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タガララジオ 多田雅範No. 261

タガララジオ 55 track 480-485
radio Tagara track 480-485

text by Masanori Tada 多田雅範

radio Tagara 55  track 480-485

 

秋になっての台風と水害が過ぎたかと思うと12月を迎えている、早くも年間ベスト記事が続々と、

Jazz Times 「Top 50 Albums of 2019」
https://jazztimes.com/features/lists/year-in-review-top-50-albums-2019/

Rolling Stone 「The Many Sounds of Jazz in 2019 : A Listener’s Guide」
https://www.rollingstone.com/music/music-features/2019-jazz-albums-923949/

Pop Matters 「The Best Jazz of 2019」
https://www.popmatters.com/best-jazz-of-2019-2641493422.html

 

めまいがしてきた、何聴く?、ブランフォード・マルサリスの久しぶりの原点回帰作『The Secret Between the Shadow and the Soul』を聴くー、さすがや、ちゃんと現代的で技術点も2019年記録だし、見事すぎる、気分は高級車に乗って心配事なしやな、乾麺をゆでて味噌といてたまごを落として月末のやりくりを考えるおれの速度には似合わないすぎる、

益子博之×多田雅範=四谷音盤茶会 vol. 36
1月25日(土)  open 18:30/start 19:00 会場:喫茶茶会記(四谷三丁目)

ではタダマス年間ベスト2019の発表があります、おれはハスミレマ推し、選曲そのものが批評となっている益子博之はどんなラインナップをアルゼンチンの音楽サイトEl Intruso に投票したのであろうか、

Encuesta 2018 – Periodistas Internacionales
http://elintruso.com/2019/01/05/encuesta-2018-periodistas-internacionales/

参考:タダマス年間ベスト2018
http://musicircus.on.coocan.jp/main/2018_10/tx_2.htm

おれは今のところの暫定2019、ざざっと、なにげに女子率高し、世界の希望、

ハスミレマ
RJミラートリオ
アナ・ウェッバー『クロックワイズ』
アレキサンドラ・グリマル
アンジェラ・モリス
マット・ミッチェル Phalanx Ambassadors  ケイト・ジェンタイル

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<track 480> 12/14 EAST MEETS EAST「日本/韓国のこころの歌」~スペシャル・バンドが奏でる日本/韓国の名曲コンサート

福盛進也(ds)、ソンジェ・ソン(sax)、イエウォン・シン(vo)、ジン・ヤン・パーク(p)、さとうじゅんこ(vo)、甲斐正樹(b)
スペシャルゲスト:加藤登紀子(vo)

セットリスト
「Flight of a Black Kite (福盛オリジナル)」、「イムジン河」、「秋田長持唄」、「他郷暮らし」、「3びきのくま」「悲しくれやりきれない」
「鳳仙花」(加藤登紀子)、「二等兵の手紙」(加藤登紀子)、
「木の葉船 (韓国童謡)」、「赤トンボ」、「愛燦燦」、「セッタリョン」~「トラジ」、「アリラン」
En. 「赤トンボ」〜「トラジ」

年間ベストコンサートだった、スペシャルバンド個々人誰ひとり欠けてもこの感興には至らない、個性が重力と星座を形成し音楽が絵画のように生成していた、

即興演奏が羊水のように距離のある個性のあいだを満たし、挨拶をしたり、手を伸ばしたり、目配せをしたり、今日のお天気を頷きあったり、しながら、でもしっかり譲れない個性は現れるというような、

急遽特別出演の加藤登紀子が歌った「鳳仙花」を聴き、帰宅して記事を読む、

【海峡を越えて 「朝のくに」ものがたり】(13)歌には「抗日」も「親日」もない  「鳳仙花」歌う加藤登紀子

https://www.sankei.com/column/news/180408/clm1804080009-n1.html

サックスの語り口のとどまりと類まれな音色に惹かれる、ソンジェ・ソン Sungjae Son はサン・チョン制作ECM『Near East Quartet』のサックスだと帰宅してから知る、作品には彼独自の引力は希薄なのだった、ECMのパレットの素材に留まるには惜しい、ちゃんと聴きたい見過ごせない才能だ、

