納 浩一『Keith Jarrett / Standards, Vol.1』『キース・ジャレット/スタンダーズ Vol.1』
ECMにはたくさんの名盤があり、その中から1枚を選ぶというのはなかなか難しいのですが、敢えてということであればこの一枚です。
このアルバムはちょうど僕がアコースティックベースを始め、ジャズの様々なことが分かりだした頃にリリースされたアルバム。特にスタンダードを本気で勉強し、その深さや面白さが分かって来だした時だったので、このアルバムでの彼らの演奏には本当に大きな刺激をもらったことを覚えています。
それまでにもすでに様々なジャズのアルバムを聴いていましたが、スタンダードをこんな独特のアプローチで仕上げることができるのかというような事を、特に強く感じた記憶があります。
キース・ジャレットやジャック・ディジョネットの演奏もさることながら、特にゲイリー・ピーコックの独特のサウンドやソロ・ラインのアプローチは、大いに参考になりました。
またECM特有の透明感のあるサウンドも、それがスタンダードで表現されると、それまで聞いてきたアメリカのレーベル発のジャズのアルバムの音とは一線を画する独特のサウンドで、そこも僕には大いなる発見でした。
そういった視点でもう一度、それまで聴いていたECMのアルバムを聞き直したり、新たに発表されたアルバムを聴いたときに、ECMが如何に独自の世界感を持ったコンセプトでアーティストを選び、彼らの作品を創り出しているのかということも、その後の僕のミュージシャンとしての在り方に大きな影響を与えたと思っています。
ECM 1255
Keith Jarrett (Piano)
Gary Peacock (Double-Bass)
Jack DeJohnette (Drums)
Recorded January 1983, Power Station, New York
Engineer: Tony May
Produced by Manfred Eicher
納 浩一 おさむこういち
ベーシスト。京都大学卒業後バークリー音楽大学に留学。1987年に同大学作曲編曲科を卒業。1996年~2008年にわたって、渡辺貞夫グループのレギュラー・ベーシスト務めた。1997年7月、初リーダーアルバム『三色の虹』を、2007年に2作目のリーダーアルバム『琴線/ The Chord』をリリース。2022年7月、総勢36名のミュージシャンを集めて作った2作目のリーダーアルバム『CODA』を発表。プロデュース、作曲、作詞、編曲全てを手がける。またジャズのスタンダード集「ジャズスタンダード・バイブル1・2」「ジャズスタンダード・バイブル・フォー・ボーカル」「ジャズ・スタンダード・セオリー」(リットーミュージック)を出版。
オフィシャルホームページ osamukoichi.net