ライル・メイズ、あなたのピアノにはすべてがあった by 神子直之
text by Naoyuki Kamiko 神子直之
ライル・メイズのピアノは、いや、音楽は、普通の一流の人がそうである以上にオリジナリティに溢れていた。蓋を開けたグランドピアノから、草や花や小鳥たちが音に沿って湧き上がって来るイラストや動画がありそうだが、まさにそんなイメージの音楽だった。『Pat Metheny Group』<San Lorenzo>でのソロの雄大さとストーリーが進んでいくわくわくした感じ、Eberhard Weber『Later That Evening』<Maurizius>での固定された左手の分散和音に乗る右手のとつとつとした歌、Pat Metheny Group「First Circle」表題曲でのアンサンブルが薄くなったところで立ち上がり大きなうねりとなって展開するアドリブソロ、本人リーダー作Lyle Mays『Street Dreams』<Before You Go>での秘密めいた人生の機微に関わる語り口、などなど、記憶に残る演奏は枚挙にいとまがない。
ライル・メイズのピアノが琴線に触れる理由は、右手メロディ一音一音の美しさ、左手とのバランスの良さ、そしてアドリブソロにおける人生への肯定感にあふれたストーリー性、それらを支える確かなテクニックと和声と和声変化への洞察、であろうか。
もっとPat Metheny Groupでの新作が聴きたかった。もっと貴方がシンパシーを感じているミュージシャンとのコラボレーションを聴きたかった。今までも十分貴方に励まされてきたが、これからももっと力を貰いたかった。
ご冥福をお祈り致します。
ライル・メイズ、パット・メセニー・グループ、Pat Metheny Group、Stream Dreams、First Circle