小野健彦のLive after Live #188~#194
text & photo by Takehiko Ono 小野健彦
#188 9月19日(日)
川崎・百合ヶ丘 Coffee & Beer Wadachi 轍
https://www.wadachi-coffee.com
譚歌DUO:金澤英明 (b) 石井彰 (p)
台風一過で暑さの戻った今日のライブの現場は、初訪問の「川崎・百合ヶ丘・轍」
百合ヶ丘駅と言えば、今やお隣りの新百合ヶ丘駅周辺の大規模開発により、私鉄沿線の目立たぬ小さな駅となっているが、川崎市西部に位置し、昭和40〜50年代は、都心部のベッドタウンとして、背後に位置する王禅寺等の新興住宅地の隆盛を支えた玄関口であった。かく言う私にとっては出生直後から就職する迄の約20年間を過ごした想い出深い土地でもある。その小田急線・百合ヶ丘駅から至近距離の路地裏に「珈琲と音楽と自転車と」をコンセプトに’19/5令和時代の幕開けと共に産声を上げたのが、「Cofee & Beer 轍 wadachi」である。
こちらは定席のライブハウスではないが、不定期の週末にじっくりと聴かせるジャズの番組をブッキングしているところはなんとも頼もしい限りである。さて、話を前に進めよう。
今日のステージは、今や説明不要の「譚歌DUO」。そう、金澤英明氏(B)と石井彰氏(P)による人気デュオチームである。このおふたりによる毎週日曜日恒例のYouTube配信番組「譚歌チャンネル」が、ジャンルに囚われない稀代の表現者を招き、ジャズを語り共演を重ね続けているという事実は、コロナ禍における表現者の往き方の好事例のひとつとしておおいなる賞賛に値すべきものだというのは衆目の一致するところだろう。実は、その石井氏にとっても、ここ百合ヶ丘は小学六年生までを過ごした土地であり、その意味で今日は、石井氏にとっても私にとっても濃いノスタルジーに支配されたひとときになったと言える。
それはそうとして、こちらのDUO、同所へは、昨年12月に続いて2度目の登場と言うが、つい数日前迄、シンガー・吉田美奈子氏との東北ミニツアーを敢行して来たばかりとあってか、その勢いをそのまま持ち込んでの充分過ぎる程に練り上げられた音創りが展開されて行った。ここで、当夜披露された楽曲のいちいちについて触れるつもりはないが、中に数曲織り込まれたミディアムテンポナンバーで場に効果的な彩りを与えた他では、〈Moon River〉〈My Way〉〈Danny Boy〉〈Smile〉〈My Foolish Heart〉等の佳曲を、譚歌=バラード仕立てにしてその中心に据えたセットリストからは、人気者故の派手さとは無縁の、自らの信じたジャズの流儀を踏まえながら、各々の希求する美のメロディを丁寧に紬ぎ響かせようとするひたむきな仕事人の姿が色濃く見てとれた。
金澤氏と石井氏の歴史が、そうして、石井氏と私の歴史が交錯し、幸福な形で溶け合った稀有な秋の日の出来事だった。
#189 9月20日(月)
横浜・希望ヶ丘 Jazz Live house CASK
https://jazzlivecask.wixsite.com/cask-kibougaoka
久米’ガキオ’雅之 (ds) 桜井郁雄 (b) 中牟礼貞則 (g)
清々しい秋晴れの今日も、快調に進むLAL。
今日は、横浜・希望ヶ丘・CASKに久米’ガキオ’雅之氏(DS)のトリオを聴きにやって来た。
以前より同所のスケジュール表に今宵のトリオの名前をしばしば見つけてはいたが、なかなかタイミング合わずで、今日やっと念願のご対面が叶うこととなった。トリオは、ガキオ氏を中心に、桜井郁雄氏(B)と中牟礼貞則氏(G)ががっぷり四つに組むという盤石の構造。ガキオ氏と桜井氏というしなやかなタッチに臨機応変アイデア豊富で推進力のあるリズムバターンを産み出せる芸達者な共演者を得て、サイドマン・中牟礼氏の十指もことの他冴えを見せて、終始サウンドの芯をとらえながら緩急に亘り、時にザクザクとした野性的な質感のトーンも交えて自らの音楽観を表出させて行った。
