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特集『ECM: 私の1枚』

渡辺英人『Keith Jarrett / Radiance』
『キース・ジャレット/レイディエンス』

昨年9月に母が具合を悪くしてから、神戸の自宅と母のいる熱海をクルマで往復している。乗り出す時間は高速料金が安くて空いている夜明け前か日暮れ後が専らで、Spotifyで作ったプレイリストを聴きながら走っているが、何回目かの母に会いに行く道すがら、夜明けのマジック・アワーにかかったのが「Radiance」のPart 13だった。

忘れていないのに忘れていた大切な想い出をふと思い出させてくれるタイムマシーンのような曲。ECMならではの独特な揺らぎのあるピアノ音で聴くキースのメロディーは、天に昇っていくようでありながら、同時に優しく「落ち着きなさい」と説いてくれているようでもあって、母との様々な時間の記憶を呼び起こさせてくれた。

「Radiance」のCDは2006年9月にパリのモンパルナスのfnacで買った。当時はApple Expoという展示会が9月にパリで開催されていて、僕はApple StoreでのECLIPSEスピーカーの取り扱いを目指し、デモでかけるためにこのCDを買いに行ったのだ。

会場でかけたらば狙った通りの好評で、音を気に入ったお客様が「C’est qualques grammes de finesse dans un monde du beauties(美の世界の中にある数グラムのフィネスね)」とこの曲の印象をメモで下さった。今思うと彼女も僕のと似たような何かを感じてそんなメモを下さったのかも知れないな。


ECM 1960/61

Keith Jarrett (piano)

Disc one
(Osaka: October 27)
“Radiance, Part 1” – 12:18
“Radiance, Part 2” – 8:53
“Radiance, Part 3” – 5:58
“Radiance, Part 4” – 1:33
“Radiance, Part 5” – 10:58
“Radiance, Part 6” – 8:00
“Radiance, Part 7” – 9:51
“Radiance, Part 8” – 5:25
“Radiance, Part 9” – 6:11

Disc two
(Osaka: October 27)
“Radiance, Part 10” – 13:55
“Radiance, Part 11” – 1:40
“Radiance, Part 12” – 7:06
“Radiance, Part 13” – 5:58
(Tokyo: October 30)
“Radiance, Part 14” – 14:04
“Radiance, Part 15” – 10:03
“Radiance, Part 16” – 3:23
“Radiance, Part 17” – 14:12

Recorded October 2002



渡辺英人 わたなべ ひでと
1994年から英国ロンドンにて音楽中心のエンターテインメント制作コーディネーター/ディレクター/ライター。2001年からデンソーテンのECLIPSEスピーカーの日本国外活動を担当し、2021年に神戸に拠点を移し現在に至る。学生時代は吹奏楽部でバスクラ、バスーン、指揮をして今は縦笛吹き。

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