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特集『ECM: 私の1枚』

André Mehmari『Charlie Haden, Jan Garbarek & Egberto Gismonti / Folk Songs 』
『チャーリー・ヘイデン, ヤン・ガルバレク&エグベルト・ジスモンチ/フォーク・ソング』

Certainly, one of the most magical music. Heard from any commercial recording comes from the trio formed by Gismonti Garbarek Haden, Brilliantly recorded on two ECM masterpieces: Mágico and Folk Songs.

Focusing on Folk Songs, one cannot be moved by such powerful simplicity married to a deep sense of belonging, of chamber music to the highest level.

A few notes can explode to an entire universe of vast emotions. Everything seems to be reduced to the most essential motion, gesture to express the absolute root of all “tunes”. Nothing is flourished or overplayed! Haden stays with earthly notes ( like an old wise man during an ancient ritual) Gismonti flows is like an endless river (providing harmonic richness and soil) and Garbarek flies so high with his airy voice, a rare bird that resembles so much of the music of someplace we can only imagine, like a magical Duduk or Turkish clarinet …

One cannot forget how beautifully everything is captured by engineer genius Jan Erik Kongshaug (with whom I had the honor to work with in two occasions) — to blend all sounds in an atmospheric and inviting soundscape.

A recording I keep coming back to and each time I have less scientific explanations for the beauty I hear and feel. Each time I remain speechless and it renews my confidence on everything sacred I believe and practice in art.

I can only be thankful to be a human being able to receive that message so special, so unique and so universal at the same time. For a moment, life is beautiful and full of poetry!

間違いなく最高にマジカルな音楽のひとつ。ジスモンチ、ガルバレク、ヘイデンのトリオの演奏で、ECM発売の2枚の傑作『Mágico』と『Folk Songs』で聴くことができる。

たとえば、今回取り上げる『Folk Songs』では、力強い簡潔さと、三者の強い緊密性、室内楽としての佇まいに対する深い意識が高レヴェルでマリアージュしている事実に感動せずにはおられないはずだ。

また、少ない音数で広大な感情の宇宙的広がりを表現することに成功しており、あらゆる営為が最も本質的な動作、行為に切り詰められて「音楽」の絶対的な根源が表現されている。つまり、過剰な表現や演出が一切ないということだ。たとえば、ヘイデンは常に地を這うような音を弾き出し(まるで古代の儀式に参加している老賢人のように)、ジスモンチの音の流れは絶えざる河の流れのようで(豊かなハーモニーと土壌を生み出しつつ)、ガルバレクは空気のような声を出しながら高い空を、まるで魔法のようなデュデュクかトルコのクラリネットのように想像上のとこかの音楽にそっくりな珍しい小鳥のように飛んでいる。

さらには、天才エンジニア、ヤン・エリック・コングスハウク(幸いにも二度仕事の場を共有したことがある)が、すべての音を美しく捉え、雰囲気のある魅力的なサウンドスケープに融合させていることも忘れてはならない。

この録音は何度も聴き返しているが、その都度、私が聴き、感じる美しさを科学的に説明することができない。毎回、私は言葉を失い、私が芸術において信じ、実践している神聖なものすべてに対する信念を新たにしている。

その特別で、ユニークで、普遍的なメッセージを同時に受け取ることができる人間であることに、ただただ感謝するばかりだ。一瞬といえど、人生は美しく、詩情に満ちている!


ECM1170

Charlie Haden (Double-Bass)
Jan Garbarek (Tenor Saxophone, Soprano Saxophone)
Egberto Gismonti (8-String Guitar, Super 8-String Guitar, Piano)

1 Folk Song (Traditional) 08:10
2 Bôdas De Prata (Geraldo Eduardo Carneiro, Egberto Gismonti) 04:44
3 Cego Aderaldo (Egberto Gismonti, Traditional) 07:54
4 Veien (Jan Garbarek) 07:49
5 Equilibrista (Egberto Gismonti) 08:35
6For Turiya (Charlie Haden) 07:41

Recorded November 1979, Talent Studios, Oslo
Engineer: Jan Erik Kongshaug
Produced by Manfred Eicher


André Mehmari アンドレ・メマーリ
ピアニスト、作編曲家、プロデューサー、マルチ・インストゥルメンタリスト。1977年、ブラジル・リオデジャネイロ近郊のニテロイ生まれ。5歳から母と音楽を学び始め、サンパウロ州リベイロン・プレット音楽院のオルガン課程を修了。10歳からジャズ即興演奏の独学と作曲を始め、15歳でオルガンを教えながら、キーボード初心者のための20曲からなる曲集を作曲する。1995年からサンパウロ大学でクラシック・ピアノを学び、その大学内の音楽コンクールMPB部門で優勝し、1997年にクラシック部門でも優勝。
1998年ブラジルで最も有名なVISA MPBコンペティションで優勝し、その賞品としてファースト・アルバム録音の機会を得る。1999年自宅のスタジオで、全26の楽器を演奏、多重録音によるソロアルバム『Canto』を制作し2002年にリリース。2005年7月ブラジル人歌手のジョイス・モレーノと共に初来日。モーションブルー横浜で2日間の公演を行う。2008年自己のレーベルEstúdio monteverdiから『…de arbores e valsas』リリース。曲毎にゲストを迎えつつ、自身が多数の楽器を演奏し多重録音した作品が話題となる。自宅のスタジオで録音、ミックス、マスタリングを全て自分自身で行い、自分のレーベルからリリースした。
2011年4月ピアノソロ・ツアーで、10月ガブリエル・ミラバッシとのデュオツアーで来日。2011年11月多数の豪華ゲストを迎え全30曲の大作2枚組『Canteiro』日本盤を発売。アミルトン・ヂ・オランダとの共作では、2007年に『Continua Amizade』、2011年に『Gismontipascoal』をリリースしている。 2013年11月「ピアノ・エラ」を含むソロツアーで来日、その東京公演は『Tokyo Solo』(NRT)としてリリースされた。2016年のリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式の編曲を担当した。2019年の来日ではピアノソロ公演に加え、ビッグバンドなどとも共演した。2020年末にも来日が予定されていたが、COVID-19のため延期となっている。
アンドレは演奏者としての国際的なキャリアに加えて、ブラジル国内で最も人気の高い作曲者、編曲者の1人。さまざまな楽器を演奏するマルチミュージシャンであり、ミキシングやマスタリングまでも行い、森の中にある「スタジオ・モンテヴェルディ Estúdio monteverdi」で、ジャンルやスタイルの境界なく常に音楽を創り出している。
アンドレ・メマーリ公式ウェブサイト(ポルトガル語/英語): https://www.andremehmari.com.br/
(日本語版Facebookとウェブサイトをもとに加筆作成)

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