この一枚2016(国内編)#01 『V.A./ Japanese Underground Music in the Late 70s and 80s』Special Sampler CD
text by 剛田武 Takeshi Goda
Loft Books 番号無し
①「Free Music Rev. vol.1」より
霜月〔岩永多旗夫(g)、皆川修(ds)、河野優彦(fl,tp)〕
1976年11月21日、明治大学駿河台校舎5号館地下踊り場
②「Free Music Rev. vol.2」より
芦川聡(syn)・服部達雄(vln)Duo
1977年4月30日、明治大学和泉校舎6番教室
③「インプロヴィゼーション」(overdubbed)
GALAPAGOS〔清水一登(p,b-cl)、桜井良行(bs,g)〕
『GALAPAGOS TAPES(’73.12~’78.7)』SideA-4(1977年10月)より抜粋
④「INTERVIEW; NEXT QUESTION PLEASE」
Anode/Cathode
『PUNKANACHROCK』(ピナコテカレコード、1981年2月)より
⑤「ファースト・ライヴ」
白石民夫とダメなあたし〔白石民夫(as,g)、篠崎順子(vo)、南條麻人(g)、緒巻健一(ds)〕
1981年8月21日、横浜・ミッキー
⑥「釜山港へ帰れ」
A-Musik〔竹田賢一(大正琴)、工藤冬里(vo, kbd)、西村卓也(b)、箕輪攻機(ds)〕
1983年11月12日、大阪・スタジオあひる
⑦「阿頼耶の世界から」より
GAP〔佐野清彦(p)、多田正美(p, org)、曽我傑(b)〕、三浦崇史(as)、火地風水(ds etc.)
1978年6月18日、吉祥寺マイナー
⑧「まり」
工藤冬里(kbd)、大村礼子(vo)
1979年5月12日、吉祥寺武蔵野ビリヤード
⑨「マイナー・セッション」
渡辺敏子(ds)、佐藤隆史(b)、工藤冬里(syn)、園田佐登志(g, tape, monkey toy)
1979年6月20日、吉祥寺マイナー
⑩「Flying Baby Festival」より
大木公一(g)、曽我傑(b)、秋葉裕子(kbd)、ベンソン富塚(tp)ほか
1979年6月24日、東京・明大前・キッド・アイラック・ホール
⑪「妥協せず」
陰猟腐厭〔増田直行(g)、大山正道(kbd)、原田淳(ds)〕
『妥協せず』(クラゲイル・レコード、1981年3月)より
⑫「Turn You Cry 1986 PSF Alternate Mix Version」
ハイライズ〔南條麻人(vo,b)、成田宗弘(g)、Dr.Euro(ds)〕
1986年、東京・JAM STUDIO プロデュース:南條麻人
⑬「LACRYMOSA」
ラクリモーザ〔Chihiro S.(Aria Pro II RSB 9000 bass)、佐々木政博(ds, perc)、山崎尚洋(p)、Ash(vln)、中川つよし(recorder)、山崎慎一郎(as)、小山景子(vo)〕
1985年7月、9月、東京・四谷STUDIO DIG 作曲:山崎尚洋 編曲:Chihiro S. プロデュース:Chihiro S.、高沢悟 エンジニア:ササキ・ミチアキ 『LACRYMOSA』(LLE、1985年)より
⑭「アンヘドニア 」
VEL〔園田佐登志(g)、中村わかめ(vo)、上中恭(vln)、西村卓也(bs)、篠田昌已(as)、中尾勘二(tb)、高橋幾郎(ds)、ひろ新子(vo,vln)〕
1986年2月2日、東京・スーパー・ロフトKINDO「<鳥の歌 1986 → 山谷> 山谷(やま)やられたらやりかえせ」より
⑮「山谷越年越冬わっしょいデモ」
山谷争議団
1984年12月〜1985年1月、台東区・玉姫公園周辺
⑯「ウェーベリアン小骨」
園田佐登志(tapes, sampling “toy” keyboard)
1988年、Narihira Plant
⑰「テン・ミニッツ・ソロ・インプロヴィゼイション・フェスティバル」より
山崎春美
1981年9月6日、東京・豊島公会堂(フェスティバルのカセット・テープより)
⑱「遠い部屋」
Other Room〔Takashima(g)、Goda(s)、Miyawaki(ds)〕
1982年11月11日、渋谷・ラ・ママ
散らかしっぱなしの地下音楽の掃き溜めに鶴は居るか?
拙著『地下音楽への招待』の付録CD。自画自賛と笑われようが構わない。正直なところこの本を書いたのが自分じゃなかったら、もっともっと擦り切れるまで愛読したかもしれない。なぜなら内容をほぼ全て知っていてスリルが味わえないから。だから山崎春美さんが加筆してくれた章が最高に楽しく読める。
しかし付録CDは筆者のバンドの18曲目を除いてほぼ全て初めて耳にする音源だ。本文中に登場する有名無名のミュージシャンの演奏を直に聴ける歓びは何にも替えられない。レビューの曲目表に敢えて全ての参加ミュージシャン名と録音データを掲載したのは、名前と場所と日時が重要な意味を持つからである。つまり、この書籍は『”人”と”場”を元に描いた個人史』という側面があり、固有名詞や特定の時間軸が重要な鍵なのである。
インタビュー相手から提供を受けた音源を章立てに沿って収録しただけなので、単なる寄せ集めに過ぎない筈だが、通して聴くとひとつのストーリーのような流れがあることに気付くだろう。即興音楽、フリーミュージック、電子音楽、脱力歌謡、痙攣ヴォイス、果ては争議の雑踏まで、すべて合わせて「地下音楽」と捉えることで、歴史の裏舞台で蠢く気配と傷に満ちた豊潤な世界を俯瞰できるだろう。
重要なことは「地下音楽」は1976〜86年の期間だけに限定される存在ではなく、いつの時代にも必ず在るということである。ジャンルやスタイルに関係なく、何かを生み出そうとする”人”と”場”と”音楽”が交わるときに起こるやむにやまれぬ表現欲求の発露であり爆発である。そこでは意志の力が原動力であり唯一の正義なのである。
さあ、明日も新たな「地下音楽」の”現場”へ繰り出すことにしよう。
(剛田武 2016年12月27日記)