#02 『沖縄電子少女彩 / 黒の天使』

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Text by  剛田武  Takeshi Goda

CD :infogarage IGST008  ¥2,500(税抜)

沖縄電子少女彩:vo, noise, synthe

参加ミュージシャン:廣山哲史 (RYUKYUDISKO) 、T. Mikawa (Incapacitants, 非常階段)、ASTRO、ドラびでお、森田潤、魚住有希 (ex.LoVendoЯ)、宇川直宏 (DOMMUNE)、河端一 (Acid Mothers Temple)

1. 雨物語
2. 黒の天使
3. 泪の音色
4. 崇元寺~Gusuku Nu Nkashi~
5. 異次元沖縄2019
6. ぼくらは星砂(彩Noise Mix Version)
7. 赤い靴/キャプテンビーフハートに捧ぐ
8. 渚のゴースト(彩Noise Mix Version)
9. 夜に頬よせ
10. 黒髪
11. 赤い夜
12. crunch of murder
13. 憎悪の階層
14. 黒い花
15. 秘密の森
16. memento mori
17. 月物語

Produced by Hajime Nakamura
Executive Producer Hishashi Ikeda

 

ジャンルを語るのはもう辞めにしよう。

2000年8月7日沖縄生まれ、現在19歳のアイドル/アーティスト、沖縄電子少女彩(サヤ)の2ndアルバム。2016年15歳の時に地元沖縄のアイドルグループに参加し、翌年ソロ・デビュー。沖縄音楽、ノイズ、アンビエント、アブストラクトヒップホップ、フレンチポップなど多岐に渡る楽曲を歌い、流行り廃りの早い地下アイドル・シーンでも異色の存在として知られている。ライヴ・パフォーマンスではシンセ/サンプラー/PCを使ったノイズ演奏も聴かせ、これまで歌ものアルバム『サンジェルマン伯爵からの招待』とノイズ・アルバム『Chastity』を公式リリースしてきた彼女の集大成といえるアルバムである。

ソロ・デビューした頃に80年代ノイズ/インダストリアルのオリジネーターSPKを聴いて「メロディが無い雑音や自然音でも音楽になることがすごい」と感動したという。2018年から毎月リリースして来た実験的CDRでは「ノイズやレゲエ、アンビエント、アフリカ音楽、テクノ、ハウス、ミニマル、韓国のポンチャックやサムルノリ、中東音楽、アイリッシュ音楽、ガムランやケチャなどいろんな曲を作って発表して」きた。十代の感性は、ジャンルやスタイルに関係なく、面白いと思う音楽を分け隔てなく吸収し自分の表現の中に活かすことが出来るのである。

全17曲68分強の大作で、音楽要素は多彩を極めており、彩のヴォーカルも曲によって異なる表情を見せる。筆者のフェイヴァリット・トラックM7「赤い靴/キャプテン・ビーフハートに捧ぐ」はドラびでお、T.Mikawa(Incapacitants)、ASTRO、河端一(Acid Mothers Temple)という日本アンダーグラウンド・ミュージックのベテランが参加し、サウンドをバラバラに切断したアヴァンギャルドな作風だが、あくまでポップ・ミュージックとして成り立っているのは、彩の歌の甘い響き故である。

アルバム全体でひとつのテーマ性を持っているのは明らかだが、「組曲」というより「全集」もしくは「オムニバス」的な多面性に溢れている。果たしてすべてのトラックが好きかと聞かれると、イエスとは言い切れないのが本音だが、「アーティストでもアイドルでも、自分ではそんなにこだわっていない」と語る彼女に対して、表現に於けるジャンルやスタイルを云々して語ることは意味がない。

おそらく筆者を含め、本誌のコントリビューターおよび読者の多くは、たとえ無意識であれ「ジャンル」へのこだわりが強いと想像される。しかしながら沖縄電子少女彩をはじめ、現代産まれつつあるジャンル無用の表現者に対して如何に心を開けるかどうかで、これからの音楽の楽しみ方が大きく変わる気がするがどうだろう。

来年リリースされるノイズバンド非常階段とのコラボレーション・アルバムを楽しみにしている。(2019年12月15日記)

*文中のインタビューはOTOTOYノイズ・ミーツ・ガール──沖縄電子少女彩って?より引用しました。

剛田武

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」、DJイベント「盤魔殿」主宰

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