Interview #228 海原純子 Junko Umihara

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Interviewed by JazzTokyo, via emails, August 2021
photo: Hirokazu Takayama 高山浩数

海原純子(Junko Umihara)
東京慈恵会医科大学卒。医学博士。心療内科医。産業医。日本医科大学特任教授。昭和女子大学特命教授。日本ポジティブサイコロジー医学会会長。一般社団法人「日本生活習慣病予防協会」理事。公益財団法人「社会貢献支援財団」理事。2016年、東北大震災被災地調査論文で日本ストレス学会賞受賞。著書に「男はなぜそんなに苦しいのか」(朝日選書)他多数。
2018年より本格的にジャズ・ヴォーカルに取り組みミシェル・ウェアーらに師事。2019年アルバム『Rondo』リリース。月刊Jazz Japanに「ジャズ・スタンダードにみる男の心、女の心」を連載中。

コロナ禍のなか、音楽とトークで語りかける

PART 1:

Jazz Tokyo:東京他で新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言が相次いで発出されるなか、2枚組の新録ヴォーカル・アルバムがリリースされますが、このリリースには何かメッセージが込められているのでしょうか?

海原純子:コロナ禍で日常生活が制限され気持ちが落ち込み、ミュージシャンもライブが難しくなった中でなにかこの時期でないとできないことはないかと思いレコーディングを始めました。

JT:音楽CDとトークCDの2枚組ですね?

海原:ライブでは、音楽とトークと合わせて行っています。特に今回はコロナ禍でのジャズトークを録音したいと思いました。この時期に特に感じたことをお話ししたかったので。

JT:選曲にも意図があるのでしょうか?

海原:すべて一癖ある(笑)一筋縄ではない曲です。歌詞に含蓄があり、想像力が広がるものにしました。私の好きなジーン・リースの曲が3曲含まれています。

JT:クロージングは<雨の日の天使>という日本語のオリジナルです。

海原:これはコロナ禍で人生の雨降りの時にやってくる天使がいたらいいな、と思い作りました。歌詞は若井さんと曲の流れを作りながらオンラインで相談しながらでした。録音の1週間前に出来上がるという状態で。この時期しかできない曲だと思います。

JT:録音にあたっては?

海原:コロナウイルスの感染拡大でメンバーもエンジニアも録音前夜に抗原検査をして集まりました。全員マスクでの録音でした。

JT:Dedeというスタジオで録音からミックス、マスタリングまで行われ、吉川昭仁さんがエンジニアとしてすべて担当されています。

海原:DeDeの吉川さんはバークリーを卒業したドラマーで8年間アメリカでプレーなどをした経験を持ち、NYのDeDeのスタジオがいまコロナ禍で使用できないため帰国していたので助かりました。

JT:音楽監督としてピアニストの若井優也さんがクレジットされていますね。

海原:若井さんとは数年前からライブでご一緒していて2年前のCD「Rondo)」でもお世話になりました。若井さんのピアノは演奏に言葉を感じるピアノでレコーディング中ピアノをききながら癒されました。

JT:ベースの楠井五月さん、ドラムスの海野俊輔さんも簡単にご紹介ください。

海原:楠井さんは、ベース弾きながらスキャットしたり、歌ったりしてるんですね。若井さんもそうですが楠井さんもボーカルにとても詳しいんです。絶妙なタイミングでアルコが入ったりしていつも新鮮です。海野さんは、ドラムの貴公子です。レコーディングした時にうみしゅんさんのリズムのすごさが際立つね、というみんなの意見。

このバンドは海外のミュージシャンから「いいバンドだね」「こういう人たちと一緒でいいなあ」という言葉をもらってます。そしてみんな温かく寛容で素敵な仲間です。

JT:カバーのドローイングもユニークですね。

海原:デザイナーの竹村洋子さんは珈琲の豆をひいてその粉を使い、ジャズ・ミュージシャンのイラストを描かれていてとても興味深かったのでお願いしました。ただ珈琲の豆は日本人の顔の色とは合わないのだそうで今回は紅茶の渋で描いていただいたそうです。

JT:コメントを寄せられた直木賞作家の桜木紫乃さんとはどういうお付き合いですか?

