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このディスク2016(国内編)No. 225

この1枚2016(国内編)#05 『おぼろ月夜 童謡 森山威男 板橋文夫』

text by Yumi Mochizuki 望月由美

ピットインレーベル Jシリーズ PILJ-0010 2,500円+税

森山威男(ds)、板橋文夫(p)

1.赤い靴 (本居長世)
2.浜千鳥(広田龍太郎)
3.めだかの学校(中田喜直)
4.叱られて(広田龍太郎)
5.花嫁人形 (杉山長谷夫)
6.赤とんぼ(山田耕筰)
7.とおりゃんせ(わらべうた)
8.海~わたらせ(井上武士~板橋文夫)
9.ふるさと~おぼろ月夜(岡野貞一)
10.夏の思い出(中田喜直)
11.七つの子~夕焼け小焼け(本居長世~草川 信)
12.グッドバイ(板橋文夫)

録音」2015年8月5,6日,可児市文化創造センターala
エンジニア:菊地昭紀 (ピットインミュージック)
プロデューサー:森山威男&板橋文夫
共同プロデューサー:品川之朗(ピットインミュージック)
エグゼクティヴ・プロデューサー:佐藤良武 (ピットインミュージック)

森山威男と板橋文夫という最強のコンビがついに到達したわらべ唄の世界が『おぼろ月夜』である。

ドラムとピアノのデュオ、ましてや森山威男(ds)と板橋文夫(p)となればハチャメチャな格闘技セッションを想像される方もいると思うが聴いてびっくり、ここでの二人の無邪気な音の交歓からは遠い子供のころの風景を走馬灯のように思い出させてくれる。

これまでエルヴィンの<花嫁人形>やモンク、カークの<荒城の月>が童謡を素材にしたジャズとして親しまれてきたがここでの2人は単に童謡のメロディーを借りてきてあとはアドリヴを展開するという演奏とは次元が違う、完全にフリーなインタープレイによる新次元の童謡ジャズを確立しているのである。

ここにはデュオというシンプルな構成によってブラシの静寂からスティック、マレット捌き、バスドラにいたるまでの森山威男のドラミングのショーケースがあますことなく刻まれている。

そして、特筆すべきはこの古くから慣れ親しんできた童謡集の中に板橋文夫の(8)<渡良瀬>と(12)<グッドバイ>が何の違和感もなく演奏され活き活きと輝いているのである。
板橋文夫の書く曲はわらべうたのように可愛い曲が多くこの2曲はその代表曲で子供が口ずさみたくなるような唄の心を持っているからなのである。

このアルバムは森山威男が伝説の山下トリオを退団後の再スタートを切った1977年から40年余り、折にふれて共演してきた板橋文夫、ふたりの輝かしい記念碑であり、又たぐいまれなh童謡ジャズ集となったのでこの一枚に選出させていただいた。

CD評は下記になります。
https://jazztokyo.org/reviews/cd-dvd-review/post-5053/

望月由美

望月由美 Yumi Mochizuki FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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