Interview #207(緊急) 田村夏樹+藤井郷子 Facebook Liveを語る

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田村夏樹 Natsuki Tamura
1951年、滋賀県大津市生まれ。トランペッター、コンポーザー、「Gato Libre」他を率いる。バークリー音楽院、ニューイングランド音楽院卒。最新作『Gato Libre / Koneko』。

藤井郷子 Satoko Fujii
1958年、東京都生まれ。ピアニスト、コンポーザー、「Satoko Fujii Orchestra東京」他を率いる。バークリー音楽院、ニューイングランド音楽院卒。最新作『BAIKAMO』

Interviewed byKenny Inaoka via emails, May 31,2020

1st set:

JT:今回のCovid-19のパンデミックで世界各国を活動場所としているおふたりには相当影響があったと思いますが、海外での活動予定がキャンセルになった例はありますか?

田村、藤井:5月23日から6月1日までの予定だったヨーロッパツアー(ポーランド2都市、フランス、イギリス、ドイツ)と10月のオーストリアでの仕事がすでにキャンセルになりました。11月に決定しているヨーロッパの日程、12月に決定しているアメリカの日程がどうなるかはまだわかりません。7月8月にもフェスティバル・ギグを打診していましたが、もちろんすべて決定前に流れました。

JT:最初にキャンセルの連絡があったのはいつ頃ですか?

田村、藤井:3月初めです。

JT:そういう場合は、双方リスク負担は無しにキャンセルもしくは延期に同意するわけですか?

田村、藤井:今回は、来年もしくは可能な状態になってから行うという延期ということで話しています。

JT:日本の場合はどうですか? いつ頃からキャンセルの動きが...。

田村、藤井:私たちは1月下旬から2月下旬までヨーロッパ、アメリカとツアーしていました。2月20日に帰国して、27日に東京で仕事だったのですが、ツアーの疲れか体調を崩してその仕事をキャンセルしました。それ以降3月4月5月の仕事すべてキャンセルとなりました。

JT:これはミュージシャン側からの申し入れですか、ライヴハウス側からですか?

田村、藤井:店からだったり、共演者からだったりもしましたが、私たちからも関西、中国ツアーも含めキャンセルにしました。とくに大人数のバンドの仕事が2本入っていたのですが、不安は払拭できずにキャンセルさせていただきました。

JT:基本的に日銭で生計を立てているのは双方同じだと思いますが、おふたりは苦境に立つライヴハウスを支援しようと在庫CDの販売を実行されていますね。自身の生計のために在庫CDの拡販を呼びかける例は多いと思いますが、ライヴハウス支援のために、はどういう思いからですか?

田村、藤井:キャンセルして店に迷惑をかけたので、何かしら普段お世話になってる店の維持に協力できたらという気持ちで始めました。

JT:反響はどうですか?

田村、藤井:おかげさまでたくさんの方々に多くのCDを買っていただきました。またご寄付という形もいただきました。

JT:分配などはどのようにして?

田村、藤井:最初からライブハウス支援として低価格販売(1000円)したCDは満額ライブハウス支援に当てさせていただきました。キャンセルした日数に応じて分配(銀行振込み)させていただきました。

JT:非常にフェアだと思います。

2nd set:

JT:おふたりはご自宅からソロとデュオでライヴ・ストリーミングを始められましたね。その思いときっかけは?

田村、藤井:ニューヨークの知人たちがロックダウンの中で始めたストリーミングのようなことができないかと思い始めました。

JT:配信のセッティングはご自身で?

田村、藤井:自宅の狭いピアノ防音室にiPhone一台だけでやっています。防音室なので、有線のインターネット配線ができずに部屋の狭さでマイクさえ立てられずに。でも、iPhoneが優秀でびっくりしました。

JT:“無観客”で演奏するご苦労は?

田村、藤井:今まで練習のためだけに使っていた狭い部屋で、自分の楽器でこんな形で演奏を公表するということは考えても見ませんでした。お客さんがいないところでそんな状況で演奏するというのは、最初はかなり気分的に集中できずに苦労しましたが、3週間くらいで慣れてきました。

JT:リアルタイムで書き込まれるコメントは見ることができません..。

田村、藤井:何せ、小さなiPhoneですので、見えません。見ようとすると、こちらの顔がアップになって見苦しいです。

JT:海外からの反応はありますか?