海原:桜木さんは作家になる前から私の本を読んでいてくださっていて、私が医師の他に原稿書いたり歌を歌ってるのを見て、「ああ、いろいろやっていいんだ」と思い小説を書き始めたと数年前の婦人公論の対談で知りびっくりでした。以来気が合って私が出演するラジオに出ていただいたりしています。紫乃さんもジャズが好きでサックスを練習してるんですよ。

歌手というより音楽を通したメッセンジャー

PART 2:
JazzTokyo: 海原さんは心療内科医としても活動されていますが、コロナ禍のなかにあっても対面診療を続けられたのですか?

海原:はい。すべてオンラインでの面談です。コロナ禍でうつに陥る方が増えて面談がとても増えました。

JT:セミナーや講義、講演などはいかがですか?

海原:セミナーや講演もオンラインです。これまでオンラインは無理と思われていた中高年の方もズームでオンライン講座に参加してくださるようになりました。大学の会議もオンライン。今年は10月30日に日本ポジティブサイコロジー医学会の第10回学術集会があります。これは私が会長をしますが、医学の学会ですが一般の方も参加できるシステムです。ジャズとポジティブサイコロジーの講演もありますから。http://jphp.jp/shukaisemi.html

JT:ジャズ専門誌『Jazz Japan』で「ジャズ・スタンダードにみる男の心、女の心」を連載されていますが、これには心療内科医としてのスキルが働いていますか?

海原:心療内科医というより診療だけでなく新聞の相談の担当などもしているので人の悩みの数々を見てきた経験を基にしています。

JT:俗に「女心と秋の空」などと女心の変節の早さが言われますが、事実でしょうか?

海原:生きている人の感情は常に変化して変わります。固定した感情というのは死んだ人だけでしょう。表面的にしか物事をとらえない人にとってはすぐ変わるように見えるかもしれませんね。しかし、かわらずに一貫しているのはおおもとにある「自分らしく生きる」事であり、それが出来なければ、自分らしくのびのび生きられない場所や相手からは去る、つまり変化するということが大事だと私は考えています。そういう意味ではそれが変節と言って責める人はいるでしょうね。一度決めたことを、それが違った道でも変えられずにしがみつき八甲田山みたいになるのは、まあ、男性のほうが多いかもしれませんけど(笑)

JT:コロナ禍のなかで、musicure(ミュジキュア)〜ジャズと小噺と題するライヴや配信をやられていましたが、これは海原さんのなかでの医師と歌手のコラボと考えて良いのでしょうか?

海原:私は歌手というより音楽を通してメッセンジャーとして活動していると思っているので、医療から得たり感じたりしたことを医療の中だけで伝えることが出来ないから、寓話的に音楽とコラボする活動をしています、ただこうした前例がないことは縦割り社会では受け入れられないですね。日本は一つのことだけやるのを良しとする社会通念ですから。こういう分野もありか、と分かる日はまあ、私が生きている間は来ないだろうと思いながらやっています。

JT:医師としてコロナ禍のなかでのライヴのあり方をどうお考えですか?

海原:ライブのお客様は少なくても私のライブの際には、マスクをして会話をしないで感染予防に協力してくださってます。とても感謝しています。自分は医師の立場があるので、非常事態宣言が出た場合はライブはすべて中止にしました。ライブ自体はかなり予防が出来ても行き帰りなどを考えるとリスクが高いので配信にするのがいいかと考えています。

JT:このメンバーでの発売記念ライヴは予定されておりますか?

海原:このコロナ禍でのCD発売記念ライヴは現状では見通しが立てにくいのですが、10月20日にNHK横浜からスタジオ・ライヴが1時間にわたって全国放送される予定です。

JT:11月にはLPもリリースされるようですが。

海原:録音がスタジオ・デデの吉川昭仁さんだったこともあり、クオリティに自信のある制作陣がLPをリリースする、と色めき立っているようです。私はLPのことはよく分からないので任せ切っているのが実情です。オーディオ・マニアがヴォーカルの新録を待望しているという話は漏れ聞いておりますが。

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