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R.I.P. ライル・メイズNo. 263

クリーム色の妖精 by 坪口昌恭

text by Masayasu Tzboguchi 坪口昌恭
photo above:©Ralph Quinke/ECM

“クリーム色の妖精”それがライル・メイズの印象です。

フュージョン全盛の80年代、メカニカルなジャズ・ファンク・ロックが溢れる中、突如としてフォーキーかつホリゾンタルなサウンドで心を捉えたPat Metheny Groupのライブ盤「TRAVELS」そして続く「FIRST CIRCLE」。シンセサイザーをゴージャスかつシックに駆使しながらも、華麗なるピアニストとしての魅力が勝るあのバランス感。シンセも弾くピアニストという域を超え、音楽家ライル・メイズとしてメセニー・ミュージックを土台からデコレーションまで担っていた。私がジョー・ザヴィヌルに心酔しながらもピアノ主体のスタンスを失いたくないのはライル・メイズからの影響が大きいと思う。

流麗で叙情的なスタイルでありながらリズミックなアイデアやスキルが半端じゃない、という点はビル・エバンスに匹敵する凄さだけれど、ライルの方がテクノロジーを駆使し、ジャンルを超え、リスナーや後進ミュージシャンの感性を広げてくれた。あまりにも早くあの世に行ってしまったけれど、あちらの世界でクリーム色に輝き続けています。


坪口昌恭 Masayasu Tzboguchi(Pianist, Synthesist, Composer)
福井大学工学部応用物理学科卒業後87年に上京。ジャズとエレクトロニクスを共存させ、伝統と先鋭を股にかけ独自のキャラクターを放つ。
東京ザヴィヌルバッハ、Ortance、Radio-Acoustique、TZBOLABO主宰。映画Lily、アニメReLIFEの劇中音楽を担当。
主な参加バンドは菊地成孔DC/PRG、RM jazz legacy、原田知世など。尚美学園大学ジャズ専攻主任准教授。

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