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R.I.P. ライル・メイズNo. 263

『Solo Improvisations for Expanded Piano』 by Hiro Iida

text by Hiro Iida ヒロ・イイダ

Back in 1998, I was hired to help Lyle to create his new album, “Solo Improvisations for Expanded Piano”

We were at Right Track in NYC, just hanging and relaxing, then Lyle walked into piano every time something came down to him, and started playing the prototype of state-of-the-art Disklavier equipped Yamaha concert grand piano.  I was there to capture everything he played, audio wise and MIDI wise. (I vividly remembered Mariah Carey & Whitney Houston, along with Babyface was in the next room to record When You Believe, and both came to our room to apologize all the fuss…)

Of course we never used MIDI in order to fix “performance” (he didn’t need it!), but used MIDI playback to fix a few audio blemish, such as squeaking noise from piano bench at the end of an amazing one and only track, or make sustain pedal release longer and slower (YES, Disklavier in 1998 already had a half pedal functionality).  One of songs had to use MIDI playback entirely to retake because a door of the machine room was wide open, and we recorded piano without knowing it.  Although I don’t think the track survived in the album.

Warner Bros. screwed up my last name on the album credit (as Hiro Ito), and we both laughed “It Is What It Is”.  All good memory and I can not thank him enough to make me as a part of his creative adventure.  Rest in Peace.


遡ること1998年、アルバム『Solo Improvisations for Expanded Piano』のレコーディングをするライル・メイズを手伝う機会がありました。

ニューヨークのライト・トラックというスタジオに、当時最先端の「Disklavier」のプロトタイプを搭載したヤマハのコンサート・グランドピアノが用意されました。スタジオ内で、二人でくつろいで会話を楽しみながら、ライルに音楽が降りて来るたびにピアノに向かうという風にレコーディングは進められて、私はライルの演奏をオーディオとMIDIの両方で記録していました。(隣のスタジオでは、マライヤ・キャリーとホイットニー・ヒューストン、それにベイビーフェイスが『When You Believe』のレコーディング中で、大騒ぎのお詫びに来たのを鮮明に覚えています。)

もちろん、MIDIを”演奏”の修正に使うことはしませんでした。(その必要は全くありませんでした。) その代わり、ワン&オンリーの素晴らしいテイクのエンディングに入ってしまったピアノの椅子が軋む音など、音響上の傷を取り除いたり、サスティンペダルを少し長めに少しソフトにと調整したりしました。(そう! 1998年にDisklavierはハーフペダル機能をすでに持っていたんです。)

曲全体にMIDIのプレイバックだけを使ったこともあります。機械室へのドアが開けっ放しになっていて、それに気付かずに録音していたからです。この録音は使い物にならないかと思われましたが、これで世に残すことができました。

ワーナー・ブラザーズは、アルバムクレジットで、私の名前を間違えてヒロ・イトウにしてしまい、ライルと「しょうがないね。」と笑いました。

すべてはよい思い出で、ライルと創造的な冒険を共にできた幸運にいくら感謝してもし過ぎることはありません。

ご冥福を心よりお祈りしています。

translated by Hideo Kanno 神野秀雄


ヒロ・イイダ Hiro Iida
エレクトロニック・ミュージック・デザイナー。
東京出身、ニューヨーク在住。1985〜89年にバークリー音楽大学でミュージック・シンセシス(現エレクトロニック・プロダクション&デザイン)を専攻し、1990〜97年に同専攻の講師を務めた。シンセシスト/作曲家としてクレジットされているのは、ライル・メイズ、矢野顕子、ブレッカー・ブラザーズ、リチャード・ボナ、アート・リンゼイ、レッド+ホット・ベネフィット、ロン・カーター、ヤン・ハマー、ニューヨーク・ヴォイセズ、ミノ・シネルなど。企業としては、ニューヨーク・ファッション・ウィーク、WWE(ワールド・レスリング・エンターテイメント)、ドリームワークス、SEGA、ソニー・プレイステーション、パナソニック。三菱東京UFJ銀行、資生堂、FedEx、JVCビクター、ユニクロ、アップル・ミュージックなどがある。
現在は、ブロードウェイ・ミュージカルをメインに、『スパイダーマン』、『ジキルとハイド』、『ヤング・フランケンシュタイン』、『シュレック』、『南太平洋』、『ビューティフル』、『バンズ・ヴィジット』、『ミーン・ガールズ』、『トッツィー』などに参加し、グラミー賞も受賞。2020年3月にブロードウェイで開幕するプリンセス・ダイアナの物語『ダイアナ』、マイケル・ジャクソンのミュージカル『MJ』などを手がけている。日本発のミュージカルでは『デスノート THE MUSICAL』なども手がける。Strange Cranium ウェブサイト

ヒロ・イイダ インタビュー
https://horipro-stage.jp/pickup/deathnote20191216/

 

 

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