ルディ・ヴァン・ゲルダー 追悼
text by Kimio Oikawa 及川公生
ジャズ録音において、ミュージッシャン以上に語られたエンジニアだ。私から観れば神の領域。それは、聴く者をスピーカーの前に釘付けにするサウンドのマジシャンであった。私は、これぞ、ルディ・ヴァン・ゲルダー録音だと感動したのは、『SOMETHIN’ ELSE』。
異論のある方もおられるだろうが、録音からみて、衝動を感じたのは、これだ。
オンマイクがなせるサウンドの世界は身震いをする。すべてのセクションで、ソロが突然空間を無視して、リアルな音像で迫る。ミュージッシャンの魂が、ぶっ飛んでくる。マイキングだけでは引き出せない音像の世界観。ステレオではない時代の縦線の立体感。ルディ・ヴァン・ゲルダー一代で終わるサウンドだ。だれも引き継ぐことのできないサウンド。
一つ、私なりの解釈だが、当時のマイクロフォンと当時のスピーカーのなせるサウンドの頂点芸術。ルディ・ヴァン・ゲルダーは、それを求めていたと信じる。BLUE NOTE やIMPULSEを聴くにはALTEC/JBLが心地良く反応する。
ヴァン・ゲルダー・スタジオのモニタースピーカーを垣間見るに、うん!と納得。
聞きかじりだが、ヴァン・ゲルダーさんはモノフォニック・モニターも併用されていらしたと。バランス確認をなさったらしい。私、なるほどねえ。
多くのエンジニアが挑戦したであろうルディ・ヴァン・ゲルダー・サウンドは、これで終わった。真似しても真似できなかった。
追記 私事ですが、私なりにルディ・ヴァン・ゲルダーのサウンド構成を参考にした録音がある。旧TRIOレコード発売の 『George Mraz in duet with Roland Hanna / Porgy & Bess』。