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和歌とジャズ 山田詩乃武No. 339

S-009. 藤原俊成卿女と「Blame It on My Youth」

text: Shinobu Yamada 山田詩乃武

面影のかすめる月ぞやどりける

                                   春やむかしの袖の涙に

― あの人の面影が霞んだ夜空の月にほのかに重なって見える。春にかつての恋人を偲んでいたら、その月の光が私の袖の涙に映っていた。—

この「春恋の心を」詠んだのは、鎌倉時代前期の歌人、藤原俊成卿女(ふじわらのとしなりきょうのむすめ)。歌聖・藤原定家は実母の弟だが、その歌才ゆえ祖父の養女となり、その名を冠した「俊成卿女」の名誉ある称を得た。後鳥羽院に召され御所に出仕し、後鳥羽歌壇、土御門歌壇、順徳歌壇を支えるひとりとして活躍した。晩年まで創作に衰えを見せず、『新古今和歌集』をはじめとした勅撰集に数多く入集されており、新古今を代表する女流歌人として新三十六歌仙の一人でもある。その作風は幽玄にして耽美、唯美、妖艶なものが多く、象徴的な美の姿をことばで描き出している。

「Blame It on My Youth」邦題を付けるとすれば「若気の至り」になろうか。1934年に書かれたスタンダード・ナンバー。キース・ジャレットの透き通ったピアノ・ソロ・ヴァージョンはお気に入りの1曲だが、この曲は歌詞の内容を思い浮かべながら、じっくり聴くことをお薦めしたい。

― 大人の恋を知らずに、自らを責める傷心の乙女心 —

Blame it on my youth

ただ、私の若さがいけなかったのと、繰り返すフレーズが切なく響く。

If I cried a little bit
When first I learned the truth
Don’t blame it on my heart
Blame it on my youth

本当のことを知って
少し泣いたけれど
あなたを好きになった
私の心は責めないわ
ただ、私の若さがいけなかったの

ナット・キング・コール、 クリス・コナー、チェット・ベイカーなどが歌い上げているのは有名だが、ここではカナダ出身のエミリー=クレア・バーロウ (Emilie-Claire Barlow) の2014年、東京のコットン・クラブでのライブ・ヴァージョンを。『Live in Japan』収録全11曲中、ラストのナンバーが「Blame It on My Youth」。

エミリー・クレアは優しく情感たっぷり、しっぽりと歌い上げる。切なく物憂いな雰囲気を醸し、観客は皆、食事や飲み物には手を付けず、静かにじっくりと聴き入っている様子が映像がなくても伝わってくる。

俊成卿女もエミリー・クレアも時代、人種、方法は違っても、切々とした女心を表現する妙手であることは疑う余地はない。

山田詩乃武

山田詩乃武 やまだしのぶ 歌人・文筆家・佐渡郷土史研究家。 新潟県佐渡島真野新町生れ。新潟県立佐渡高校、青山学院大学経営学部第Ⅰ部 出身。農林水産省補助事業 6 次産業化中央サポートセンター プランナー他、公私の委員、理事、顧問を歴任。著書に『順徳天皇 ― 御製で辿る、その凛烈たる生涯 ―』(PHP 2021)。2025年、小説『憂き世をば ―順徳天皇物語―』上梓予定。趣味:ジャズ&オーディオ。

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