Interview #192 三輪洋子 Yoko Miwa

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portrait above by Caroline Alden

三輪洋子 Yoko Miwa  (pianist/composer/educator)
神戸出身。ボストン在住。バークリー音楽大学ピアノ科准教授。
大阪音楽大学ピアノ科中退。小曽根 実(小曽根 真の父)にジャズのレッスンを受けたのち、甲陽音楽学院に入校。バークリー音大のオーディションで一位獲得。全額奨学生としてバークリー音大に学ぶ。ケヴィン・マホガニーの伴奏ピアニストを経て、2011年、バークリー音大の准教授に就任。在学中よりトリオ活動を始め、ボストン、NY、ワシントンDC、日本などで演奏活動を展開。CD8枚をリリース。最新作は、『Keep Talkin’』。
http://www.yokomiwa.com/about-yoko-miwa/

Interviewed by Kenny Inaoka via emails, August 2019.

♫ 新作『Keep Talkin’』は、全米ジャズ・ラジオやSpotify で人気が高い

Jazz Tokyo:新作の『Keep Talkin’』は、オープナーの<Keep Talkin’>がファンキーで、バップの名曲モンクの<In Walked Bud>と続き、意表を突かれました。新作の選曲の意図は?

三輪洋子:私のトリオのレパートリーは今では約200曲以上になりますが、その中からアルバムのための選曲をする際には、自分のオリジナルは勿論、色んな違ったスタイル、ハーモニーやリズムを含んでいて、そして且つ、全ての曲がアルバム全体のテーマやフィーリングに合うように考えて選曲するようにしています。

JT:6曲目のビートルズ<Golden Slumber~You Never Give Me Your Money>はビートルズの『アビー・ロード』からですが、ここから雰囲気が変わります。この曲を取り上げた理由は?



三輪:このメドレーは長年の間、私のファンたちのお気に入りの曲なのですが、レコーディングの最終日に録音することを決めて、普段の演奏のアレンジからアルバム用に少し変えてみました。



JT:三輪さんのオリジナルが6曲収められていますが、これらは新作のために新たに書き下ろされたものですか?



三輪:普段から曲は常に書いています。私はどちらかというとアルバムのために新曲を書くようなタイプではないので、最近の私のオリジナル2曲とすでに書いてあった曲の中から私のお気に入りの4曲を選びました。

JT:ドラムスのスコット・ゴウルディングはおなじみのレギュラーですが、ベースのウィル・スレイターとはいつ頃からですか?

三輪:ウィルとは8年ほど一緒に演奏しています。日本ツアーにも何回か一緒に行きました。一緒にレコーディングしたCDはこれで3枚目。息の合うメンバーで、何も言わなくても私のイメージ通り、それ以上の演奏をしてくれますし、時には思いがけないアイデアやクリエイティブな演奏で、びっくりさせられたり、楽しく演奏できる、私の一番お気に入りのベーシストです。

JT:レコーディングはスムーズに進行しましたか?

三輪:レコーディングはとてもスムーズに進みました。長年このトリオのメンバーで演奏をしているのと、スタジオでのレコーディングの経験も増えたため、最近では実際どのテイクがいい、悪いというよりも、それぞれのテイクが違ったバージョンであって、テイクをたくさん取れば取るほど選択が難しくなるので、ほとんど2テイクほどで仕上げていきました。


JT:久しぶりに聴いたこの新作では三輪さんの多彩な面を楽しむことができましたが、なによりも印象に残ったのは三輪さんの自信にあふれた演奏ぶりでした。アルバムの出来に満足していますか?

