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このパフォーマンス2018(国内編)No. 249

#03 JazzArt せんがわ 2018」

text by Kenny Inaoka 稲岡邦彌

11年間続いた日本でもっともスリリングでクリエイティヴなジャズとアートのイヴェント「Jazz Art せんがわ」が今年を以って一旦幕を降ろすという。並走していた「LAND FES」も新たなステージを求めて動かざるを得ないのだろう。今年からカナダのケベック州とのコラボが始まったばかりで当事者は呆気にとられているのではないか。終了の理由は、主要舞台となっていたせんがわ劇場の運営に「指定管理者」制度が導入されるからだという。つまり、運営の主体が調布市からNPOや企業に移行することになるのだ。この「指定管理者制度」は、2003年9月の地方自治体法の改正により導入されるようになったもので、従来、公共団体や公共団体が出資している団体等に限られていた公の施設の管理運営が、公共団体等の他に、NPO、企業等の参入を加入にしたものだ。身近な例で言えば、「座・高円寺」の愛称で知られる杉並区立杉並芸術会館は、その管理運営はNPO法人 劇場創造ネットワークに委ねられている。「指定管理者制度」の導入は、公共の施設に第一義的に求められる「公益性」に加え、民間のノウハウを活用することによりさらなる「効率化」や「収益性」を求めることを目的としている。端的に言えば、郵政民営化や国立大学の法人化に相通じる施策だが、公立劇場について言えば、地域の文化、民度向上に資することを第一義とすべきで、「効率化」や「収益性」を重視するあまり「運営」が「経営」にすり替わってはならないだろう。
何れにしても、せんがわ劇場への指定管理者制度の導入決定により、「Jazz Art せんがわ」は終焉を迎えることになった。総合プロデューサーの巻上公一氏とプロデューサーの坂本弘道、藤原清登の両氏及び多くの関係諸氏に対しては11年にわたる絶大な尽力に対し心から謝意を表したい。願わくば新たなスペースにおいて「Jazz Art」が継続されんことを。

#179 座談会 〜「JAZZ ARTせんがわ」11年の歩みを振り返る〜 第1回
https://jazztokyo.org/interviews/post-34000/

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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