齋藤徹さんのベース・サウンド
text by Kimio Oikawa 及川公生
アコースティック・ベース。私はありきたりのマイキングで準備を整えた。あとは音を聴いて、調整すれば、いいと構えた。齋藤さん。サウンド・チェックを始めた。ぶっ飛びました。今まで聴いたことのない爆裂サウンド。歪みっぱなし。
まさか、こんな音なんですかとは聞けない。周辺の楽器にかぶるのは当然。視覚を邪魔しない程度の、パーティションを引っ張り出した。こんなことで治るわけがない。しかし、私、ミックスしていて、他の楽器をぶっ壊していない不思議を感じた。それだけが今、記憶に残っている。
訃報を知って、思わず、あの日の自分の慌てようを思い出した。