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このパフォーマンス2017(海外編)No. 237

#10 チューチョ・ヴァルデス&ゴンサロ・ルバルカバ

text by Masahiko Yuh 悠雅彦

◯チューチョ・ヴァルデス&ゴンサロ・ルバルカバ(10月22日、ブルーノート東京)
◯アントニオ・ザンブージョ/武蔵野市民文化会館(7月10日、武蔵野市民文化会館
◯マリア・シュナイダー・オーケストラ(6月8日、ブルーノート東京)

https://jazztokyo.org/reviews/live-report/post-21905/

今年はまさにライヴの人となり、ほとんど毎日毎夜、ホールやライヴハウスで音楽を聴く生活に明け暮れ、CDを集中して聴く機会はほとんどなかったといっても嘘ではない。おかげでこの数年の足腰の強さがさらにアップした感じだった。実際、CDを聴く時間も余裕もなかったため、上記の<この1枚>もただ全体の体裁をこわさないために、脳裏にわだかまっていた数枚を思い出すままに列ねたに過ぎない。お許しいただきたい。

そのかわり、ライヴ演奏やコンサートの中から5件を選ぶのでさえ、あれもこれもと脳裏にそのときの演奏が甦ってきて、えらく苦労したほど、今年はまさにライヴの人となった。いや、むしろ楽しかったとさえ言い換えたいくらい。<このライヴ/コンサート>の国内演奏で最も印象深く脳裏に残っているのは、ビッグバンド及び、ブラス・オーケストラ(吹奏楽団)のパンチのきいた心躍る演奏の数々だった。ビッグバンドは遠来のマリア・シュナイダー・オーケストラに加えて、欠かすことなく紀尾井ホールでの定期演奏会を続けて喝采を博している角田健一ビッグバンド、赤坂の『ビーフラット」を中心に演奏活動を展開している東京ビッグバンド( Tokyo Big Band=TBB )、さらにリーダーだった宮間利之が病没(2016年5月24日)したあともテナー奏者の川村裕司が中心となって、新大久保にある「スペースDO」で定期的にコンサートを開いているニューハードなど、本邦ビッグバンド・ジャズのパンチのきいたスウィングする醍醐味を体感しようとするファンが会場を埋める。その中でTBBは米国人ピアニストがリーダーをつとめるユニークなバンドだが、そのジョナサン・カッツの編曲する日本の古い童謡や唱歌が人気を呼んでおり、来年はそれらを吹き込む準備が進んでいるので期待したい。

一方、ウィンド・オーケストラの勢いは凄まじいくらい。実際、日本は世界で最もウィンド・オーケストラが盛んな国として知れ渡るようになった。札幌交響楽団のブラスを担当するメンバーがブラスバンドを編成してコンサートを行ったり、上記の広島ウィンド・オーケストラのように海外の大会に参加する集団すらある。各地でますますブラスバンド人気が沸騰することだろう。

<このライヴ/コンサート>の海外篇に名を連ねたポルトガルのザンブージョの味わい深い歌と演奏も忘れがたいものだったが、それ以上にこうした日本で余り知られていない優れたミュージシャンに的を絞って選びだし、隠れた才能を見出して日本に招き、定期的に優れたコンサートを催している武蔵野市民文化会館のスタッフにを称えたい。同じことが、東京・両国の門天ホールにも言える。ここで行われる型破りのコンサート、イヴェントの面白さを是非一度体験することを勧めたい。

 

悠雅彦

悠 雅彦:1937年、神奈川県生まれ。早大文学部卒。ジャズ・シンガーを経てジャズ評論家に。現在、洗足学園音大講師。朝日新聞などに寄稿する他、「トーキン・ナップ・ジャズ」(ミュージックバード)のDJを務める。共著「ジャズCDの名鑑」(文春新書)、「モダン・ジャズの群像」「ぼくのジャズ・アメリカ」(共に音楽の友社)他。

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