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特集『ECM at 50』タガララジオ 多田雅範No. 260

タガララジオ 54
radio Tagara 54

text by Masanori Tada 多田雅範

「澄む闇、点滅する赤いlight」、このフレーズ、頂点だなー、小沢健二「彗星」、歌詞を全部呪文をとなえるような12月、タガララジオ54は今般発売に漕ぎつけたECMカタログ増補改訂版をお祝いしてECM特集をしようと書きはじめる、その前にCM、

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アメリカの権威あるジャズメディア All About Jazz で記事になった、

Meet Hiroyuki Masuko
https://www.allaboutjazz.com/meet-hiroyuki-masuko-by-tessa-souter-and-andrea-wolper.php?page=1

朝日新聞が運営するウェブメディア『DANRO』でも取材された、

「ひたすら音楽を楽しみたい」 ニューヨーク「ジャズ詣で」17年の筋金入りファン
https://www.danro.bar/article/11824895

さらに、アルゼンチンの音楽サイトEl Intrusoが毎年実施しているミュージシャン・批評家投票による年間ベストに、日本のジャズクリティークでただ一人参加している(スクロールすると写真付きで投票内容が載っている)、四谷音盤茶会、タダマスのリーダー、益子博之、

Encuesta 2018 – Periodistas Internacionales
http://elintruso.com/2019/01/05/encuesta-2018-periodistas-internacionales/

この現代ジャズ世界観を、深く共有している、そしてそれらはこれまでの Jazz/Improv からよくわからないところへ、進化なのか離脱なのか、そもそも理解の届くところはその程度もの、よくわからないけど気持ちいい、謎、だけがぼくらを照らす、

益子博之×多田雅範=四谷音盤茶会 vol. 36
1月25日(土)  open 18:30/start 19:00
参加費:¥1,500(1ドリンク付き)

今回は、2019年第4四半期(10~12月)に入手したニューヨーク ダウンタウン~ブルックリンのジャズを中心とした新譜アルバムの紹介と、恒例になったタダマス年間ベスト2019の発表があります、

ちなみに、タダマス年間ベスト2018は、こういうラインナップ
http://musicircus.on.coocan.jp/main/2018_10/tx_2.htm

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<track 466>  Urlicht  (2:10)  /  Niels Van Heertum  from 『Hum Back』 (Aspen Edities)  2019

このトラックに痺れる、

ユーフォニウムというチューバの仲間のような管楽器を吹く響き、焦点は“響き”なのだが、このトラックだけに漂う、調性を伴ったオルガンのような響きとの溢れる倍音の緩やかな、陶酔、2分10秒、

タダマス35で選曲されて、唖然、ノックアウト、この多幸感、もとい、なんかさー、デジタルでは絶対に作れないんだよー、楽器であることににも依拠していない快楽、

体表の毛穴で音楽を聴いている、っていうの?、

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<track 467>  Faint Tune / Chris Speed Trio  from 『Respect For Your Toughness』 (Intakt)  2019

https://intaktrec.bandcamp.com/album/respect-for-your-toughness

トラック4、これも聴いてみ?、これもタダマス35でかかったんだけど、ジャズ演奏解析では出てこない“響き”に“圧力”に撫でられるよう、

クリス・スピードのサックス音の謎は、クラリネット奏法に習熟した技能かと思われるが、このトラックではベースもタイコもその楽器としてとよりも、トントンと心臓マッサージをしてくるように体表に響く、益子が橋爪亮督を中心に据えたライブシリーズを“タクタイル・サウンド”と名付けた理由を連想する、

シーンに身を置いていたゲストの柳沢耕吉は、クリス・スピードはすごい人気なんだという、トニー・マラビーはシーンにおけるメンターの存在らしいがクリス・スピードもそういうシーンの先導的なところにいるんだな!、だろ!

