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このディスク2017(海外編)No. 237

#06 『児玉 桃 / 点と線 〜ドビュッシー&細川俊夫:練習曲集』
Momo Kodama / Point and Line – The Piano Études of Claude Debussy and Toshio Hosokawa

Text by Hideo Kanno 神野秀雄

Momo Kodama 児玉 桃, piano
Cloud Debussy (1862-1918)
Études pour piano L136 ピアノのための練習曲 L136 (1915)
Toshio Hosokawa 細川俊夫 (1955-)
Études I-VI for piano エチュード I-VI ピアノのための (2011-13)

Recorded January 2016 at Hidtorischer Reitstadel, Neumarkt
Tonmeister: Stephan Schellmann
Produced by Manfred Eicher
ECM New Series 2509 (2017年1月27日) / ユニバーサル クラシックス UCCE-2090

詳細はこちらの記事をご覧いただきたい。

「児玉 桃が紡ぎ出す18の音の小宇宙へ。究極の音の領域に踏み込むECM第2作」
https://jazztokyo.org/reviews/cd-dvd-review/post-13040/

2017年11月、マンフレート・アイヒャーが、第60回グラミー賞(2017)の「プロデューサー・オブ・ジ・イヤー、クラシック」にノミネートされるにあたり、『点と線』が他の4枚とともに取り上げられた。単に優れたプロデューサーと演奏家による優れた録音という域を超えて、マンフレートと児玉桃の緻密な共同作業で、ドビュッシーと細川俊夫の練習曲という新鮮な素材から分解し再構築する試みを行い、研ぎ澄まされた児玉のピアノの響きを巧みに記録し、これまで想像できなかった音の宇宙を創り出したことはまさにその評価に値する。『点と線』のコンセプト、および前作『鐘の谷 La vallée des cloches』(ECM NS 2343, 2012)をコアにしたコンサートは、ヨーロッパではたびたび行われてきたのに対し、日本では『点と線』リリース後にその種の公演が全く行われていないのが残念でならない。グラミー賞ノミネートをきっかけとして、ぜひ実現されることを期待したい。今後、児玉桃、細川俊夫それぞれの生み出す音楽と響き、新しい世界観を心から楽しみにしている。

児玉桃のコンサートの一部が、「France Musique」のストリーミングで公開されているのでぜひお聴きいただきたい。
Récital Momo Kodama au Festival Musica 2017
(2017.10.4, Salle de la Bourse, Strasbourg, France)
https://www.francemusique.fr/emissions/le-concert-du-soir/recital-momo-kodama-37641

なお、ECMと日本の半世紀に及ぶつながりを考える中で、亡くなった菊地雅章、JAPOレーベルでの加古隆を別格として、現在、マンフレートに認められECMから自己名義で(リーダーとして)アルバムをリリースできている日本人が、クラシックサイドからの児玉桃と細川俊夫しかいない状態が続いていたが、ミュンヘン在住ジャズドラマーの福盛進也が『Shinya Fukumori Trio/For 2 Akis』(ECM2574)を2018年2月リリースすることにより、新しい時代に入ることを嬉しいニュースとして付記しておきたい。1月7日に伊藤ゴロー、佐藤浩一との共演、4月にトリオでの日本ツアーを予定している。

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

#06 『児玉 桃 / 点と線 〜ドビュッシー&細川俊夫:練習曲集』
Momo Kodama / Point and Line – The Piano Études of Claude Debussy and Toshio Hosokawa
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