三輪:ありがとうございます!自信がついたというよりも、小さなミステイクを気にせずに、その瞬間に起こっている音楽の方向に恐れずについて行ける演奏ができるようになってきたかと思います。批評家やファンの人たちに私のハートとパッションが伝わってくるとよく言ってもらえるのは、無理に音楽を創りだしているのではなく、私自身を自然に音として表現することができるようになってきたんだと思います。『Keep Talkin’ 』の仕上がりには満足していますが、勿論、自分の演奏に満足するということはまずないと思います(笑)。どんなレコーディングもスナップショットや写真のようなものだと思います。ひとつの目標を達成するたびに、また新しい目標が現れますし、このCDがラジオのチャートでトップ5に入ったり、たくさんの素晴らしい批評をいただいて嬉しいなか、すでに次のCDについて考え初めています。

JT:ご自身でお勧めの聴きどころをあげてください。

三輪:私のトリオはひとりずつが目立ちたい、というような演奏をするのではなく、3人が一緒に創り上げるグループとして一体感のあるサウンドを大事にしていますので、そこがリスナーに届けば嬉しいと思います。

JT:アメリカの放送局でオンエアが多いのはどの曲ですか?



三輪:私のオリジナル曲、<Keep Talkin’ > が人気ですが、<Golden Slumbers- You never give me your money>のメドレーも人気ですね。私のオリジナル曲の <Sunshine Follows the Rain> は、SpotifyのCoffee Table Jazz という200万人以上のリスナーがいるオフィシャル・プレイリストの1曲に選曲されました。このアルバムはラジオでたくさんかけていただいたおかげでナショナル・ジャズ・ラジオ・チャートでチック・コリアやミッシェル・カミロなどと並んで4位まで上がりました。

JT:CD発売記念のライヴやツアーを予定されていますか?



三輪:すでにアメリカでは行なっておりますが、有名なクラブでは、ワシントンDCのBluesAlley/ブルーズ・アリー、ニューヨークのBirdland、ボストンのRegattabar などでCDリリース・コンサートをしましたが、近いうちに日本にもツアーに行けるといいですね。



JT:日本での演奏の具体的な予定はありますか?

三輪:ぜひ、近いうちに日本ツアーをしたいのですが、残念ながら今のところ具体的な予定はありません。しばらくアメリカでの活動に専念していましたので、そろそろ日本の皆さんにも私たちの演奏を聴いてもらえる機会があれば嬉しいですね。

♫ 2011年からバークリー音大のピアノ科准教授としてレッスンを付けている


Jazz Tokyo:三輪さんがピアニストを務めていたヴォーカルのケヴィン・マホガニーが突然亡くなりましたね。



三輪:彼からは色んなことをクラスや、ステージ上で学びました。彼が亡くなる少し前に最後のメッセージをいただきました。”君はいつも僕のお気に入りのピアニストのひとりなんだよ”

JT:バークリー音大の准教授(Associate Professor)に就任されましたが、何を講義されていますか? 生徒数は何人くらいですか?



三輪:ピアノ科でピアノのプライベート・レッスンをしています。ピアニストの必修のクラスで、一対一のレッスンです。毎学期30人(1日に約10人の生徒を週に3日)毎週教えています。個人のレベルや必要な課題に合わせてのレッスンができるので、楽しいですし、やりがいがあります。


JT:日本の専門学校と違うところは?



三輪:ここ何年かバークリー音楽大学はジュリアードに次ぐ世界で2番目の音楽大学という評価を得ています。世界中から優秀なミュージシャンたちがここに勉強に来るわけですから、レベルはかなり高いです。今では学校の規模がますます大きくなってきていて。マスター・ディグリー(修士号)もバークリーで取得できるようになりました。音楽に関する必要な機材や施設はすべてあると言ってもいいでしょう。何といってもワールドクラスのミュージシャン/先生たちと一緒に勉強したり、演奏をする機会があるということは素晴らしいと思います。


JT:生徒は各国から集まっていると思いますが、最近の生徒の傾向は?

三輪:もちろん世界各国から生徒たちが集まって来ているのですが、やはりアジア人が多くなってきていて、マレージア、シンガポール、とくに韓国人、中国人が最近ではいちばん多いですね。日本人は私が生徒でいた頃に比べるとかなり減ったと思います。



JT:レッスンと演奏活動の両立は大変だと思いますが、その割合は?