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<track 468>  Where Or When / 鈴木 央紹   from 『Favourites』 (T5Jazz Records)  2019

鈴木 央紹 – tenor & soprano sax
宮川 純 – hammond b-3 organ
原 大力 – drum

コルトレーンバラッドより気持ちいいかもしれないこのアルバム、とろけるトラック1、イントロのハモンドオルガンの祈りに導かれてのサックスの鳴り、

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<track 469>  Obsius / 藤井郷子   from 『ストーン(ピアノ・ソロ)』 (Libra)  2019

倍音と残響音、を、凝視する、2019年に最前線にいる藤井郷子に驚愕する、

ポール・ブレイ師匠もこれを聴いて降臨してくる、時のしじまに忽然と現れた音楽と精神の世界、

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<track 470>  Casting Spells And The Coves / Flin Van Hemmen (Neither/Nor Records)  2019
https://neithernorrecords.bandcamp.com/album/casting-spells-the-coves

世界が待ちに待ったフリン・ヴァン・ヘメン新作は驚愕の二枚組、発売時の購入者4にんのうち3にんがタダマスメンバーだった(おれはネット不買なので入っていない)のにも驚愕したが、

サウンド空間のはじっこの鳴りにも、というか、はじっこまで視ることは狂った疑似ステレオアナログだったビートルズのレコードに夢中になった中学生のときからそうだったわけだが、

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<track 471>  Three Crowns / Maciej Obara Quartet  (ECM 2662)   2019

さて、ここからECM特集、

この夏、タワレコ冊子『intoxicate』にお声かけいただいて、50周年を祝す小文を書かせていただいた、

「キース・ジャレット、ヴィジェイ・アイヤー、ニルス・ペッター・モルヴェル……50周年のECMによせて」

https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/22715

「00年代を跨ぐ頃に、ハル・ラッセルやジョー・マネリ、ロビン・ウィリアムソンをプロデュースした英国人スティーブ・レイクがECMにエッジをもたらしていたが裏方にまわってしまったのが残念だ。」と、わたしには珍しく痛烈な爪痕を残したのだが、またしてもアイヒャーに先回りされていた、

スティーブ・レイクがこの作品でプロデュースに復帰しているのだ!、アイヒャーの後継者候補にサン・チョンと並んで双頭体制を敷くというのか、全身でどよめく、

この作品、ガルバレク4を再現させるかのような手触りだが、伝統はこのように50年かけて定着するものかと感慨にふける、ブルーノートみたいだ、なによそれ、ECMにスティーブ・レイクにブルーノートって、

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<track 472>  Romania / Andy Sheppard Quartet  (ECM 2577)  2018

たまらんぜよ、アンディシェ・パードがこんな深くて渋くて、後ろから抱きしめたくなるようなオッサン詩情を決めてくるなんてよ、たださんこれは伝統和菓子だとは言わないのですか、若いな、この微細に込められた語りの誠実さややるせなさを解さないようでは、

Renato Teixeira – Romaria

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<track 473>  Polarization / Julian Priester And Marine Intrusion  (ECM 1098)  1077

ECM50周年でこんな素敵な記事が出ましたね、

Best ECM Albums: 50 Must-Hear Classics From The Legendary Jazz Label
https://www.udiscovermusic.com/stories/best-ecm-albums/

このリストで49位にランキングされたジュリアン・プリースター、

20年前に失業給付を受ける待機期間にECMを1番からもう一度聴くことをやったが、ハンコックの暗黒時代のアナログを探しに群馬県太田市在住から都内の中古レコード屋に通ったものですだ、

ジャケは稲岡さん率いるトリオレコード国内盤を掲げます、日本語ライナー読みたい、わたしたちの音楽サイト musicircus で復刻計画したいものです、

改めて聴きなおす(Spotifyでは未CD化ECMほぼほぼ聴けるのよ)、もう、素敵よー、ワインのように音楽は熟成するのか、

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<track 474> Winterreise / Hajo Weber, Ulrich Ingenbold  (ECM 1235)  1982

