Interview #246 ゾウ・アンバ Zoh Amba

閲覧回数 9,289 回

Interviewed by Akira Saito 齊藤聡 (2022年4月9日)

ゾウ・アンバ(Zoh Amba)は2000年4月27日、アメリカ・テネシー州の生まれ。昨年(2021年)の9月にニューヨークに越してきて本格的に活動を開始し、大きな話題になっている。今般、彼女にインタビューを行うことができた。

齊藤聡(以下、AS): サックスを始めたきっかけについて教えてください。

Zoh Amba(以下、ZA): 何でもやってみたい子供でした。天国に行きたいとお祈りしたところ、何週間かあとにサックスをもらったのです。毎日、昼も夜も練習しました。

AS: どんな音楽を聴いて育ったのですか。

ZA: プレス(レスター・ヤング)、マディ・ウォーターズ、アレサ・フランクリン、レディ・デイ(ビリー・ホリデイ)、ケイス・ブルーム、スラッシュメタル、フォークミュージック。どれも音に惹かれただけですよ。子供のとき、風の音や鳥の声をうっとりと座って聴きながら1日を過ごしたことを覚えています。誰の歌もただ美しい。

AS: デイヴィッド・マレイからはどんなことを教わったのでしょう。

ZA: 何年も前にはじめてかれの音を聴いたとき泣いてしまいました。深く心を打つものがあったのです。かれが音楽で見せてくれた多くのものは、なかなか言葉にできません。かれのサウンドは、管楽器を探求する励ましになりました。そこにはスイートな全世界があります。かれは人生についてたくさんのものを見せてくれたのです。

AS: 独特のロングトーンや音色(倍音、マルチフォニックス、循環呼吸、フラジオレットなど)はどのように身につけたのでしょうか。

ZA: 子供のとき家の中で練習することは許されていませんでした。テネシー州には凄い山々があって、演奏するとサウンドが向こうへと旅するようでした。深く瞑想に専念しました。
たくさんの愛が心のまわりで踊っていて、わたしもどんな小さな心でも管に吹き込みました。この音楽を演奏することは真の恩恵でした。音楽が私の魂の中に光り出てくるのです。

AS: 独自のサウンドを持っている伝説的なテナー奏者からの影響はあるでしょうか。たとえば、マレイ、アルバート・アイラー、デイヴィッド・S・ウェア、イーヴォ・ペレルマン、チャールズ・ゲイルといった人たちを思い出すのですが。

ZA: そのような偉大なサウンド・ペインターたちのことを考えると泣いてしまいます。なんて祝福されていて、永遠に私たちみんなに分け与えてくれるのだと考えると。名前を挙げてくれた人たちはみんなわたしの心のそばにいます。音楽のみへの純粋な献身、人生の音楽への献身です。13歳のときにアルバート・アイラーを発見したのですが、かれのサウンドは明るい陽の光や理解とともにわたしの心を満たしてくれました。デイヴィッド・S・ウェア、フランク・ライト、チャールズ・ゲイル、ヒュー・グローヴァー、キッド・ジョーダン、アーサー・ドイル。じつに多くの美しい魂。かれらのサウンドは偉大な魂の純粋な反映です。

AS: いつニューヨークに越してきたのですか。フリージャズや即興音楽に関して他の都市との違いはあるでしょうか。

ZA: 2021年の9月に移ってきたばかりです。そう多くの都市に行ったことがあるわけではないので比べることはしませんけれど、ニューヨークは確実にこれまで体験したどことも違います。美しさも難しさもたくさんあります。やさしい心を護って、やさしく前に進むこと。音楽は純粋です。偉大な魂に囲まれていることは恩恵です。

AS: ニューヨークではどのヴェニューがお気に入りですか。

ZA: ストーンと、チュルヒャー・ギャラリー。

AS: あなたのアルバム『O, Sun』と『O Life, O Light Vol. 1』では演奏を変えていますか。

ZA: 人生の時が違います。『O Life, O Light』はニューヨークに越してきた翌日に録音しました。『O, Sun』は、人生がもっと落ち着いたときに録音しました。
それから、ミカ・トーマス(ピアノ)、タイショーン・ソーリー(ドラムス)、マット・ホレンバーグ(ギター)と組んだアルバム『Bhakti』が今年の8月に出ます。これらのレコードすべてが音楽のかたちでの神聖な捧げものです。

AS: 楽器について。

ZA: うたを放つために使う、美しい金属のピースです。心が本当の楽器です。

AS: 日本の音楽シーンに興味はありますか。

ZA: それはもう、阿部薫(サックス)、モリイクエ(エレクトロニクス)、宮間利之(ビッグバンド)、芳垣安洋(ドラムス)、足立智美(ヴォイス)などを聴いて育ちましたから。

AS: 好きなアルバムを挙げていただけますでしょうか。

ZA: いまのわたしにとって意味のあるアルバムです。もし来週同じことを問われたら違うリストになるでしょう。

M.S.シュブラクシュミ『Sri Rangapura Vihara』
マドゥライ・マニ・アイヤー『Live Concert Series Vol.1』
チャールズ・ゲイル『Repent』
ジェリ・アレン『Twylight』
サニー・マレイ『An Even Break』
デイヴィッド・S・ウェア『Renunciation』
アーチー・シェップ『The Chased』
アリス・コルトレーン『Radha-Krsna Nama Sankirtana』
フランク・ロウ『Black Beings』
チャールス・ロイド『Journey Within』
ドン・プーレン『Healing Force』
カレン・ダルトン『In My Own Time』
フランク・ライト『Unity』

Marc Edwards & Zoh Amba duo – at Union Pool – January 16 2022

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。