三輪:私は最初にパフォーマーであり、次に教育者です。 演奏している場合、私はそれに100%力を注ぎますが、教える場合ももちろん同じことです。 ほとんどのジャズ・ミュージシャンは、演奏のみか、教えるだけかを選択する場合、演奏を選択すると思いますし、私も同じように感じます。 バークリーには自分から仕事の応募をしたことはなかったのですが、ピアノ科から私に電話がかかって来て、断ることのできない素晴らしいオファーをいただました。  2011年からバークリーで教え始めて以来、バークリーで教えたいと思っている有名なジャズ・ミュージシャンたちにたくさん会うようになり、私が正しい決断をしたことに気づきました。



JT:演奏はトリオが中心ですか?



三輪:基本的にはトリオが中心ですが、もちろん他のミュージシャンと共演する機会もよくあります。
たとえば、NEA Jazz Master のシンガー、シーラ・ジョーダンや、世界で最も偉大なジャズサックス奏者のひとり、ジョージ・ガゾーンなどとはここ何年か定期的に共演しています。



JT:最近の演奏活動について教えてください。

三輪:私のトリオは毎週2ヶ所、ボストンのトップ・ジャズクラブで演奏しています。また、ボストンの有名なコンサートホールのレガッタバー、スカラーズ・ジャズクラブでも定期的にソールドアウトのコンサートを行ったり、ニューヨークのブルーノート、バードランド、ディジーズ・コカコーラ、ワシントンDCの歴史的なブルーズ・アリーなどでも定期的に演奏しています。最近では、アメリカの有名なジャズフェスティバル、たとえば、アトランタ・ジャズフェスティバル、リチフィールド・ジャズフェスティバル、ケンブリッジ・ジャズフェスティバル、コカコーラ・ジェネレーションズ・イン・ジャズフェスティバルなどでも演奏しました。また、今超人気のジャズシンガー、ジャズミア・ホーンを含むリンカーンセンターのオールスターバンドのツアーにも参加しました。

At Scullers (photo:Caroline Alden)



JT:ボストンのライヴ・シーンはどんな状況ですか?



三輪:ボストンにはニューヨークに似た非常に活気のあるジャズのライヴ・シーンがありますが、違うところといえば、ニューヨークにはミュージシャンが多いため、クラヴも多いところです。ボストンは世界のジャズ教育の中心地ですから、ミュージック・シーンにユニークな環境を作り出しています。

JT:ボストンにレコード店やCDショップは残っていますか?



三輪:ほとんどなくなってしまいました。CDはオンラインやコンサートでは売れますが、もう何年も前からアメリカではほとんどのリスナーが配信のダウンロードのみになっています。やはり本当のジャズファンは昔からある残り少ない古いレコード店に通っていますが。



JT:クラウド・ファンディングをやられているようですが目的は? CFはミュージシャンの間で一般的なのですか?

三輪:クラウド・ファンディングはとても人気があります。私は今回の新しいCDで初めて使いましたが、たくさんのミュージシャンはもう長年クラウド・ファンディングを使っています。有名なミュージシャンでもクラウド・ファンディングを使うことによって、CDがリリースされる際に経済的な面だけではなく、マーケティングとして使ったりしていますね。

♫ 究極の目標は世界をツアーする国際的なアーティストになること


Jazz Tokyo:生まれは神戸出身ですが、音楽一家に生まれましたか?



三輪:母は音楽が大好きで家では常に音楽が流れていました。母は若い頃からお琴、三味線を長年弾いていて、家でお琴を弾いているのを横で聞くのが大好きでした。どんなジャンルにも関わらず良く色んなコンサートにも連れて行ってくれましたね。


JT:音楽に初めて興味を持ったのはいつ頃で、どんな音楽でしたか?



三輪:4歳頃だったと想います。絶対音感を持っているのでテレビで流れる曲や童謡などなんでも、自分なりにピアノで弾いていたのを覚えています。

JT:ピアノを始めたのはどんなきっかけでしたか?

三輪:姉がピアノのレッスンを受けていたので、それがとても羨ましくて、真似をして自分で弾いていました。



JT:専門学校へ入られたのですね?