この作品は幻だったのではないか、この作品だけリリースして消えてしまったかのようなギターの二人、月光茶房の原田店主がこの二人の素性を知っているひとがいると話していたような気がする、

このアルバムも時のしじま盤だわ、ジャケそのままの儚い世界、ECMは奏者も届かない場所を封じ込める、追憶している、戻れない場所をずっと見つめている音楽、2曲目の「Karussell」回転木馬ばかり編集カセットに入れていたわ、

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<track 475> EU / Werner Pirchner  (ECM New Series 1314/15)  1986

板室街道をドライブした那須塩原では、ココスのかき氷「ミルクいちご&ピーチ」とお店の冷房ですっかり夏風邪をひいてしまう、市販の風邪薬を倍付けでのんで10時間睡眠を2連チャン、鮮やかに覚醒して、豊竹山城少掾と北川暁子ピアノ三善晃海の日記を聴く、

三善晃の「海の日記」というピアノ曲は、明らかに物心つくかつかないかの幼児の、世界をつかんでゆくような耳の視線がある、もしくは音の連なりが記憶の始原をつつくようなところが、ある、

同じようなものに、ヴェルナー・ピルヒナー Werber Pirchner の2枚組『EU』(ECM New Series 1314/15)1986がある、このところECMのレア音源がCD化されたり Spotify で聴けたりする、
(2019年8月15日の日記)

ECMカタログでは誰が何と書いてあるのだろう、えっ!、おれが書いている、ぜんぜん違うこと書いている、だけど同じことを言っている、

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<track 476> The Transitory Poems  Live at the Franz Liszt Academy, Budapest  / Vijay Iyer, Craig Taborn (ECM 2644)  2019

まさに現代ジャズシーンを代表する二人のピアニストが、ヨーロッパの舞台に立ちピアノ文化の中心地のガイストに眼差されてピアノを響かせる、という特別な事、絶対にニューヨークをダウンタウンを持ち込ませないヨーロッパ大陸のちから、マイルスだってジャレットだって、それに対峙して削がれ武器にも再生にも誇りにもしてきた、

世界屈指のECMリスナー、高見一樹がスルドイ指摘、

ヴィジェイ・アイヤー、クレイグ・テイボーン『The Transitory Poems』 ヴィジェイ・テイボーン、あるいはクレイグ・アイヤーの誕生?
https://mikiki.tokyo.jp/articles/-/21631

ともにECMを主戦場にして別々の新しい樹木のようにリスナーを驚かせ続けている二人の最強ピアニストがキメラの如くに、それは絶対零度に抗うように、二つの炎が、いわば吹きすさぶ吹雪の中にあって、

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<track 477>  For 2 Akis / Shinya Fukumori Trio  (ECM 2574)  2017

おれは何を書いている、ポール・モチアンじゃないだろ、ヨン・クリステンセンだろ!、ごめんなさい、

NHK-FM「セッション2019」橋爪亮督グループを聴く、

橋爪亮督(Tenor, Soprano Sax)
市野元彦(Guitar)
佐藤浩一(Piano)
小牧良平(Bass)
福盛進也(Drums)

メンバーが変わると、新しい地平へと音楽は変貌を遂げる、福盛進也の真価にも気付く、佐藤浩一のライジングが目覚ましい、

いつもわたしが妄想している現代ジャズ世界ランキング48に常駐しているドラマー橋本学の沸騰を作り出す革命的なグルーヴ、を、いつかまた聴くことができるだろう、

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<track 478>  Bee’s Knees / Ruslan Sirota  from 『A Lifetime Away』  (335 Records)  2019

1曲目、ときめくサウンド、上昇するラインが好き、

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<track 479>  Irrationalities / Petros Klampanis  (Yellowbird)  2019

多田雅範

Masanori Tada / 多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe 1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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