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Gallery~No. 201

#21 アストラッド・ジルベルト+スタン・ゲッツ楽団~
MGM映画『クレイジー・ジャンボリー』サウンドトラック主題歌 1965

text by Kenny Inaoka  稲岡邦彌

MGM映画『クレイジー・ジャンボリー』サウンドトラック
<イパネマの娘>(主題歌)2’49
<スイート・レイン>(主題曲)3’25
アストラッド・ジルベルト(歌)
スタン・ゲッツ楽団
DM-1031 ¥370 1965年
日本グラモフォン株式会社

たしかスイング・ジャーナル誌だったと思うが、スタン・ゲッツとアストラッド・ジルベルトがボサ・ノヴァを演奏する映画(原題:Get Yourself A College Girl、1964)が公開される、という情報を掲載しており、吉祥寺の南口駅前にあったオデヲン座という映画館に駆け付けた次第。1965年の夏のことで、関心の的はゲッツとボサ・ノヴァである。アストラッドは未知の歌手であった。映画は一種の音楽青春モノで、彼らの他に、アニマルズやデイヴ・クラーク・ファイヴ、ジミー・スミス・トリオも演奏していた、とジャケット裏の解説に書かれているが、まったく記憶がない。ゲッツは純白のスーツに身を包み、アストラッドはダーク系のワンピースを着ていたと思う。とにかく、初めて耳にするアストラッドのハスキーではかなげな歌声とゲッツのサブトーンを伴うソフィスティケートされたサックスにすっかり痺れ、駅北口にほど近いレコード店に飛び込み、映画の主題歌として発売されていたドーナッツ盤を買ったのであった。

ボサ・ノヴァ(ポルトガル語で“ニュー・ウェイヴ”)は2008年に“生誕50周年”を迎えているが、ゲッツがアストラッドを迎えて1964年にリリースしたLP『ゲッツ/ジルベルト』(Verve)の大ヒットで一挙にジャズ界でも市民権を得ることになった。ゲッツは2年前にチャーリー・バード(g)との共同名義で『ジャズ・サンバ』(Verve)を制作しており、このヒットも下地にはなっていたのだが、ボサ・ノヴァの世界的な流行は何といってもアストラッド・ジルベルトの功績が大きいといわねばならないだろう(『ゲッツ/ジルベルト』はグラミー賞を獲得)。(稲岡邦弥)

追)原稿を書き上げて、念のためにYouTubeをあたってみたところ、何とこの映画の演奏シーンがアップロードされているではないか!(http://www.youtube.com/watch?v=a8wcZUUXJFs)。僕の記憶はまったくいい加減で、ゲッツは白のカーデガン、アストラッドも白のドレスであった。新しい発見は、ゲッツのバンドでゲイリー・バートンが4本マレットでヴァイブを演奏していたこと。ゲイリーは二十歳(はたち)そこそこのはずである。

*初出 JazzTokyo #165   (2011.8.28)

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

#21 アストラッド・ジルベルト+スタン・ゲッツ楽団~
MGM映画『クレイジー・ジャンボリー』サウンドトラック主題歌 1965
」への1件のフィードバック

  • アストラッド・ジルベルトの元のパートナーであったジョアン・ジルベルトが、2019.7.6に亡くなった。
    <イパネマの娘>の世界的なヒットは、『ゲッツ/ジルベルト』(Verve 1963)による。スタン・ゲッツ(ts)とアントニオ・カルロス・ジョビン(p)と、ジョン・ジルベルト(g,ポルトガル語の vocal)、アストラッド・ジルベルト(英語のvocal)が共演した。

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