三輪:クラシックピアノを真剣に勉強するようになって、目標は音大に入ることでした。そして大阪音楽大学のピアノ科に入りましたが、思っていた内容と少し違った感じがして...。子供の頃から耳から聞いてなんでも自分なりに弾くのが好きだったこともあり、クラシック以外に何か自分にあった音楽があるんじゃないかな、とは思っていたのですが、ジャズに出会った時に”これだ!”と確信しました。小曽根真さんのお父様、小曽根実さんが私の最初のジャズピアノの先生でした。彼から習ったことは私の今の演奏にかなりの影響を与えたと思っています。彼のジャズクラブでウェイトレスを毎週末しながら、彼の演奏を聞くことによって、耳を肥やしました。時には突然ステージに呼ばれてバンドと演奏させてもらったり。素晴らしい経験をさせていただきました。彼の音楽教室でクラシックピアノと初歩のジャズを教えたり、ジャズシンガーの伴奏もしていましたが、関西大震災で音楽教室やクラブがすべて崩壊してしまいました。仕事も失い何をしていいのか悩んだ結果。アンサンブルでの演奏や理論を追求したいとずっと思っていたので、いいチャンスかと思い、甲陽音楽学院に入学しました

。

JT:ジャズに興味を持ったきっかけはどんなジャズでしたか?



三輪:やはり母が家でかけていたジャズのレコードがきっかけだと思いますが、サラ・ヴォーンやナンシー・ウィルソンなどシンガー系から入っていき、ビル・エヴァンスを聴いてすぐに彼の演奏が大好きになりました。彼の長年のクラシックからジャズを弾きだした経歴もあり、彼のサウンドに共感を覚えました。


JT:バークリー音大にアプローチしたきっかけは?

三輪:バークリー音楽大学の教授たちが世界中に奨学金のオーディションのツアーに行くのですが、ある年、甲陽音楽学院でのオーディションが決まり、甲陽の院長にオーディションを受けないかと言われたのですが、自分がアメリカに行くことなど想像もつかなかったので、すぐに断りました。しかし周りの人たちがオーディションを受ける準備をしているのを見て、自分も力試しに受けてみようかと思い、受けた結果、1位を受賞しました。かなり悩んだのですが、やはりせっかくいただいた奨学金を無駄にしてはいけないと思い、バークリーに入学することを決意しました。

JT:バークリーの教育で日本の専門学校といちばん異なるところは?



三輪:ミュージシャン/教職員や生徒達が世界中から集まってきていますので、とてもオープンなコミュニティーだと思います。具体的にどんな種類の音楽を勉強したいのか、それぞれ個人に合う、たくさんの選択肢があるところだと思います。そしてそれに対応できるそれぞれのジャンルで経験を持った、たくさんの先生たちがいることです。



JT:ボストンへの居住を決心したのはいつ頃、どんなきっかけでしたか?



三輪:バークリー卒業後には自分のトリオの仕事が入り出したり、もう少し、もう少しという感じで滞在が伸びましたが、結局、家族も理解してくれてボストンに滞在してできる限りの自分の夢を追求すべきだと思うようになりました。私のトリオの評判もボストンではかなり確立し、ボストンの人気投票で1位になったり、2011年にはバークリーからのお仕事のオファーがありましたが、それはもちろん大きかったですね。

JT:好きなミュージシャンとアルバムをあげてください。

三輪:好きなミュージシャンやアルバムは、常に変わるので、選ぶことは難しいですが、昔からの私のヒーローとお気に入りをあげると、ビル・エヴァンスの『Live at the Village Vanguard』、 『Portrait in Jazz』, オスカー•ピーターソンの『Night Train』、 マッコイ・タイナーの『Inception』ですね。

JT:最後に、夢を語ってください。

三輪:多くの意味で、私はすでに自分の夢を生きているように感じています。アメリカでは私のトリオで思ったように演奏して、そしてそれを分かってくれる、尊重してくれるリスナーがいて、ファンが増えてきていますので本当に嬉しく思っていますが、究極の夢は、ヨーロッパやアジア、もちろん自分の国、日本でも定期的に演奏できるもっと国際的なアーティストになることです。

稲岡邦彌

稲岡邦彌

稲岡邦弥 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。音楽プロデューサー。著書に『改訂増補版 ECMの真実』編著に『ECM catalog』(以上、河出書房新社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。Jazz Tokyo編集長。 https://www.facebook.com/kenny.inaoka?fref=ts

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