田村、藤井:最初から海外で聴いていただけるという時間設定にして、週3日はアメリカ、残りの週3日はヨーロッパの時間帯で組みました。私たちの音楽の種類からして多数の方に聴いていただけるわけではありませんが、毎回聴いてくださる熱心な方々に励まされる思いで演奏しています。録画してあとで配信という手もありますが、今回はリアルタイムの緊張感にこだわりました。

JT:ライヴハウスからの “無観客” 配信で「投げ銭制」をとっているグループもありますが。

田村、藤井:とりあえずは、手っ取り早くできる形「Facebook Live」で、やっています。お気持ちはCDを購入していただくということでいただいております。

JT:いつまで継続される予定ですか?

田村、藤井:この形態は5月末までの予定です。

JT:ライヴ・ストリーミングのもうひとつの形態として「リモート・コンサート」(メンバーがそれぞれ自宅から演奏に参加するバーチャル・コンサート)がありますが、こちらについてはどのように考えられますか?

田村、藤井:リモート・コンサートは基本的に有線接続でないと時間的なズレが発生することと双方がシステムをしっかりしておかないと無理なようです。現状、自宅のピアノ防音室に有線を持ち込めないので、自宅からは技術的に不可能です。

JT:カナダなどは8月末まで全空港閉鎖のようですが、海外での活動はいつ頃から再開の予定ですか?

田村、藤井:11月のヨーロッパ・ツアーがどうなるのか、連絡を待っています。

JT:国内はどうでしょう?

田村、藤井:6月下旬に東京で何本かライブが入っています。生活している神戸からの移動も含めて、悩むところですが、しばらく状況を見ながら判断しようと話しています。

JT:ライヴハウスやミュージシャン、関係スタッフ(照明、音響他)らに対する国の支援についてはどのようにお考えですか?

田村、藤井:日本の支援は業種がなんであれ、とんでもなく遅いし、実際支援する気があるのかどうかも伝わってきません。どうも、好きなことをやっている人は趣味でやっているんでしょう?みたいに考えている人も多いようです。

JT:海外のミュージシャンからは各国の支援について何か情報が届いていますか?

田村、藤井:ヨーロッパはどこもさすがという動きですね。アメリカでもアート、音楽系が申請できる emergency grant (編集部注:非常時助成金)の救済がいくつかあるようです。日本では、唯一「持続化給付金」だけでしょうか。フリーランスのミュージシャンという職業があるということを知らない役所の方がいっぱいいるらしいです。フリーランスとフリーターの区別がつかないらしくて、まずは就職活動してくださいと。
*編集部注:フリーランスは自らの専門性や能力を駆使し企業に属さず自立しながら働く人たちで、フリーターはアルバイトやパートで随時賃金を稼ぐ人たちをいう。

JT:内外を問わず、活動が再開されたあと、いわゆる「ポスト・コロナ」で音楽活動の状況が変わると思われますか?

田村、藤井:「ポスト・コロナ」まではまだまだだと思います。完全に安全で心配がない状態になれば以前のような活動は可能でしょうが、現時点でライブハウスが営業再開しても、集客も営業も難しいと思います。

JT:どのような状況になることを望んでおられますか?

田村、藤井:やはりお客さんと同じ空間に居るとそのバイブが伝わってくるのでやり甲斐があります。できればそういう状況で演奏したいです。
でも自宅からの配信も慣れてくるとお客さんのバイブに影響されず、落ち着いて素直な演奏ができそうな気もします。なのでどんな状況になっても大丈夫な気もします。

JT:いろいろな配信演奏を視聴しましたが、音質向上でもっと楽しめる気がしました。非常時のなか、ありがとうございました。

After hours:

田村、藤井:ベルリンのミュージシャンは即座に国から9000euro(約100万円)、州から5000euro(約60万円)振り込まれたそうです。私のベルリン・オケでトランペットを吹いているニコラス・ノイザーが今のベルリンのミュージシャン組合のプレジデントです。
フランスは数々の補助があり、それぞれの詳細はかなり複雑ですが、通常でも確定申告している一定の数の公演をこなしているミュージシャンには翌年インカムが減ったら、前年度の70%までは補償するという国ですから、今回のようなケースはさらに手厚いですね。フランス革命の国ですから、西ヨーロッパの社会主義国っていう感じですね。
アメリカは個人事業主で週600ドル(約6.4万円)の失業保険が6ヶ月受けられます。アート系でも、emergency grant 1500ドル~5000ドル(約16万円〜53.5万円)くらいの救済がいくつかあるそうです。

