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このディスク2021(海外編)My Pick 2021No. 285

#10 『Champian Fulton/ I’ll See In My Dreams』『チャンピアン・フルトン・夢で会えたら』

text by Yoko Takemura 竹村洋子

Venus Records 4571292512930

Champian Fulton – vocals and piano(チャンピアン・フルトン)
Hans Backenroth – bass(ハンス・バッケンロス)
Kristian Leth – drums(クリスチャン・レス)

1) All Of You (オール・オブ・ユー)
2) Baubles, Bangles & Beads (ビーズと腕輪)
3) Blues For J.McShann (ブルース・フォー・ジェイ・マクシャン)
4) Body And Soul (ボディ・アンド・ソウル)
5) Every Now And Then (エヴリ・ナウ・アンド・ゼン)
6) I’ve Got A Crush On You (あなたに首ったけ)
7) Happy Camper (ハッピー・キャンパー)
8) I Don’t Want To Set The World On Fire (アイ・ドント・ウォント・トゥ・セット・ザ・ワールド・オン・ファイア )
9) I’ll See You In My Dream (夢であえたら)
10) I’ve Got My Love To Keep Me Warm (恋に寒さを忘れ)
11) Opus De Funk (オパス・デ・ファンク)
12) Pennies From Heaven (ペニーズ・フロム・ヘブン)

Produced by Tetsuo Hara
Recorded on November 23rd and 24th, 2020 at FinlandStudio, Aarhus Denmark.
Recording Engineers: Jacob Worm and Rune Hauge
Mixed and Mastered by Tetsuo Hara / Venus Her Magnum Sound Direct Mix Stereo

ニューヨークのピアニスト/ヴァーカリストの実力派で、フランク・ウェス、スコット・ハミルトン、バスター・ウィリアムス、ルイ・ヘイズらと共演実績を持つ チャンピアン・フルトンがスカンジナビアン・リズム・セクションをバックに歌う、ロマンチックなジャズ・ボーカル・アルバム。

フルトンはトランペット奏者で教育者でもあった父親のステファン・フルトンとクラーク・テリーからジャズを学び、10歳の時にクラーク・テリーの75歳バースディ・パーティーでデビュー。以後、ピアノとヴォーカルのスキルを磨き、彼女独特のパフォーマンスは聴衆を魅了している。
33歳の若さにして、既にリード・アルバムを15枚ほどリリースしており、アルバム制作にも意欲的だ。
このところバードランドにも定期的に出演。11月2日にはルー・ドナルドソンの95歳のバースディ・パーティに主演したり、秋にはヨーロッパツアーも行なったり、精力的に活動している。
2020年にはステファン・フルトンとのデュオ・アルバム『ライブ・フロム・ロックダウン:Live From Lockdown』の他、生誕100年のチャーリー・パーカーへのオマージュとして『バード・ソング:Birdsong』をリリース。チャーリー・パーカーの曲を彼女なりに掘り下げ、自分で歌詞をつけて歌ったりし、なかなか面白いことをやっていたが、新作『夢で会えたら: I’ll See You In My Dreams』はスタンダードを中心としたフルトンお得意のラインアップ。
声に張りがあり、歯切れがよく、とにかく元気が良い。甘い声での歌い方に、ちょっとダイナ・ワシントンを思わせるようなクセがあるが、そこがまた魅力。

スウェーデン出身のベース・プレイヤー、ハンス・バッケンロス、デンマーク出身のドラム・プレイヤー、クリスチャン・レスとフルトンのピアノ・トリオだけでの演奏<ハッピー・キャンパー>、アルバムタイトル曲の<夢であえたら>、<オパス・デ・ファンク>も歯切れ良く、潔い演奏で気持ちが良い。
また、ジェイ・マクシャンをトリビュートしたフルトンのオリジナル曲のブルース、<ブルース・フォー・ジェイ・マクシャン>ではマクシャンと同郷のオクラホマ出身のフルトンが、マクシャンへ渋いアプローチをしている。「オクラホマのルーツであるジェイ・マクシャンのジャズピアノの遺産を継続したいと心から願っている。」というのが本人の弁。

コロナ禍において、メインストリーム・ジャズの伝統を守り抜いているフルトンのスイング感、躍動感、そして何よりも明るいパフォーマンスに元気づけられた。

竹村洋子

竹村 洋子 Yoko Takemura 桑沢デザイン専修学校卒業後、ファッション・マーケティングの仕事に携わる。1996年より、NY、シカゴ、デトロイト、カンザス・シティを中心にアメリカのローカル・ジャズミュージシャン達と交流を深め、現在に至る。主として ミュージシャン間のコーディネーション、プロモーションを行う。Kansas City Jazz Ambassador 会員。KAWADE夢ムック『チャーリー・パーカー~モダン・ジャズの創造主』(2014)に寄稿。Kansas City Jazz Ambassador 誌『JAM』に2016年から不定期に寄稿。

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