ひとつのフレーズが幸いにもこの世に生まれ、それが次の未知なるフレーズを呼び覚まして行くという抽象的なサウンドモチーフの無限ループから、次第にこのひたむきな表現者の確信に満ち溢れた革新の実像が鮮やかに浮かび上がってくるという仕掛けには、アレンジャーとしても秀でた才を持つこのバンドのリーダーの視野の広いきめ細やかなサウンドマネジメントの妙が強く感じられ、その趣味の良さにはおおいに唸らされてしまった。
#190 9月24日(金)
茅ヶ崎・Jazz & Booze ストリービル
http://www.jazz-storyville.com
渋谷毅 (p) 落合康介 (b)
@茅ヶ崎ストリービル
今宵のステージには、待ってました、の現代日本ジャズ界にあって押しも押されもせぬ大看板の渋谷毅氏(P)と、私的2021ジャズミュージシャンオブ・ジ・イヤーの最右翼、落合康介氏(B)が登場した。
その落合氏といえば、最早言わずもがな、埼玉県北本市において、高齢化が進みシャッター街化した団地内商店街の活性化を目指し、地元有志のバックアップのもと、不退転の職住一体を敷き地元に深く根差して、シェアキッチン形態のジャズ喫茶「中庭」を核にした多目的スペースを今年5月にオープンしたまさに行動する表現者であり、その志高き各種の活動と合わせて、まさに、今年度のMVPの称号を贈るには相応しい逸材と言えよう。そんな落合氏と渋谷氏のDUOが隣町にやってくると聞けば、行かない手はない。
私の記憶を裏付けるべく落合氏にお聞きすると、こちらのDUO、本格的な完全DUOでの共演は今宵が初であり、開演前から、その音創りの方向性に私の期待は最高潮に達っして行った。
ほぼ定刻通りに、満場の拍手に迎えられ、おふたりが静かに登場する。と、そこからの約2時間は、佳曲の数々を題に採ったそれはもう息を呑むようなインタープレイのオンパレード。渋谷氏がステージでしばしば演奏される曲や、共に創造的な時間を共有した表現者との想い出深きナンバー、更には自身、「久しぶりに弾きます」とのコメントも付された本日のメニューは以下の全12曲。※何も素晴らし過ぎる素材達につき、ひとりでも多くの方と共有致したく、ここでは敢えて全曲公開させて頂く次第。
[1stセット]
①Old Folks ②蝶々(渋谷氏オリジナル)〜Misterioso③Body&Soul ④The Folks Who Lives On The Hill(J.カーン作)⑤Falling Grace(S.スワロー作)
[2ndセット]
①But Not For Me(落合氏ソロ)②A Sleepin’Bee(酒井俊氏のMCのエピソードと共に)③Stella By Starlight ④Prelude To A Kiss (D.エリントン作)⑤I’m So Lonesome I Could Cry(H.ウィリアムス作)⑥月の鳥(石渡明廣作)⑦Soon I Will Be Done With The Troubles Of This World(Traditional)
しかし、久しぶりにそのナマのプレイに接した落合氏からはその音楽観がより大きく拡がったことを痛感させられ、横綱・渋谷氏に向かって静かに挑みかかるような場面も散見されたのは、なんとも逞しくいよいよ好感が持てる展開。