JT:日本のミュージシャンはため息が出るばかりですね。これを機に政府と交渉するための組織も必要かもしれませんね。

田村、藤井:今、メールスに出演しているヴァイブの齊藤易子さんからの情報です。メールス、お客さん150名まで入れているそうです。(編集部注:正確にはお客さんではなく、出演者、スタッフ、メディア招待客等の入場許可人数が150人まで。詳細は、別掲の齊藤易子さんと大島祐子さんのインタヴューを参照嘆います)出演ミュージシャンはほぼドイツ人のようですが、もちろんドイツ在住のアメリカ人とかもいます。

JT:メルス・フェスティバルは、5月29日から6月1日までライヴ配信されていますね。

田村、藤井:今回のこの「Facebook Live」を通じて新しい企画が生まれるかもしれません。今回の配信では、アムステルダムのカップルAb BaasとIg Hennemannと、ニューヨークのカップルTom Raineyと Ingrid Laubrockも同様なことをしていて、この6人で仕事取れたらいいねとか話していました。2年くらい前にたまたまカナダのフェスティバルで6人が一緒になったこともあったし、実現するかも。面白い形に発展できたらいいなと思っています。

Ig Hennemann:Harvest of  ‘stuck at home’ in Tokyo, New York and Amsterdam: this morning I listened to three different female/male couples in life and in music beautifully creating together. More then 50 years ago when I started my musical career one couldn’t imagine that there would be couples improvising together: working duo’s. Although the position of woman in society/in art is by far not what it should be, here something is changing for the better which makes me very happy. Listen to Satoko Fujii and Natsuki Tamura, Ingrid Laubrock and Tom Rainey, and Ig Henneman and Ab Baars. They all played from their homes: Satoko and Natsuki every day in May on Facebook (Satoko says to be very happy to play for an audience on her own grand piano which never happened before), Ingrid and Tom delivered 11 duo Episodes on Bandcamp, and Ab and I did live streaming, and for this afternoon May 31, and yesterday, we delivered 7 min improvisations at the BIS series in Italy, Giulianova of Giuseppe Di Berardino. How I would love to play a concert with these 3 duo’s and a final sextet set: piano, trp, cl/shakuhachi, viola, ts/ss, drs it would be. Any festival interested for the future?

東京、NY、アムステルダムの「巣篭もり生活」の収穫;私は、今朝、三組の男女のカップルが人生の同じ時間にそれぞれ素晴らしい音楽を奏でるのを楽しみました。僕が音楽キャリアをスタートさせた50年以上も前、カップルがデュオで即興演奏に興じるなどと誰が想像し得たでしょうか。女性が本来社会や芸術の世界であるべき姿とは未だかけ離れているとは思いますが、嬉しいことに我々の場合は良い方向に何かが変化しつつあるのです。藤井郷子と田村夏樹、イングリッド・ラウブロックとトム・レイニー、イグ・ヘンネマンとアブ・バース。この3組のカップルは皆、自宅で演奏、ネット配信したのです。郷子と夏樹は5月の毎日 Facebookを通じて(郷子は、初めて自分のピアノを使って公開演奏できたことをとても幸せだったと語っています)、イングリッドとトムは11曲のデュオ・エピソードをBandcampを通じて、アブと私はライヴ・ストリーミングを通じて、そして今日、5月31日の午後はイタリア・ジュゼッペ・ディ・ベラルディーノのBISシリーズデ7曲のミニ・インプロヴィゼーションを披露しました。この3組のデュオでコンサートを組めたらどんなに素敵でしょう。もちろん最後は全員のセクステットでね。ピアノ、トランペット、クラリネットと尺八、ヴィオラ、テナーとソプラノ・サックス、それにドラムス。どこかのフェスティバルでどう?

稲岡邦彌

稲岡邦彌

稲岡邦弥 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。音楽プロデューサー。著書に『改訂増補版 ECMの真実』編著に『ECM catalog』(以上、河出書房新社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。Jazz Tokyo編集長。 https://www.facebook.com/kenny.inaoka?fref=ts

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