小野健彦のLive after Live #134~#137

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text and photos by Takehiko Ono 小野健彦

#134 12月2日(水)
横浜野毛  Jazz Spot DOLPHY
https://dolphy-jazzspot.com/

赤坂由香利 (vo) 古野光昭(b) 関根英雄(ds)

今宵のライブの現場は、少しくお久しぶりの横浜・野毛・ドルフィー。

今夜のライブは、前週土曜日に続いての、野毛の「赤坂」由香利氏のステージ。聞けば、ここドルフィーは、氏にとって、リーダー格でのステージとしては初出演というからそのキャリアを考えると驚きだった。。
私が赤坂氏の声に初めて接したのは、2000年秋録音の1st.album『Blue Prelude』。故にそこから直接のご縁を頂く迄に結局20年の歳月を要した訳だ。そうして土曜日に、2nd album『Rainy Afternoon』をご本人から直接購入し、先週末からは、当盤が自室を満たしていた。で、私が至った結論は、「この人の音楽を今、トリオで聴きたい」であった。「得難いご縁を繋げるためには行動あるのみ」。
これが、私の「Live after Live」を貫く信条である。そこで寒空の下、向かったのが、先述の両アルバムの核にもなっている、ピアノ&ボーカルの赤坂氏がベース古野光昭氏とドラムス関根英雄氏と共に描くトリオの世界。
舞台の幕が開くや、口数は少ないながら、ハッキリと自らを主張する口跡鮮やかな赤坂氏のピアノとボーカルに、コク・艶気共に豊穣な古野氏のベースラインが絡みつき、それを色彩豊かなバチ捌きで、関根氏が当意即妙に撹拌して行く。
数多くの現場を共にし気心の知れた表現者同士が紡いだトリオ・ミュージックの潔癖さがなんとも言えず心地良いひとときだった。
最後に個人的な今夜の驚きをもうひとつ。2ndセット冒頭にはK. ジャレットが、『Standerds vol.2』albumでも取り上げている〈In Love ln Vain〉が歌付きで登場した。私は、この曲が大好きなくせに不勉強ながらこの曲に歌詞のあることを全く知らなかった。赤坂氏のMCによると、かのS.ヴォーンも唄っているという。帰宅してリサーチしてみると、なんと名盤『Crazy and Mixed up』で採り上げているではないか!まだまだ聴き人として精進半ばを痛感した次第。

 

#135 12月4日(金)
新子安   Live Cafeしぇりる
http://www.barsheryl.com/

柳家小春(音曲)

引き続き、近場・神奈川県内を彷徨う「Live After Live」。

今宵のライブの現場は、@新子安 しぇりる。
今宵は音曲師・柳家小春氏の「粋曲・独演会」だ。翻って私が所謂音曲(小唄・端唄・俗曲・新内等)の世界に魅せられたのはいつの頃だったろう?それは丁度、十二代市川団十郎襲名披露公演から歌舞伎の世界に惹きこまれ、一方では、旧新宿ピットイン・デビューを果たし日本人の奏でるジャズに急速にのめり込んで行った頃だから、’80年代半ば。今を遡ること約35年前・中学/高校生の頃のことだったと思う。
新宿末廣亭などで、往年の笑三・先代文治・柳橋・柳昇師らの高座にまじって「松ノ木小唄」等をなんとも粋に唄い切った檜山さくら姐の音曲の世界に惹かれたのが始まりだったと記憶している。
そんな会話を、昨年暮れに合羽橋なってるハウスで開催された「夢DUO年末スペシャル」でさせて頂いたのが本日の主役・小春さんとのご縁の始まりだった。
ギターリスト加藤崇之氏との「和ボサ」や、ユニット「テニスコーツ」との共演等を通して、ジャンルの壁を軽々と飛び越え、更には唄と三味線に止まらず、ハーモニカやギター迄果敢にも挑戦し、自らの音世界を貪欲に拡げている小春さん。
今宵はタイトルも、「粋曲の会」として、真骨頂の唄&三味線の世界。そのステージは、民謡から江戸流行唄・端唄・都々逸、そうして少し短めの新内に至るまで、たっぷりと語り尽くした2ステージ・2時間。
その穏やかで物腰柔らかな風情通りの、なんとも言えない芳しさ漂う手弱女(たおやめ)ぶりが醸し出された充実の音場だった。
松の内には大分早いけれど、新春の匂ひさへ漂うが如くの大層小粋でおつなひとときを過ごさせて頂いた。四囲の状況がきなくささを増していた時期だけに、
まさに「冬来りなば春遠からじ。」を実感。

#136 12月5日(土)
平塚  B
ar Wood Shop
http://barwoodshop.blog41.fc2.com/blog-category-1.html

「夢DUO:宅’shoomy‘朱美 (vo) 加藤崇之(g)