対する渋谷氏も、このなんとも頼もしい若き同行者を得て、胸を貸しながらも、この時を手応え十分に満喫する表情が随所に見られて、いつもの渋谷さんに比べて心なしか緩急で雄弁な印象を強く受けたのも事実。ややもするとワンサイドゲームになるリスクも孕みながら終始聴き応えのあるシーソーゲームに持ち込んだおふたりの魂の交歓からは、総じて言えば、「そこに良いメロディが存在し、それを愛しみながら奏でる表現者が居る時、サウンドは自ずと佳き方向に流れて行く。」そんなことを強く感じさせられた得難きひとときだった。終演後、ご亭主の菅原さんから、早速次回のオファーがなされていた。早期の実現を是非お願いしたいものである。
#191 9月25日(土)
世田谷・祖師谷 カフェ ムリウイ
https://www.ne.jp/asahi/cafe/muriwui/
水月:水谷浩章 (b) LUNA (vo) Duo
今日のライブの現場は、念願の初訪問となった、カフェムリウイ。
お店のご紹介は、同所のHP内のそれが端的明快のため、以下にほぼそちらから拝借させて頂くこととする。
cafe MURIUI:「世田谷は祖師谷のカフェ、古くて四角いビルの屋上、中と外がある。(中略)店名はジャングルの上に住むお猿の名前、自家焙煎珈琲、自家製ハンバーガー、お酒、ライブ、小劇場、英会話・ヨーガ教室、楽しいこと、ふつうが特別。」
陽も落ちた定刻18時、そんななんとも心惹かれるスペースのステージに登場したのは、水谷浩章氏(B)とLUNAさん(vo)のDUOチーム、その名も各々の名前をもじり「水月」だ。既に数々の時空を共有したその融和性は申し分ない。各々が其々の楽器である声とウッドベースを何ものからも解き放たれた自由さで、至極たっぷりと豊かに鳴らし切りながらそのステージが進められて行く。唄い終わった後「恐らく今年最後の」と語った〈Summertime〉でスタートし、日暮れた明日方向の空を天気読みしながら届けられた〈Come Rain Or Come Shine〉を経由し、ベーシスト・永田利樹氏作品にLUNAさんが歌詞をつけた〈Abyss〉と、続けてC.ヘイデン作〈Ellen David〉に立ち寄りながら、LUNAさんオリジナルの〈残滓[ざんし]〉で締めた1st.ステージ。続く短いブレイクの後、LUNAさん入魂のオリジナル・中村哲医師に捧げた〈べシャワール〉で幕開けした2ndステージでは、中盤に谷川俊太郎・賢作親子共作〈ひとり〉を挟み込みながら、最終盤には、私としてはなんとも嬉しい選曲だった、岡林信康作〈私たちの望むものは〉とB.ディラン作〈My Back Page〉が如何にも効果的に並べて配置された。そんなバラエティ豊かな選曲が連なったステージ全般を通して、はじめ演者は、その愛器〈声とベース〉を駆使して自らの内と外とを行き来しながら、やがて、それが自己と共演者との交歓の局面へと緩やかに変容を遂げて行く。それらの在り様はまるでメビウスの輪の如し。「中と外がある」空間に咲いた「自と他」の交信から生まれた鮮やかな表現活動の道程。視覚と聴覚に強く訴える「構造の妙」を堪能した宵。終演後、私の頬を撫でたのは、涼しげでなんとも心地よい色無き風だった。
#192 9月26日(日)
下北沢ラ・カーニャ
https://lacana.sakura.ne.jp
下田逸郎 (vo/g)
下田逸郎氏(VO/G)を聴きに下北沢ラ・カーニャにやって来た。私は無論ジャズが好きであるが、自らの言葉で紡ぎ唄われる物語を聴くことも大好きである。
今日は、新作「河を渡る」の発売記念即売会と氏の弾き語りという趣向。根強い人気を誇る表現者の登場とあって、前売り完売状態での祝宴のスタート。下田氏と言えば、自らのシンガーソングライターとしての横顔に加えて、石川セリ〈セクシィ〉松山千春〈踊り子〉桑名正博〈月の明かり〉等多数のミュージシャンに対する楽曲提供者としても知る人ぞ知る存在。
そんな下田氏のナマ唄は、’13/3月インドネシア・ジャカルタで脳梗塞に倒れる以前、大阪に暮らした際京都「都雅都雅」や、大阪「TORIIホール」におけるライブでお聴きして以来であり、今日は16年振りのまさに待望の再会となった。