ハイライトはイエウォン・シンとベースとの即興パートだったか、Yeahwon Shin イェーヲン・シンのECM盤『Lua Ya』ECM2337(2013)は近年のECMでも特筆すべき名盤、サン・チョンによるレーベルの後継者と目されるに相応しい宣言にも似た仕事だった、しかし作品で見せた魅力以上の即興する身体に圧倒されたのだ、この才能は断じて別格なものだ、微細さと透明な意識のありようは欧米もジャンルも横転させているようだ、神は細部に宿っている、

ジャワガムランのプシンデン(女声歌唱)さとうじゅんこも、星座としては離れた立ち位置から支えていた、コンサートで初めて知って You Tube をいくつか聴いている、素晴らしいシンガーだ、

編集CDRを交換する音楽好き二人と連れ立って出かけていた、いろいろ感想はあがった、すべて想定済みです、日韓の「うた」をそれぞれ外部の音楽的鍛錬によって育まれた触手で扱うこと、突拍子もなく福盛のドラミングで彩られる紅白歌合戦までを幻視してしまっている、そこに見える可能性の萌芽はとてもECMや欧米価値体系では掬えないものだし、そのままECMレーベルに対する批評になっていたとさえ思えた、

今年は江崎道朗の著作、『朝鮮戦争と日本・台湾「侵略」工作』、『コミンテルンの謀略と日本の敗戦 』、いずれもPHP新書を読んで、歴史認識を改めていたもので、その道すがらに体験できた得難いコンサートでもありました、


<track 481>  Abiding Dawn / Rema Hasumi   (Ruweh Records)   2019

Rema Hasumi piano, voice, analog synthesizer
Recorded December 2018 and January 2019 at Home
Engineered, Mixed and Mastered by Todd Neufeld
Photos by Tess Ayana
Design by Alejandro Escalona

富士から高速に乗る 見える富士山は雨雲に隠れる、ふもとの重なった山々から水蒸気が湧き上がっているから幾重にもセロファンで透かしを描いた日本画のよう、こんな光景ははじめて見た、

“なんだか洗いたての眼球で世界を見たような気持になった”、文藝春秋、三浦しをん、さっき読んだフレーズ、

蓮見令麻の『Abiding Dawn』をかけて新東名に乗る、富士のふもとの幻想的な雨雲のおおきなナナメの地形に沿うように、霧が大きなスピードで流れてゆく、おおきななつかしいお布団で目を閉じるような気持ちよさ、

2018年ベストだったタイション『Pillars / Tyshawn Sorey』 3 CD+2LPから何か月も乗り越えられない現代ジャズのぼくらの視界、それは多田と益子やぼくのまわりの友人たちだけではなく、先ほど掲げたEncuesta 2018 で圧倒的な1位になっていた現象(それは現象というに相応しいことだ)、その多くの投票人たちにとってもそうだったと思う、

益子が一度ふいに、聴取が記憶として構造化されることを拒絶する「純粋経験」と言えるかもしれない、と、月光茶房原田店主があれはすごいんだけどあとから思い返しても憶えられない演奏だと言ったこと、

しつこく、このタイション『Pillars / Tyshawn Sorey』が2018年に刻んだ断層を指摘しておきたい、立ちすくんで動けなくなったと警告を鳴らす信号手だ、理屈も知性もない役員運転手だ、立ち入り厳禁だ、

だから、2019年を迎えて耳に響いたのはハスミレマとRJミラー・トリオだけだ、

初めて読んで知るように、Jazz Tokyo のこの記事に打たれている、2017年に読んでいたはず、おれの脳には記憶容量が少ないものでね、

ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま 第13回 蓮見令麻~手探りでたぐり寄せた、その糸で織ったもの
2017年3月31日

ニューヨーク:変容する「ジャズ」のいま 第13回 蓮見令麻〜手探りでたぐり寄せた、その糸で織ったもの

 

