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#29 Sound-track from Bad Timing『ジェラシー』愛のテーマⅠ/愛のテーマⅡ ピアノ:キース・ジャレット

text: Kenny Inaoka 稲岡邦彌

ニコラス・ローグ監督の映画『ジェラシー』(Bad Timing/1979) に挿入されたキース・ジャレットの『ケルン・コンサート』(ECM)からの抜粋。日本での公開に合わせて1981年にシングル・カットされた。但し、レーベルはECMではなくTRIO。
この映画(主演のひとりはアート・ガーファンクル)には、トム・ウェイツ、パッヘルベル、ザ・フー、ビリー・ホリデイなども使用されたが、解説の川本三郎はキースの音楽性について、“しかもそのスタイルは熱狂的というより内省的であり、聴く者を静かに純粋に音だけで作られた迷宮に誘い込む冷ややかな抒情性に満ちている。だから自意識と自意識のぶつかり合い、互いに愛の迷宮にまぎれ込んでいく男と女を描いたこのニコラス・ローグの神経質なラブストーリーに、キースのピアノ・ソロ「ケルン・コンサート」はもっともふさわしいバックグラウンド・ジャズといえるのだ”と記している。
キースの「ケルン・コンサート」は他の映画でもBGMに使用されているが、日本のTV-CMにも私の知る限り2本に起用された。1本は、他ならぬトリオのステレオ。ピアノを弾くキースの映像とステレオ装置に被って流された。もう1本はホンダの高級車レジェンドのデビューCM。制作会社が「ケルン・コンサート」をアテたデモの試写を見たスポンサーからどうしてもと懇願され、私がECMに泣きつくことになった次第。
番外編としては、ディーラーから「全編にケルン・コンサートを流した裏ビデオがある」と聞かされた営業から「何とかならないか」と泣きつかれたが、こればかりは手の打ちようがなかった。

発売元:TRIO RECORDS/トリオ株式会社
STEREO 45RPM AW709
1981年
¥700
解説:川本三郎

初出:JazzTokyo #200 (2014.7.27)

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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