今日は「Live After Live」の醍醐味である初めてのハコ訪問とそのご亭主とのご縁を頂けたご機嫌な夜。

今宵のライブの現場は、以前から気になっていたものの未上陸だったBar Wood Shop平塚。
創業から今年12年目を迎えるこのハコの名称はご亭主の髙橋浩氏が材木商であることに由来する。店のロケーションも角材が立ち並ぶ店舗エリアの敷地内に佇む一軒家。店の内部に入ると、木の温もりも暖かいこじんまりとした尺の程よいスペースが広がる。
そんな舞台での今宵のステージは、「夢DUO」。そう、結成から30年強を重ねたボーカル(普段はピアノも奏でるが今宵は声一本)の宅’shoomy‘朱美氏とギター加藤崇之氏(加藤氏は今夜当地14回目の登場という)との鉄壁のデュオチームである。今宵は、このコロナ禍で良く目にするようになった感のある「少し長めの1ステージ」での構成。

共作のオリジナル曲を中心に展開するおふたりの緊密な語らいに身を委ねていると、それはまるで緩流と急流がぶつかり生じるかのような気の畝りによって、緩やかに自らの時空感覚がズラされて行く感じが度々訪れた。それは特に、ステージも開始から1時間を経過しようとした頃から始まりそのまま本編最後までを繋いだ(メドレーではない)三つの佳曲。それらはすなわち、共作の〈歩こうよ〉、加藤氏の〈海の思い出〉と〈泣いて笑って〉で特に極まった。その場に及んで私は、散らばった記憶のピースをかき集めるのに大わらわだったと言える。とにかく、おふたりが互いの次の一手を楽しみに待ち受けながら、一旦投げられたきっかけは、しかと受け止めて存分に味わい尽くそうとする。そんな「老舗」duoだからこそ自然と滲み出る幸せな表情に満ち溢れた世界にドップリと浸からせて頂けた充実の宵だった。

#137 12月9日(水)
Jazz & Booze 茅ヶ崎ストリービル
http://www.jazz-storyville.com/

瀬尾高志(b) 林栄一(as)

引き続き感染予防はゆめゆめ怠らずに、それでも続く「Live After Live」。

今宵のライブの現場は、ご近所(隣町)の寄港地・茅ヶ崎ストリービル。
今夜のステージは、私にとっては、まさかのキャスティング。最近、居を横須賀に移されたベーシストの瀬尾高志氏が、新たな活動の場を模索する中で、このハコの噂を聞くに及び、それがこの方との DUOという形で結実した。そのお相手とは、そう、アルトサックスの林栄一氏である。

まさか、この河岸で林さんを聴ける日が来ようとは!まさに快哉を叫びたい気分だった。
しかし巷に様々な「林栄一考」が溢れかえる昨今の状況下にあって、私如きがうっかりと熱狂と興奮にまかせその筆致の勢い抑え切れず、解説や分析めいた言葉を暑苦しくダラダラと弄することは極力避けたく、すると冷静に考えれば考える程、私が発せられる適当な言葉をなかなか直ぐには見つけることが出来ない。
それでも、敢えて苦し紛れに手短なコメントを付すとすれば、
今宵は唯、生身の林さんと瀬尾さんが私の直ぐ眼前にすっくと立って、慈しみと照れ・充足感を湛えた眼差しを時折控えめに交わしながら、C.ミンガスやT.モンク、更には互いのオリジナル・バラード、加えて、所謂ジャズ・スタンダード。それらは、〈What Is This Thing  Called Love〉〈You Don’t Know What Love Is〉等を題に採り、単なる通過儀礼に止まらずに、密度と純度の極めて高い音魂をこちら聴き人に投げ続けてくれた。それが、快哉だったということに尽きる。

最後に、このハコがオープンして約2年強。
店長として、いつも我々聴き人を温かく迎え入れてくれた菅原瑞紀さんがこの12月末で店を去り、元職を活かした次のステージに進むという。(因みに、今後は、彼女の父親でありオーナーの菅原一則氏があれこれと策を練りつつバーテン見習いとしてカウンターに立つと聞く)
例えは悪いが、それは端役だったかもしれないが、日本のジャズシーンの活性化の一翼を担ったひとりの役者としての彼女の今後の飛躍を祈念したい気持ちで一杯である。
彼女にとっても、今まさに円熟の境地にある林さんと昇り竜の瀬尾さんを至近距離で聴くことが出来たことは、一生の財産になったと私は確信する。
その意味では、オヤジから娘への大した花向けのブッキングの場に立ち会えた感のある忘れじの宵。

小野 健彦

小野健彦(Takehiko Ono) 1969年生まれ、出生直後から川崎で育つ。1992年、大阪に本社を置く某電器メーカーに就職。2012年、インドネシア・ジャカルタへ海外赴任1年後に現地にて脳梗塞を発症。後遺症による左半身片麻痺状態ながら勤務の合間にジャズ・ライヴ通いを続ける。。

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