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R.I.P. リー・コニッツNo. 265

無知への挑発、無垢への挑戦 by 内橋和久

text by Kazuhisa Uchihashi 内橋和久
photo: from private collection of Kazuhisa Uchihashi

1996年に私が神戸で主催した「フェスティバル・ビヨンド・イノセンス」の第一回 (後11回まで開催) にリー・コニッツさんは出演してくださいました。

彼がデレク・ベイリーと共演しているのも知っていましたが、私には彼がフリージャズミュージシャンという認識がなかった。と言うのも彼の音はとてもメロディックで独特の甘いトーンが印象的だったから、当時どちらかと言うとジャズの巨匠という印象の方が僕には強かったと思います。というわけで、彼を迎えるのに正直緊張していました。彼は愛想の良い感じではないものの、こんな無名のプライベートなフェスティバルに快く出演くださり、同じく無名の私なんぞと共演を承諾してくださる懐の大きさに感謝感激でありました。

その時の演奏がどんなだったかなど全く覚えていません。ただ私が覚えているのは、レコードで聴くのとおんなじ音が間近に感じられたことと、共演した時間があっという間に過ぎ去った事でした。フリーミュージックのあり方に些か疑問を持っていた頃だったので、彼のようなフリーフォームでありながら、パワープレイに走らず、歌心がある人に出会えた事は、私にとってはとっても救いでもありました。あの時以来お会いする機会もありませんでしたが、あの響きは今でも私の身体に響いています。そしていつまでも、未知なるものへの探究心を忘れない彼のスタンスに私はいつでも励まされています。


4年後のフェスティバルの時にコニッツさんが寄せてくれた言葉


内橋 和久 Kazuhisa Uchihashi
ギタリスト、ダクソフォン奏者、インプロヴィゼーショントリオ/アルタードステイツ主宰。 劇団・維新派の舞台音楽監督を30年以上にわたり務める。音楽家同士の交流、切磋琢磨を促す「場」を積極的に作り出し、95年から即興ワークショップを神戸で開始する。その発展形の音楽祭、フェスティヴァル・ビヨンド・イノセンスを96年より毎年開催2007年まで続ける。これらの活動と併行して歌に積極的に取り組み、UA、細野晴臣、くるり、七尾旅人、青葉市子、Salyuらとも積極的に活動。即興音楽家とポップミュージシャンの交流の必要性を説く。また、2002年から2007年までNPOビヨン ド・イノセンスを立ち上げ、大阪でオルタナティヴ・スペース、BRIDGEを運営。現在はベルリン、東京を拠点に活動。インプロヴィゼーション(即興)とコンポジション(楽曲)の境界を消し去っていく。
innocentrecord.com

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