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R.I.P. チック・コリアNo. 275

Chick gave us our life’s music. by Richard Stolzman
チックからの音楽の贈り物 by リチャード・ストルツマン

Text by Richard Stolzman リチャード・ストルツマン
Translated by Hideo Kanno 神野秀雄

Chick Corea was very much IN this world, but he was not OF this world. He transcended the normal boundaries of a jazz pianist because his whole life became an elegant and joyful improvisation with the world.

Creating spontaneous musical portraits of audience members, encouraging whole audiences to sing along with his improvised phrases, constantly communicating with his fellow band members encouraging freedom and delight with being alive. I know he was a huge mentor to my wife, Mika. He wrote three amazing compositions for her: “Marika Groove” with Steve Gadd, Eddie Gomez, and me, “Marimba Concerto” with full symphony orchestra, and “Birthday Song for Mika” which she is performing now in Japan.

I remember Tokyo Music Joy Festival and Chick loving every moment of music both classical and jazz, and setting me free to play music with an open heart. He was a god, a man, a child, and a teacher to all of us. He gave us our life’s music.

Sincerely,

Richard Stoltzman

チック・コリアは、この世界から生まれた存在ではなく、この世界を訪れ共に過ごした特別な存在でした(not OF the world, but IN the world)*。チックはジャズピアニストとしての境界線を遥かに超えていました。なぜならチックの人生は、この世界と繰り広げた高貴で歓喜に溢れたインプロヴィゼーションとなったからです。

コンサートでは観客全員に即興のフレーズを一緒に歌ってもらうように促すことで、観客ひとりひとりの心に音楽の絵を自発的に描かせました。バンドメンバーにはコミュニケーションを常に維持して、生きる歓びを感じさせながら、自由な世界へと解き放ちました。

チックは私の妻ミカの偉大なメンターであり、ミカのために3つの曲を書いてくれました。スティーヴ・ガッド、エディ・ゴメス、ミカと私のための「Marika Groove」、マリンバとフル編成の交響楽団のための「Marimba Concerto」、そして今回の来日ツアーで演奏した「Birthday Song for Mika」です。

1985年ごろに開催されていた音楽祭「Tokyo Music Joy」でチックと共演しましたが、クラシックとジャズ両方の音楽の瞬間をいつも心から愛していたチックの姿と、私もチックといたことで、心を開いて自由に音楽を奏でられたことを懐かしく思い出します。

チックは私たちすべてにとって、神であり、人であり、子供であり、師でありました。そして、チックは、私たちの人生に最高の音楽の贈り物を届けてくれたのです。

心からの感謝をこめて、

リチャード・ストルツマン

 

 

*訳註: “Be IN the world, but not OF the world.” は、聖書に使われる表現で、極めて特別な存在を意味する。リチャード・ストルツマンは、全般に格調と知性に溢れた英語で表現していて、完全な訳出も難しく、ぜひ原文を読んで感じていただければ幸いだ。


Richard Stoltzman リチャード・ストルツマン – Clarinet
50年以上に渡り、オーケストラに所属すること無く、ソロ・クラリネット奏者として活躍する比類なき存在。2017年には75歳を記念して「コンプリートRCAアルバム・コレクション(CD40枚組)」がリリースされた。
1973年、ピーター・ゼルキン、フレッド・シェリー、アイダ・カダフィアンと室内楽ユニット「タッシ」を結成。ストルツマンの独特な演奏スタイルは国際的に高く評価され、世界各地のオーケストラやアンサンブルに招かれるだけでなく、クラリネット奏者として初めてカーネギーホールでリサイタル・デビュー。武満徹「ファンタズマ/カントス」、スティーブン・ハートキ「Landscapes with Blues」、スティーヴ・ライヒ「ニューヨーク・カウンターポイント」などの委嘱作品や世界初演も多数。その才能はジャズにも存分に発揮されゲイリー・バートン、カナディアン・ブラス、チック・コリア、ジュディ・コリンズ、スティーヴ・ガッド、エディ・ゴメス、キース・ジャレット、キングス・シンガーズ、渡辺香津美、塩谷哲らと共演。これまでに60枚以上のCDをリリース、ヨーヨー・マらとの共演でグラミー賞を二度受賞。公式ウェブサイト richardstoltzman.com

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