あれから季節は巡り、今や古希から三年を経過した下田氏であるが、その飄々とした中にも独特のオーラは依然健在。
持ち味の「男と女の間に生まれ行く複雑にもつれあう事情」や「森羅万象の内に見え隠れする様々に微妙なきっかけ」を鋭い洞察力で掬い取り、それを柔らかなニュアンスの日本語に包み、一言一言丁寧にこちら聴き人に伝えようとする「淡い」感じには、相変わらず知らず知らずの内に強く惹きこまれてしまった。その「淡い」唄声を効果的に増幅させるのが卓越したギターワーク。ガットギターを実に効果的に言葉へぶつけながら時に掻き鳴らすその瞬間には、こちらの心根も鷲掴みにされてしまう。今日も単なる耳触りの良い吟遊詩人の誦じる語り唄の枠を超えた、確信犯的心盗人の術中にまんまと嵌められた、そんな印象を強く受けた午後のひととき。定番ソングもところどころに顔を見せたが、新曲も多く披露された。今を生きる下田氏と出逢えたことが何よりも嬉しかった。90分一本勝負休憩無しの圧巻のステージ。私の中の歴史の点と点が繋がったなんとも幸せな時間だった。
※本日は演奏中の写真撮影はNGのため、リハーサル終わりの下田氏をパチリ。(添付6枚目)
再会の第一声は、「まだ、唄を作って歌っているよ」だった。(同8枚目)
#193 9月30日(木)
川崎 Public House ぴあにしも
http://pubhpp.com
Peaceful Dreams:高田ひろ子 (p) さがゆき (vo)
@川崎・ぴあにしも、同所には、’18/4-1[私の誕生日]以来2度目の訪問。
ここで、冒頭からいささか話が逸れるが、時計の針を巻き戻して…。
あの時は、橋本信二氏(G)と松崎加代子氏(VO)の師弟DUOに更に梶原まり子氏(VO)も遊びに来て下さり、3人の賑やかな共演で舞台の幕が一旦閉じ、演者皆がステージを降りた途端、信二さんの「あっ、大事なの忘れてた!」に、加代子さん・まり子さん「あっ、いやだー、本当だあ」となり、皆が再びステージに戻り、私へのBDソングを歌って下さったという一幕もあった思い出深い日。そんな懐かしくも和やかなひとときを思い出しつつ、今夜の舞台の幕開けを待った。
今宵はこのハコを借りての「ホームコンサート」の体とあって、演者も聴き人達も各自飲み物・つまみ等を自由に持ち込み、その時を満喫するという趣向が取られたため、酒好きの今宵の演者も酒を煽りながら、徐々に気持ちを高めて行くその過程を皆で共有しながらの幕開き前の時間が緩やかに流れて行くという、なんともおつな展開。
それでも、18:30の定刻を過ぎるとステージの灯りが灯され、今日の主役がステージへと進む。高田ひろ子氏(P)とさがゆき氏(VO)のDUOチーム「Peaceful Dreams[ピードリー]」である。既に十分過ぎる程温まっている場に向けて、おふたりの掛け合う音達が、極く慎ましやかに沁み込む様に広がって行く。冒頭の〈Blame It On My Youth〉は、まるで夜明け前後にかけて蓮の花の開く様を想起させられ思わず息を飲んでしまう。それは演者にしても同様で、今宵は一曲の演奏後に、互いに息を飲み顔を見合わせ満足げな表情を浮かべる場面が散見された。そうした、互いに対する最大限の敬意と賞賛の姿勢が、めくるめく大きな世界感を描き出して行く。肝胆相照らす仲のおふたりから産み出される音の連なりはどこまでも伸びやかで素直な肌触りを持つもの。加えてその後徐々に明らかになって行くその優しさの奥に見え隠れする採用した佳曲達に対するエッジの効いた解釈にはこのコンビの創造性の深淵をまざまざと見せつけられることとなった。各々が持ち寄った曲を交互に演ずると言う進め方も、徒に互いに頼ることなく、互いに対して適度なスリルを課す点において、常に新鮮で賞味期限の長いコンビネーションに繋がるものと確信した。