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R.I.P. ライル・メイズNo. 263

Lyle Mays 〜音楽世界における Einstein 〜が遺した財産 by 塩谷 哲

text by Satoru Shionoya 塩谷 哲

Pat Methenyとの絶妙な音楽的相関性を感じる時、そして常に互いが刺激し合い高め合う姿を目にする度に、Lyle Maysという人の懐の深さとその天才に打ちのめされるのですが、私が憧れてしまうのはその能力の超人性が、知性と本能的感性の両方に抜きん出ている点です。

若い頃はその感性があまりにも自分に響いたために不遜にも本気で嫉妬していたこともありました。しかし改めて今、彼の音楽を聴く時、常人には想像だにできない程の高次元において楽曲を創造し、新たなピアニズムを創造し、またシンセサイザーを体温のある楽器として創造していたことに気が付きます。

Einsteinが普通の学者が考える遥か高次元において真理を探り当てたように、Lyleは音楽の真理を自然の法則として理解していたのではないか、彼の作る現代音楽の手法による不協和音に潜む圧倒的な「美」を感じる度に思います。

残念ながら彼に会うことはついに叶いませんでしたが、彼が私を知ってくれていたということ、そして私の音楽を気に入ってくれていたことを指揮者のJohn Axelrodから聞いて、彼の脳内に一瞬でも自分がいたことを誇りに思います。

Lyle Maysが遺してくれた音楽を、その本質を、今度は私達が後世に伝えていかなければなりません。


塩谷 哲 Satoru Shionoya
ピアニスト/作・編曲家/プロデューサー
東京藝術大学作曲科出身。在学中より10年に渡りオルケスタ・デ・ラ・ルスのピアニストとして活動(1993年国連平和賞受賞、1995年米グラミー賞ノミネート)、並行してソロアーティストとして現在まで12枚のオリジナルアルバムを発表する。
自身のグループの他、小曽根真(p)との共演、佐藤竹善(vo)との”SALT & SUGAR”や上妻宏光(三味線)との”AGA-SHIO”の活動、リチャード・ストルツマン(cla)、渡辺貞夫(sax)、村治佳織(g)、古澤巌(vln)ほか多数のコラボレート、Bunkamuraオーチャードホール主催のコンサートシリーズ「COOL CLASSICS」(99年~01年)のプロデュース、オーケストラとの共演 (2017年大阪交響楽団、2017,18年NHK交響楽団)等、活動のジャンル・形態は多岐に渡る。
近年は絢香のサウンドプロデュースに参加。メディアではNHK「名曲アルバム」にオーケストラ・アレンジを提供する他、NHK Eテレ『趣味Do楽“塩谷哲のリズムでピアノ”』(2014年)、フジテレビ系ドラマ『無痛-診える眼-』(2015年)、現在はNHK Eテレ音楽パペットバラエティー番組『コレナンデ商会』(2016年~)の音楽を担当している。2012年より国立音楽大学講師。(敬称略)
earthbeat-salt.com

 

【参考記事】
N響JAZZ at 芸劇 2017 (塩谷 哲、ジョン・アクセルロッド指揮 NHK交響楽団)
ライル・メイズ逝く (1953.11.27-2020.2.10)

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