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InterviewsNo. 308

Interview #274 RINA

Interview by Kazune Hayata  早田和音
写真撮影:©︎能美潤一郎
取材協力:世界文化社
2023年11月14日セブンアネックスにて

2018年エリス・マルサリス国際ピアノ・コンペティションのファイナリストに進出し、準優勝と最優秀作曲賞を受賞。以降、数々の国際的ジャズ・フェスティバルやコンサートへの出演を重ねた後の2020年に、小曽根真プロデュースによる1stアルバム『RINA』でメジャーデビュー。現在、ソロ・ピアノや自身のトリオ、ビッグバンドなど幅広く活躍するピアニスト RINA。彼女が、12月19日(火)、23日(土)に横浜山手西洋館・ベーリックホールで開催されるイベント“Jazz & Flower Art LIVE 音の花、花の音”に出演することが発表された。大規模な空間演出を手掛けるフラワーアーティストとして名高い曽我部翔とのコラボレーションが展開される同イベント出演への抱負を聞いた。

――RINAさんは、御自身のソロ・ピアノやトリオの演奏活動だけでなく、さまざまなアーティストとの共演やフェスティバル、イベント出演など多彩な活動をなさっていますが、今回はフラワーアーティストである曽我部翔さんとのコラボレーション。他ジャンル・アートとの共演ですが、初めてこのお話を聞いた時にどう感じられましたか?

お話を聞いた瞬間に楽しくなって、早くやりたいと思いました。“Jazz & Flower Art LIVE 音の花、花の音”というイベントは、“シカク”という会社でコピーライター/クリエイティブ・ディレクターをされていて、私のコンサートにもたびたび来ていただいている原晋(はら すすむ)さんという方からいただいたお話です。原さんは私のコンサートにいらっしゃるようになる前から曽我部さんとのお付き合いをなさっていたそうです。曽我部さんは、ブルーノート東京やコットンクラブの装飾やX JapanのYOSHIKIさんのコンサート会場装飾、パリでの個展も手掛けられているフラワー・アーティストなのですが、そうした装飾のお仕事の他に、即興性の高いライヴ・パフォーマンスもされていて、それと私の即興演奏を結び付けたら面白いものができるのではないかと思われたそうです。

――どのようなプログラムが用意されているのですか?

いろいろなメニューが用意されています。私のソロ演奏がメインになるコーナーもあれば、曽我部さんの“ソロ花生けバトル”が繰り広げられるコーナーもあります。さらにふたりのトーク・タイムや、“即興×即興”というプログラムもあって、私と曽我部さんが微妙に絡み合いながら進行していくので、とても面白くなりそうだなと思っています。

――ヴァラエティに富んだプログラムのようですね。最初にRINAさんのソロ演奏についてお話をお聞かせください。

大きなテーマとしてはクリスマスです。今回の会場となるベーリックホールでは毎年、ある国をテーマにしたクリスマス・イベントが開催されているのですが、今年のテーマがオーストリアのクリスマスだそうです。ですから、クリスマスの楽曲やオーストリア所縁のクラシック音楽家の作品をジャズ・アレンジした演奏をお届けする予定です。その他にも、モーリス・ラヴェルの「La Valse」にインスパイアされて書きあげた4部構成の組曲も用意しています。

――曽我部さんの“ソロ花生けバトル”というのはどのようなものなのですか?

もとになっているのは、曽我部さんが提唱されている“花生けバトル”というフラワーアートです。会場に用意されたたくさんのお花の中からお客さんにいくつか選び出しもらい、それをもとにして、参加するバトラーが5分間で作品を作り上げるものです。バトルという名前が付けられているように、もともとは対戦形式で、それぞれのバトラーが完成させた作品に対して、お客さんたちが投票を行ない勝者を決定するというもの。高校生大会もあって、私もYoutubeで観ましたけど、とても華やかで楽しいイベントです。それを今回は、曽我部さんがソロで披露してくださることになっています。

――“即興×即興”というのはどのようなプログラムなのですか?

これは、曽我部さんの“花生けバトル”が発展したものです。最初に曽我部さんがお客さんからいただいた花のリクエストをもとにして、私の演奏を聴きながら5分間で即興による作品を作り上げます。その次に私が、曽我部さんが完成させた作品を見て、そのイメージをもとに即興演奏を披露するというもの。ふたりそれぞれの即興が終わったら、お客さんに投票という形で参加していただくことになっています。そしてイベントの最後には、曽我部さんが作ったブーケをお土産としてお客様にお持ち帰りいただくようになっています。

――お話を伺っていると、これまでのRINAさんの活動とは異なった演奏環境のように思われるのですが、戸惑いなどはありませんでしたか?

それが無いんですよ(笑)。もちろん、初めてのことなので、緊張感のようなものはあるんですけれど、期待感の方がずっと強い感じがします。これまでとまったく違った環境を与えられたことによって、新たな作曲方法にトライしようという気持ちにもなっていますし、今までに作ったことのない曲を生み出そうとワクワクしながら準備を進めています。

――今までに作ったことのない曲とおっしゃいますと?

たぶんミュージシャンって、それぞれ自分の手癖というか、よく使うフレイズやコード進行を持っているように思うんです。私にも当然そのようなものがあります。でも今回は絶対にそういうものを出さないって決めていて。具体的に言えば、作曲している時に、いつもだとここからこういう方向に行くけれど、そのやり方をしないようにしようと考えながら取り組んでいます。奏法を少し変えたり、ヴォイシングのやり方も変化させたりして、とにかく新しいタイプの曲を作ろうと。すでに何曲かは書きあげているんですけれど、我ながら、“おっ、こんなのが出来たか(笑)!”って思う作品もあります。今まで私の音楽を聴いてくださっている方にも気づいてもらえると思います。

――こうしてお話を伺っていると、このイベントからまた新たなRINAさんが生み出されていくような気がしてきます。

そうなると嬉しいですね。今お話ししたことも、自分が好きだから、自分が楽しいからということがエネルギーになって進めることができているんですけど、でもただ自分の好きなようにやっているだけでは伝わらないと思うんです。大切なのは、自分の“好き”をお客さんの心にきちんと届けること。それができないと意味がないんじゃないかと。それから最近、演奏をする時に強く思うのは、“この会場では何ができるんだろう?、今日いらしたお客さんってどういう方なんだろう?、その方たちに向けて私ができることって何だろう?”ということ。今回の“Jazz & Flower Art LIVE 音の花、花の音”でも、来てくださった皆さんのエネルギーを感じ取りながら即興演奏に反映させたいと思っています。

    

▼詳細

Jazz & Flower Art LIVE   音の花、花の音
全3公演

①12月19日 (火) 13:30開場 / 14:00開演 / 15:30終演
②12月23日 (土)13:30開場 / 14:00開演 / 15:30終演
③12月23日 (土)16:30開場/ 17:00開演 / 18:30終演

会場: 横浜・山手西洋館ベーリックホール
料金: 大人¥7000   子供 (3歳〜中学生)¥2000
※お花のお土産付き
予約/ お問い合わせ: ベーリックホール 045-663-5685

早田和音

2000年から音楽ライターとしての執筆を開始。インタビュー、ライブリポート、ライナーノーツなどの執筆やラジオ出演、海外取材など、多方面で活動。米国ジャズ誌『ダウンビート』国際批評家投票メンバー。世界各国のメジャー・レーベルからインディペンデント・レーベルまで数多くのミュージシャンとの交流を重ね、海外メディアからの信頼も厚い。

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