工藤一幸『The Paul Bley Quartet』
『ポール・ブレイ・カルテット』
1988年に会社を辞め、税理士試験の勉強を始めました。音楽を聴く時間がほとんどない中、受験浪人の最初の頃によく聴いていたのが、ECMの『ザ・ポール・ブレイ・カルテット』でした。静謐な中に鋭く研ぎ澄まされた感性のぶつかり合いが脳に染み込んでいくといった感じのフリーなサウンドで、とっつきにくいこのアルバムをどうして繰り返し聴いていたのかよく分かりませんが、その時の先行き不安な気持ちが音楽の嗜好に投影されていたのかもしれません。ECMにハマるきっかけでした。
同じメンバーでの第2作目。やっぱりこのメンバーならではの音。5曲中、ポール・ブレイ作は1、5曲目。前作に続き、静謐な、しかもものすごい緊張感の中での緊密なインタープレイが展開されます。時にハード。1曲目は何と20分もの曲で、確かにタイトル通り〈インタープレイ〉となっていますが、フリー的に、しかも均整のとれたサウンドでバランス良くドラマチックに展開していくさまは見事。立ち止まりそうになることもありながらその冷たい構成美。ジョン・サーマン作の、リズムのある程度ある中を時にメロディが舞い飛んでいる2曲目、ビル・フリゼール作の、ハードなギターと静謐さをブレンドして各楽器に展開していく3曲目、ポール・モチアン作の各パートが内面をえぐっていくような4曲目、美しいソロピアノで語りかける5曲目。
ECM 1365
The Paul Bley Quartet:
Paul Bley (Piano)
John Surman (Soprano Saxophone, Bass Clarinet)
Bill Frisell (Guitar)
Paul Motian (Drums)
1 Interplay (Paul Bley) 20:15
2 Heat (John Surman) 08:11
3 After Dark (Bill Frisell) 11:52
4 One In Four (Paul Motian) 09:26
5 Triste (Paul Bley) 03:00
Recorded November 1987, Rainbow Studio, Oslo
Produced by Manfred Eicher