#97 (アーカイヴ)Sinne Eeg | シーネ・エイ
Sinne Eeg | シーネ・エイ vocalist/composer
デンマーク、レムヴィの出身。シンガー・ソングライター的ジャズ・シンガーとしてユニークな存在。2003年、『Sinne Eeg』でCDデビュー。2007年の『Waiting for Dawn』が「デンマーク・ベスト・ジャズ・ヴォーカル・アルバム賞」、2009年の『Remembering You』が「デンマーク・ラジオ・ジャズ賞」をそれぞれ受賞、スカンジナヴィアを代表する女性ジャズ・ヴォーカリストとして一挙に認知度を高めた。2010年発売の5作目『Don’t be So Blue』が再びデンマークの「最優秀ジャズ・アルバム賞」に輝き、日本の輸入盤市場でも人気が沸騰、『ブルーな予感』としてビデオアーツ・ジャパン社から国内発売されることになった。
nterviewed by Kenny Inaoka (Jazz Tokyo)
2010年5月23日@Boundee渋谷
Interpreter:斉藤アルナ
Photo:相本 出
JT:今回は大変な折りによく日本までお出かけいただきました。
シーネ:大変なのは最初だけでしょ。今は大分全体像も見えてきましたし。
JT:でも、国から日本への渡航取りやめを勧告され出演をキャンセルするミュージシャンが多いのですよ。
シーネ:東京では人々は生活しているんだし、少しヒステリックになり過ぎているんじゃないかしら。
JT:でも勇敢とみられていますよ。今回は演奏の予定は。
シーネ:取材とコンヴェンションだけです。コンヴェンションでは何曲か歌いますけど。
JT:アルバムが発売されたらすぐ来日の声がかかるでしょう。
シーネ:レーベルの努力次第ね。
JT:楽しみにしています。
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JT:僕らのような古いジャズ・ファンは、デンマークのジャズというと、まず、ベーシストのニルス・ヘニング・エルステッド・ペデルセン、それからコペンハーゲンのジャズ・クラブ「カフェ・モンマルトル」が頭に浮かびますが、ペデルセン(1946~2005)はデンマークのジャズ・ミュージシャンにとってどのような存在ですか。
シーネ:まさに「アイコン」ですね。彼は、デンマークに渡来するアメリカの有力なジャズ・ミュージシャンの相手を何人も務めて本場のジャズを吸収、それを若いミュージシャンに還元してデンマークのジャズの基礎を作った人です。
JT:「カフェ・モンマルトル」もアメリカの有力ジャズ・ミュージシャンの歴史的な録音をたくさん残していますね。バド・パウエル、ドン・バイアス、セシル・テイラー、デクスター・ゴードン、ジョニー・グリフィン、ドン・チェリー等々。去年、一時的に再開されたと聞きましたが。
シーネ:「カフェ・モンマルトル」は1959年に開店、一度移転した後、1993年に閉店に至っています。去年、最初の場所で再開されたのですが、階上の住民から騒音に対する苦情が出て2ヶ月かけて防音処置が施され、その後は営業を継続しています。壁の様子など当時の雰囲気を残す努力が払われています。また、ここがヨーロッパのジャズの拠点のひとつになると嬉しいのですが。
JT:当時は、スタン・ゲッツやオスカー・ペティフォード、ケニー・ドリュー、デューク・ジョーダンらもホームグラウンドにしていたんですよね。録音装備が施されていて、いつでもライヴ録音できる環境にあったようですね。
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JT:ヨーロッパの歴代女性ジャズ・ヴォーカリストとしてまず名前が挙がるのは、スウェーデンのモニカ・ゼタールンド(1937~2005)、ノルウェーのカーリン・クローグ(1937~)、オランダのアン・バートン(1933~1989) ですが。
シーネ:モニカとカーリンはもちろん知っていますが、アン・バートンは知りません。
JT:ここ数年で本場アメリカでも急速に実力を認められた歌手にイタリアのロバータ・ガンバリーニがいます。あなたもロバータのようにアメリカにも進出したいと思いますか。
シーネ:もちろん、アメリカでも認められるようになるのが夢ですが、一歩一歩ですね。私の場合、20人のお客さんのクラブでもひとつひとつこなしていってファンを広げていくという信念でやっています。メジャーが大金を使ってプロモーションを展開するのとは違い、私たちのレーベルはマイナーですから。
