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R.I.P. ヤン・エリック・コングスハウクNo. 260

ヤン・エリック・コングスハウク逝去 ECM

Manfred Eicher(L) Jan Erik Kongshaug(R)

 

ベンディクセン、タレント、レインボウ、オスロにあるスタジオで多くの作品の録音を担当したレコーディング・エンジニア、ヤン・エリック・コングスハウクが亡くなった。享年75。50年以上にわたって続いた僕らの共同作業の端緒は1979年9月のヤン・ガルバレク、テリエ・リプダル、アリルド・アンデルセン、ヨン・クリステンセンの『アフリック・ペッパーバード』だった(ECM )。 その頃の僕らはまったくの素人でね。だけど、プレイバックを聴きながらお互いに他とは違う何か特別な音を徐々にだけど創り出していることは認識していたね」。マンフレート・アイヒャーが当時を振り返る。ECM創立初期のヤン・エリックの代表的な仕事は後世に残るソロ・ピアノ・シリーズの録音だ。チック・コリアの『ソロ・インプロヴィゼーション Vol.1』(ECM)『Vol.2』(ECM)、キース・ジャレットの『Facing You』(ECM)、ポール・ブレイの『オープン、トゥ・ラヴ』(ECM)。ECM録音の特徴となる「鮮明」で「透明感」のある音はマンフレート・アイヒャーとの近しい共同作業を続けながら確立していったのだ。「当時、僕らがいちばんテストを繰り返したのはマイクの位置決めだった」。2007年のインタヴューでアイヒャーが当時を振り返る。「だけど、僕らは当初から技術的な内容についてはさほど話し合う必要はなかったんだ。顔の表情やジェスチャーで何が必要か分かり合えたんだね」。録音作業の過半は彼の地元のノルウェーで行われたが、パット・メセニーの『オフランプ』(ECM)やキース・ジャレットのスタンダーズの録音ではNYのパワーステーションに飛び、ヤン・ガルバレク、パレ・ダニエルソン、ヨン・クリステンセンのキースのヨーロピアン・カルテットの『パーソナル・マウンテンズ』(ECM)と『スリーパー』(ECM)は日本でライヴ収録された。(文責:稲岡邦彌)


photo: Patrik Hinely (courtesy of ECM)

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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