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このパフォーマンス2018(国内編)No. 249

#02 ヒカシュー × ・・・・・・・・・ 2マンライブ『ヒカ・』

text & photos by  剛田武  Takeshi Goda

 

2018年5月25日(金)大塚HEARTS+

Hearts+ presents
ヒカシュー × ・・・・・・・・・ 2マンライブ『ヒカ・』

出演:ヒカシュー / ・・・・・・・・・/ ヒカ・ふしぎなセッション

 

異形のロックバンドと異形の地下アイドルの異形のコラボレーション

ここ数年、筆者が地下音楽や即興ジャズ、前衛ロック以上に足繁く通うのが女性地下アイドル現場である。そこには従来のアイドルポップスのキラビやかな世界だけでなく、激しい表現欲求と卓越した実験精神が同居している。運営・制作側が求める奇を衒ったコンセプトや先鋭的な音楽嗜好が、思春期前後の少女たちの自己表現欲求を通して産み出される錬金術は、楽曲がポップ/ロック/R&B/ヒップホップ/テクノ/メタル/パンク/プログレ/ノイズ/ジャズ/現代音楽など何であれ、まったく別次元の音楽表現にメタモルフォーゼ(変態)し、経験や鍛錬を積んだ音楽専門家には絶対不可能な、唯一無二のライヴ体験を与えてくれる。「行き過ぎることを恐れない」という地下音楽のテーゼを今一番継承しているのは地下アイドルに違いない。そんな筆者の確信を裏付けたのが両者のエンカウンター(邂逅)である。

メンバー全員アイマスクをつけ、個別の名前を持たないという変わったコンセプトのアイドル・グループ・・・・・・・・・(通称ドッツ)と、巻上公一率いるノンジャンル・ロックバンド、ヒカシューとの2マンライヴ。それぞれのソロ・ステージに続いて行われた「ヒカ・ふしぎなセッション」と銘打ったコラボレーションは、ドッツの5人のメンバーがそれぞれ詩の朗読、瓦割り、ミイラの扮装、ジェスチャーゲーム、字幕捲りをするなか、ヒカシューが不定形の即興演奏を繰り広げるダダイスティックなパフォーマンスを展開した。それはシリアスな現代アートとも、ナンセンスなギャグとも、意味有りげな仄めかしとも異なる、正体不明のエニグマに満ちたライヴ体験であった。何が何だか分からないけど面白い、そんな異形の体験こそ、筆者が求めるエンターテインメントの真髄に他ならない。

Jazz Art せんがわが来年以降も続くようなら、このような大胆なコラボレーション・プログラムを取り入れてみてはいかがだろうか。(2018年12月14日記 剛田武)

 

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。サラリーマンの傍ら「地下ブロガー」として活動する。著書『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。ブログ「A Challenge To Fate」、DJイベント「盤魔殿」主宰、即興アンビエントユニット「MOGRE MOGRU」&フリージャズバンド「Cannonball Explosion Ensemble」メンバー。

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