JT:そんなことはありません。ロバータは日本の55レコードというインディ・レーベルが中心になってプロモーションしてきましたし、かのディー・ディー・ブリッジウォーターだってデビュー・アルバムは日本制作ですよ。それができるのがジャズなんです。
シーネ:それならビデオアーツにも頑張ってもらわなくちゃ。とりあえずは、私の方はドイツとフランス
JT:われわれJazzTokyoもインディを応援していますから。
シーネ:そうそう今年はアメリカのロチェスター・ジャズ・フェスに出演することになっています。そこで誰かの目に止まればそこからまた新しい展開が始まるのではないかと期待しています。
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JT:あなたが今まで挙げたヨーロッパの女性ヴォーカリストと大きく異なる点は、シンガー・ソングライター的性格です。今回の新作でも11曲のうち7曲が自身のオリジナルですよね。しかも、そこに4曲のスタンダードが入ってきても何の違和感もない。とても流れがスムーズで、しかもオリジナルに独特のニュアンスがある。それを支えているのは一貫したジャジーな唱法だと思います。
シーネ:そうですね。オリジナルを歌っている歌手はいると思うのですが、どうも皆ポップな方向に行っている。私の場合、ポップな歌い方ができないんです。ポップに歌おうとするとうまく行かず、ジャジーに歌うとぴたりと収まるんです。若い頃から、どうしてそんなにジャジーに歌えるの、と不思議がられていました。
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JT:そこであなたの音楽キャリアに感心があるのですが、簡単に紹介していただけますか。
シーネ:4才の頃から音楽の勉強を始めました。デンマークでは幼少の頃から音楽を学ぶプログラムがあるのです。最初にドラムやダンスでリズム感を身に付け、7才になるとフルートでメロディを、次にピアノで和声を学び、15才のときにサックスを手にし譜面が読めたのですぐビッグバンドに参加しました。17才までの3年間は3つのビッグバンドを掛け持ちしていました。聴くのも演奏するのもカウント・ベイシーが中心でしたね。19才で音楽院に入学するのですが、その前の予備校で1年間理論や聴音など徹底的にしごかれます。ジャズ・ヴォーカルはその時点で始めました。エスピアという北西部の小さな街の音楽院でしたが。
JT:歌を始める前にビッグバンドで3年間サックスを吹いていたのですか。それは歌手にとっては素晴らしい経験になったでしょうね。
シーネ:その通りです。ビッグバンドはフレージングやリズムの勉強にはもってこいの場所なんですよ。
JT:あなたのキャリアを伺って歌がとてもこなれている理由がよく分かりました。ストーリー・テリングも巧みですしね。
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JT:ノルウェーの歌手やミュージシャンがフォークロアの探求にとても興味を示しているのですが、そちらの方面はどうですか。
シーネ:とても興味があります。一度にはあれもこれもできないので将来の夢でもあります。実験的な作品はともかく、今でも曲を書く時にはデンマークの伝統的な音楽、とくに教会の音楽に影響を受けているはずですので、注意深く聴いていただければ気が付くはずです。
JT:過去の作品には、フォークロアに題材をとったものがあるようですね。
シーネ:『Waiting for Dawn』の中にフォークロアを素材にしたものがありますが、でも最終的には私の音楽になっています。『Remembering You』というアルバムは、デンマークの古い映画や演劇の音楽をテーマに書き、それとアメリカのスタンダードとうまく調和させるように企画したものです。
JT:映画やミュージカルに出演する気持ちはありますか。
シーネ:それはわからないわ。ミュージカルのメロディ自体は好きなのですが、ミュージカルの唱法は独特ですからね。ちょっと真似はできない。「ヘア」だったらできるかな。「ヘア」はブロードウエイの伝統的な唱法ではないから。
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JT:音楽以外の趣味は何かありますか。
シーネ:エキササイズかな。フフフ。あとは、ワインと食べ物ね。ワインはソムリエほどではないけど、いろいろ勉強してますよ。
♫ 初出:2011年5月 29日更新 JazzTokyo #159
ロバータ・ガンバリーニ, シーネ・エイ, モニカ・ゼタールンド, アン・バートン, ニルス・ヘニング・エルステッド・ペデルセン, カフェ・モンマルトル, カーリン・クローグ

