#01 早川義夫&坂本弘道
text by Makoto Ando 安藤誠
2017年12月15日 杉並 sonorium
早川義夫(pf,vo)
坂本弘道(cello,saw)
会場のソノリウムは、井の頭線永福町にあるキャパ100席ほどの室内楽専用ホール。響きに定評のあるこの場所で、ようやくこの2人のデュオが観られるとあって、開始前から気分は高揚していたのだが、事前の想定値をはるかに突き抜ける圧巻のライブだった。もはや多言を要しない早川義夫の歌とピアノ。これほどの情念を歌に込められるという、その事実だけで圧倒される。そして、時に歌に寄り添い、時に真っ向から対峙する坂本弘道のチェロ。「父さんへの手紙」で、ミュージックソウからチェロにチェンジする鳥肌ものの瞬間に立ち会えたことが嬉しい。終演後に知ったのだが、この日はちょうど早川義夫の70回目のバースデー。演奏を聞き終えて出口へ向かう客を見送るその姿は、威圧的なカリスマ性など微塵も感じさせない、それこそ犬でも連れてその辺を散歩していそうなただのオジサンだ。この人の肉体のどこにあれだけのパワーが潜んでいるのか、柔和なその笑顔をしばし間近で眺めながらそれだけをぼんやりと考え、辛うじて感謝の一言だけを伝えて帰路についた。