アーカイヴECM「ECMのジャケット」内藤忠行

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ECMのジャケットは、まるで粋がってないんだよね。写真の選び方といい、文字の入れ方といい、ジャンルを超えたECMの世界を感じる。ようするに、デザインをしたという感覚ではないんだ。なんとなく文字が入っているという感じ。だから、逆にいうとECMのデザイナーはすごいと思うね。どんなジャケットを見てもデザインしましたという感じになっちゃうじゃない。だけど、そういうものを感じさせないというのは音楽に対するコンセプト、写真もそう、デザインもそう、全部統一されているんだと思う。ライナー(注:ジャケット裏)見ても言葉が必要以上に入ってない。それは先入観を植え付けない、個人個人の宇宙の広がりを重んじている。
だから、僕がアイヒャーに出会ったということは、自然なことのような気がする。まず、驚いたのは、彼が僕のところへ来て選んで行った写真は、日本では使われないようなものばかりだった。よく、友人から、「あなたの写真からはどんな音が聴こえますか」と聞かれるけど、僕の写真は音が無いんだ。ジャケットを見て自分なりに音を連想する。僕はそういう無でありたいと思っている。そこに、アイヒャーとの共通点があったのかな?

以前、アメリカへ行った時、レコード店に僕の写真を使ったECMのレコードが飾ってあったのを見て、ほんとうに嬉しかった。自分が選んで欲しかった写真が選ばれて、日本ではなく、ニューヨークのレコード店にあったというのは、こういう仕事をしていて良かったなとつくづく感じたね。今までは、音楽家の写真を撮ろうとしてきたんだけれど、最近は演奏しているところでも風景だと思うようになってきた。今は淡々と撮っている。あとは見る側がいろいろ連想してくれればいいんだ。最近は、画面の外にいろいろあるんだという撮り方をしている。だから、何かを感じている人は、ワーッといっているんだろうなと思うわけ。その点、アイヒャーはすごい感性を持っているんだと思う。(談)

*初出 Booklet「ECM」(発行:トリオレコード 1977)
*関連記事 https://jazztokyo.org/column/inaoka/post-23093/


内藤忠行 (Tadayuki Naito)
写真家・映像作家。1941年生まれ。マイルス・デイヴィスの演奏にインスピレーションを得てジャズを撮影。アフリカに導かれて「ZEBRA」をテーマとする。他に、日本の美を追求した「SAKURA」など。ECMのアートワークでは『キース・ジャレット/ ビロンギング』、『チック・コリア+ゲイリー・バートン/デュエット』、『アート・アンサンブル・オブ・シカゴ/ フル・フォース』他に採用。

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