濱エアジン
http://www.airegin.yokohama/
中牟礼貞則&小林洋子 DUO

6月下旬に、コロナ禍で中断を余儀なくされていたLive after Liveを解禁してから、約1ヶ月が経過し、馴染みのハコとそのご亭主との再会は、大凡一巡した感があったが、どっこい、未踏の地があった。

さあ、私の今宵のライブは@横濱エアジン

その長く険しい階段と、御亭主のうめもとさんとは、約5ヶ月振りの再会となる。

今日のステージには、共に、過日、ソロレコーディングを済ませ、秋の発売を控えたギタリストの中牟礼貞則氏とピアニストの小林洋子氏が登場した。洋子さんの事前のつぶやきには、「オリジナル曲は封印し、かと言って、所謂ジャズスタンダードを沢山やるでもなし、私にとっての、私の中のスタンダード曲をピックアップして、中牟礼さんとは、なんと自ら廃棄せずにいたことに感激したFAX!を駆使してやりとりをしながらこの痛んだ世の中を忘れさせてくれるようなとても温かなゆったりとしたペースて準備をしています。」とあったので、否が応でも期待は深まってのハコ入りとなった。実は、このDUO開催の報に触れ、思わず洋子さんに、「将棋のタイトル戦」のようですね?と水を向けると、「とんでもない」と謙遜されていたが、果たして、シーン最前線への復帰以降、ここに来て特にその勢いを増している挑戦者洋子さんが随所に見せた柔らかながらも果敢なアタックが、永世名人ムレさんにとっても、余程嬉しいと見えて、丁々発止のアイデア合戦が、差しつ差されつゆったりとかつとめどもなく続いて行く。G.ゴールドスタインの≪to be or not to be≫ と続けて、I .リンスの≪the island≫で緩やかに流れ出したステージは、途中、H.ハンコックの≪dolphin dance≫ 、B.エバンスの≪re person i knew≫や、J.ザヴィヌルの≪midnight mood≫ 、更には、B.バカラックの≪the look of love≫、私には嬉しいチョイスだったSスワローの≪peau douce≫ などなど、アンコールの≪portrait in black&white≫に至る約2時間、なんともバラエティに富んだ佳曲の数々が披露された。≪darn that dream≫≪how deep is the ocean≫ などの所謂ジャズスタンダードも数曲盛り込まれたが、総じて「洋子さんの中のスタンダード曲」からの選曲の妙が光った。寒流と暖流が幸せにぶつかりあって生まれた静かな火花のごとき迸りを感じることが出来た稀有な邂逅のひとときだった。

#099 7月31日(金)
上町63(かんまち63
http://kanmachi63.blog.fc2.com/
西山瞳トリオ

慎重には慎重を期しながら、昨夜に引き続いての横濱・関内・馬車道辺りの夜。

私の今宵のライブは@上町63。

今宵のステージには、ピアニストの西山瞳さんが、ベースの佐瀬正氏(事前告知の吉野弘志氏に代わり急遽登場のピンチヒッター)と、ドラムスの則武諒氏を伴って登場した。西山さんのナマを聴くのは、もう10年振りにになろうか、大阪堺のホールでの井上淑彦さんとのduo以来となる。しかし今夜は、数多くのピアニストの演奏で聴き慣れた上町のアップライトピアノから、これまでとは全く違うニュアンスを受けとることが出来たのがおおいに興味深く、まさにライブの現場でこそ感じとることが出来る空気のゆらぎが何とも言えず心地良かった。時に揺蕩い、時に張り詰めた空気の揺らめきの中から立ち上がって来た音像から、その極めてキリリとした表現者たるバンマスの想いが濃密に伝わって来る。

≪mornin’glory≫≪grandfather’s waltz ≫≪laurie≫や≪body&soul≫.等の著名曲と同居させる形で、西山さん渾身の自作達が配置された構成。なるほど、自らの内にある美の追求を、オリジナル曲を効果的にブレンドさせることで、より瑞々しく良質な形で表出させ得る域に迄昇華させたそのステージの構成力の巧みさと表現力の豊かさが秀逸だった。

そんな彼女の世界観を手際良く掬い取りながら手堅いサポートで包み込んだ佐瀬氏と則武氏のバイプレイヤー・ワークスも趣味の良いものであったことを付け加えたい。またしても、上町で得難いご縁を頂けた充実の夜。

#100 8月1日(土)
jazz & gallery なってるハウス
http://www.knuttelhouse.com/
オマツとマサル(松倉如子&渡辺勝)

葉月一日。さあ、夏本番。憎き同居人との長引く未知なる闘いの季節は、出来る限りの愛と知恵と賢明なる自省心を持って乗り切って行きたいものである。そんなことを徒然に考えながら、冷房の良く効いたひともまばらな電車で都心の街へと向かった昼下り。今夜は、本当に永年の夢が叶い初体験となる表現者とのご対面が実現する。

そう、私の今夜のライブは@合羽橋なってるハウス。ステージには、孤高の唄歌い渡辺勝さんと松倉如子さんの師弟コンビ’オマツとマサル氏’が登場する。当夜は勝さんの古希祝いの宴でもある。開演は18時とまだ宵の口であったが、この昼と夜との狭間のスタートが予想外の心理的な効果を生み出すことに。どちらかに属さない曖昧さが生み出すたゆたいの心持ちに暫し浸りながら、ショーのスタートを待つ。いよいよ舞台の幕が開き、冒頭から朗々と発せられる勝さんの唄声の説得力たるや、やはり半端なく、私の中の時空のバランスが緩やかに崩されて行くのが分かる。なんとも不思議な感覚だ。上手い下手を越えた次元にあるその曲に封じ込めた無駄のないひとつひとつの日本語の意味を、丁寧に聴き人に伝えようとする姿勢がなんともクールでエレガントだ。吟遊詩人の如き勝さんの押し並べて緻密に構成されたドラマ仕立ての唄の前では、こんな拙文を弄することはいかにも不粋だと感じて来てしまうというのが私の本音だ。

勝さんの創造した音楽の数々は、今でもオフノートレーベルやディスクユニオンレーベル等からのCD媒体にて入手容易であるし、YouTubeなどのアーカイブ映像にも数多くアップされているので未体験の方は是非ともチェックされたし。但し、その独自の世界観の真骨頂は、当然ライブの現場にしか存在しえないことはいうまでもない。加えて、松倉さんの精神的及びサウンド面での献身的サポート姿も微笑ましく、それはこの目で見なければ到底知ることの出来ないなんとも心温まる光景だった。来て良かった。本当に来て良かった。早い終演後は、勝さんとも縁の深い川下直広さんにご紹介頂いた帰り道すがらの居酒屋みっちゃんにて、これまた充実の独り呑み。遅れて夕食に偶然やって来た、なってるスタッフの横チンやカウンターに居合わせたご常連の先輩と共に、この店にも大変ご縁の深かったという先頃惜しまれつつ逝去された鈴木常吉さんに献杯をしつつ名残り惜しい時間があっと言う間に過ぎて行った。

 

小野 健彦

小野 健彦

小野健彦(Takehiko Ono) 1969年生まれ、出生直後から川崎で育つ。1992年、大阪に本社を置く某電器メーカーに就職。2012年、インドネシア・ジャカルタへ海外赴任1年後に現地にて脳梗塞を発症。後遺症による左半身片麻痺状態ながら勤務の合間にジャズ・ライヴ通いを続ける。。

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