因みに今宵取り上げられた曲達もおふたりの幅広い音楽性が良く反映されたものであり、ブラジル物からは、A.C.ジョビン& C.ヴァルギ〈白と黒のポートレート〉、B.マルティーノ〈Estate〉、I.リンス〈The Island〉に加えて、さがさんのドラマティックな歌唱が映えたD.カイミ〈O Cantador〉等が顔を出した。その他では、B. エバンス〈Turn Out The Stars〉やF.D.マルケッティ〈魅惑のワルツ〉が場面転換に効果的な役割を果たした。更には2ndステージの冒頭、客席からのリクエストに応えたサイモン&ガーファンクル〈Old Friends〉からP.サイモン〈Still Crazy After All These Years〉へ続けたくだりでは、ジャンルの壁を軽々と超えられるしなやかな柔軟性をも見せつけてくれた。
#194 10月3日(日)
下北沢・No Room For Squares
https://www.nrfsbar.com
水谷浩章 (b/g) 芳垣安洋 (ds) 松井宏樹 (as/ss)
長月9月のLALでは、幾つかの初訪問の現場を堪能したが、続く神無月最初のライブの現場も待望の初訪問となった。下北沢「No Room For Squares」そう、かの不世出のハードボイルドテナーマン、H.モブレーのBN盤タイトルを冠した注目のジャズバーである。「Lady Jane」、「Apollo」といった強豪の先輩店に続いて、この下北沢の地で創業したのは令和元年。以来、その捻りの効いたブッキングにながらく強く心惹かれてはいたものの、なかなかタイミング合わずで、いよいよ本日が満を持しての初上陸となった。
店HPの「コンセプト」によると、
「本格的なjazzのレコード、最良を求めたカクテル、禁酒法時代を体感出来る最高のMood」とあり、緊急事態宣言が解除され、禁酒法令が緩和された中での訪問には、人知れずひとり苦笑いしながらの入店となった。
今日のステージも、これまた実に興味深い顔合わせ。聞けば、今日がお披露目となる「ツキノマグマ」と名乗るそのトリオは、
水谷浩章氏(B/G)芳垣安洋氏(DS)松井宏樹氏(AS/SS)からなる新ユニットである。
日曜日の昼下がり、若者で賑わう街のド真ん中、雑居ビル4階にこれらの強者達を呼び込むとは、禁酒法下の無許可バー/密売所(それらはかつて「speakeasy」と呼ばれた)を志向する若きご亭主・仲田さんの、まさに慧眼が効いたブッキングと言えた。
それはそうとして、肝心のライブである。
T.モンク チューンからの幕開きでジャズの先達に敬意を表した後は、水谷氏・松井氏、更には池田千夏氏・加藤崇之氏・南博氏らのオリジナル曲を取り混ぜながらステージが進められて行く。しなやかに伸び縮みする引き締まったリズム隊の鼓動に、幽玄なトーンのアルトサックスが絡み付いて行く。そうして三者が緊密にもつれ合いながら、揺蕩い、確たる独創的な軌跡を描く流れにこちら聴き人はじわりじわりと惹きつけられて行く。余白が生まれては消えゆく何とも立体的な構成。この日この場に集いし者共がそんな硬軟自在かつ融通無碍に掌握されるトライアングルスペースの移ろいに戯むれる内に、あっという間の2ステージが終わりを迎えた。しかし、振り返り、私にとっては久しぶりの再会となった松井氏の特にソプラノサックスのプレイに、想像を遥かに凌駕した思索的な響きを聴くことが出来たことが何よりの収穫だったと言える。立ちはだかる稀代の先輩達の胸を借りながらも自らの主張を堂々と吐露し切ったその姿は如何にも清々しく、実に美しく映った。
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