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R.I.P. 沖至No. 270

追悼 沖ちゃん pianist 渋谷 毅

text by Takeshi Shibuya  渋谷  毅

沖至さん
自由な精神などと書くとおかしくなりそうだけど、沖ちゃん (こう呼ばないと気分が出ない)くらい自由に生きていた人をあまり知らない。 いうことひとつひとつにそれを感じて、批判的な言葉にも穏やかに(真面目に)答えて、そんなふうに普通であるのが特別に感じられるくらい、沖ちゃんは自由で、長くフランスにいたのもそういう人間だったからじゃないか。いつだったか「日本に住んで演奏しないのはおかしい」という意見に反論していたのを眩しい思いで聞いたことがある。 はじめて会ったのは55、6年前、横浜のキャバレーだった。亡くなった西村昭夫(ts)さんのグループにいて、その日、ピアニストのトラで行ったのだった。ブルー・ミッチェルのようによく歌うtpだった。それからあちらこちらで会った。鹿児島のコロネットというジャズ喫茶で翠川敬基、田中保積とやっているのを聴いたのはもう70年代だったか。そのときはもうフリーをやっていた。フランスに行ってずいぶん経ってから連絡をもらって日本での演奏に誘ってもらった。昔のようにスタンダードを演奏した。フリーの演奏があまりなかったのは気をつかってくれたのかも知れない。レコーディングもした。三重県のホールで名古屋フィルのメンバーとwith stringsを、アケタズディスクからも一枚。with stringsの録音は及川公生さんだったのを最近知った。 昨年もやるはずだったけれどかなわなかった。沖ちゃんは実に沖ちゃんらしく生きて、そして死んだ。


渋谷 毅(しぶやたけし)
1939年東京生まれ。ピアニスト、作編曲家。東京藝術大学音楽学部作曲科中退。在学中よりジャズ・ピア二ストとして活動、60年代前半より作編曲家として歌謡曲、映画、CMなど数多くの作品を手がける。75年に自身のトリオを結成、初のリーダー作『ドリーム』(Trio)リリース。86年「渋谷毅オーケストラ」結成。99年、敬愛するデューク・エリントンの作品を演奏する「エッセンシャル・エリントン」を結成、アルバム『Essential Ellington』(Yumi’s Alley)が「日本ジャズ賞」、01年、森山威男とのデュオ作『シーソー』(徳間Japan)が「日本ジャズ賞」「芸術祭優秀賞」受賞。06年、音楽を担当した「ライフカード」TV-CMが、第46回ACC CM FESTIVAL「総務大臣賞/ACCグランプリ」を受賞。07年、ガブリエル・ロベルトと共に音楽を担当した映画「嫌われ松子の一生」で、第30回日本アカデミー賞「最優秀音楽賞」を受賞。

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