おおー、菊地雅章、ポール・ブレイ、ジョー・マネリ、おれもこの三人には特別に連れ出されてきた、それはジャズという語も使えない場所だ、

昨夜編集 CDR 友だちのホソダさんと居酒屋で、おれは今年の1枚はハスミレマだよ!と勢いを放つと、あ、わたしもそうですよと静かに微笑む、ほんとうに?合わせてない?、互いに趣味が違うねと言い合って雑談しているのにそこだけは一緒なのだ、


<track 482>  69 min 編集CDR『20191206 彗星』

69 min  編集CDR『20191206 彗星』

01 Faint Tune / Chris Speed Trio  from Respect For Your Toughness (Intakt)   2019
02 彗星 / 小沢健二   2019
03 バランス (from 浮かれている人twilight edition EP)  from Confidential / OGRE YOU ASSHOLE   2013
04 Old Brown Shoe (Take 2) / The Beatles   1969
05 スターノイズ / リーガルリリー  from the Telephone   2018
06 Bee’s Knees / Ruslan Shirota   2019
07 Please, Please, Please, Let Me Get What I Want / The Smith   1984
08 Easy Come Easy Go / Petros Klampanis   2019
09 Please, Please, Please, Let Me Get What I Want / The Dream Academy  1985
10 ダイスを転がせ /小沢健二   1997
11 ご機嫌目盛 /吾妻光良 & The Swinging Boppers  from SCHEDULED BY THE BUDGET   2019
12 青春はいちどだけ [Colour Field] / Flipper’s Guitar   1990
13 Urlicht / Niels Van Heertum   2019
14 イマージェン /平田王子, 大口純一郎, 宮野裕司   2018
15 Starting Over (live YouTube) / Mr. Children
16 Heartfelt / Slappy & Kogane   2018
17 初恋 / 宇多田ヒカル   2018
18 Don’t Think Twice, It’s All Right / Bob Dylan   1963

気分次第で編集CDR、

ルスラン・シロタの06はメセニーのウィチタ1曲目「Ozark」の夢ふたたび気分、ライル・メイズにみた夢、

08のキラキラピアノリレープレイはほら、ライナー・ブリューニングハウスにみた夢、
09は07のカバー、だんだんオリジナルのほうが良くなって聴こえるゴメン、
11がパーフリ恋とマシンガンにやや似から12がきれいにハマる展開、

14の1分47秒のイントロに続いての平田王子の声の入り!、は、神さまの瞬間です、宮野裕司のサックスの鳴りも、

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浜崎あゆみ / HEAVEN
https://www.youtube.com/watch?v=UZduO8YltB0

ドンキホーテ新宿店で万引き対応する店内でしつこく流れていた浜崎あゆみ、CDには入っていない電車が入線する轟音が入っているMVが解禁されていた、

福知山線脱線事故で亡くなった107名の中にファンがいて浜崎を聴いていた、ということから制作陣が着想したというはなしだが、

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<track 484>  ワレワレハデンパグミインクダ /でんぱ組.inc   2019

でんぱ組、ももクロ『5thDimension』2013(「J-POP平成の名盤30」入選)ばりの、

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<track 485> Atlantic Extraction / Nick Dunston  (Out of Your Head Records)  2019

現代ジャズ物件、さっき届いたばかりの、ジャケからしてヤバイんだが、ちゃんと構築されている演奏なのに、不穏なのだ、狙いすまされた不協和音の配置は名人芸、ニック・ダンストン Nick Dunston ベース奏者、どんな演奏していた? YouTube チェックするもたいしたことない、コンポジションで、バンドでいきなり化けた!、何があったんだ、

https://outofyourheadrecords.bandcamp.com/album/atlantic-extraction

やばいますますハマってきた、ほかのメンバーも知らない、彼らは確信犯ではない、どこかにちからがはみ出て、なにかが抜けて、魔法がかかったようなレコーディングになったのか、世界限定50枚限定、なんでー?、悲鳴、

Nick Dunston – double bass, vocals (track 15), compositions

Louna Dekker-Vargas – flute, alto flute, piccolo
Ledah Finck – violin, viola
Tal Yahalom – guitar
Stephen Boegehold – drum set

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多田雅範

Masanori Tada / 多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe 1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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