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Reflection of Music 横井一江特集 『生活向上委員会2016+ドン・モイエ』No. 223

Reflection of Music Vol. 49 (Extra) 生活向上委員会+ドン・モイエ

生活向上委員会+ドン・モイエ @座・高円寺、東京 2016
Seikatsu Kojo Iinkai + Don Moye @ZA-KOENJI, Tokyo, October 10, 2016
Photo & text by Kazue Yokoi 横井一江


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公演タイトルは「TIME TUNNEL」。生活向上委員会のリーダー原田依幸と梅津和時の30数年ぶりの共演、加えてファマドゥ・ドン・モイエの19年ぶりの来日である。

原田と梅津の熾火から燃え上るような即興演奏。続いて登場したドン・モイエの繰り出すパルスがさらなる空間を創出する。鍛えられた耳と感性によって導かれる音宇宙。チーンと響くベルの音さえ研ぎ澄まされていて美しい。手数の多い、あるいはパワーがあるだけのドラマーにはなせぬ技だ。二人の再会の場にドン・モイエをゲストとして招くというアイデアは功を奏したといえる。内的な衝動がもたらすエモーショナルな3者の交歓に、それぞれの音楽家としての軌跡が脳裏に断片的に浮かび上がりつつも、そこに満ちていたのは颯然と今ここを突き抜けていくサウンドだった。年輪を重ねるというのはこういうことなのか。あるべき出会いはまたとない邂逅となったのである。

めくるめく速さで、けたたましく過ぎていく現代の時間。性急さは音を聴くことも思考することも感性そのものも後退させる。そのような日常に楔が打ち込まれたような、耳が、精神が解放させられたひとときだった。


コンサートをスライドショーでドキュメントしてみた。
(推奨ブラウザ: Google Chrome、Safari)

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【関連記事】 Reflection of Music vol. 47 ファマドゥ・ドン・モイエ

横井一江

横井一江 Kazue Yokoi 北海道帯広市生まれ。音楽専門誌等に執筆、 雑誌・CD等に写真を提供。ドイツ年協賛企画『伯林大都会-交響楽 都市は漂う~東京-ベルリン2005』、横浜開港150周年企画『横浜発-鏡像』(2009年)、A.v.シュリッペンバッハ・トリオ2018年日本ツアー招聘などにも携わる。フェリス女子学院大学音楽学部非常勤講師「音楽情報論」(2002年~2004年)。著書に『アヴァンギャルド・ジャズ―ヨーロッパ・フリーの軌跡』(未知谷)、共著に『音と耳から考える』(アルテスパブリッシング)他。メールス ・フェスティヴァル第50回記。本『(Re) Visiting Moers Festival』(Moers Kultur GmbH, 2021)にも寄稿。The Jazz Journalist Association会員。趣味は料理。当誌「副編集長」。 http://kazueyokoi.exblog.jp/

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