Memory of Chick Corea by André Mehmari チック・コリアの想い出 by アンドレ・メマーリ
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Text by André Mehmari アンドレ・メマーリ
Translated by Hideo Kanno 神野秀雄
The image I’ll keep in my mind from Chick Corea in command of a piano is that of a hungry kid in front of a delicious pie. He was one of my earliest strong influences in the realm of both jazz piano and composition, when I was about 12-13 years old.
His children’s songs book was a big influence on my view of music, that of a big sea of crossing currents without borders and barriers. I even wrote a 21-piece set for solo piano inspired on his book, when I was 15.
I remember spending days and days listening to his classic 1970s records such as “Friends” and “The Mad Hatter” — and playing along with the Lp, trying to translate his virtuoso playing into my own. I specially remember his high energy Minimoog solos and by that time I was already programming synthesizers and trying to replicate those amazing sounds.
His passing was a big surprise for all of us since we didn’t know about his disease. I felt he would never die as he was always young at heart. So sad to loose this “big kid”, with his large open smile – and all the wisdom of a true music genius of our time. His legacy will endure and his smile will continue to bring light to this turbulent world, through his masterful art.
André Mehmari
チック・コリアがピアノを弾く姿は、私には美味しいパイを前にしたお腹を空かせた子供のように見えました。12際から13歳の頃、私の音楽人生の最初期になりますが、ジャズピアノと作曲の両方について私が最初に強い影響を受けた1人がチックでした。『Children’s Song』とその楽譜は、私の音楽観に大きな影響を与えました。それは境界も障害もなく、大海原の強い潮流の中を横切っていくかのようでした。そして15歳のときに、その影響からソロピアノのための21曲から成る小品集を作曲しました。
『Friends』や『Mad Hatter』のような1970年代の名盤を来る日も来る日も聴き続けては、LPと一緒に弾いて、チックの超絶技巧を自分のものとして吸収しようとしていたことを思い出します。特にチックの力強いミニムーグでのソロに衝撃を受けました。そして、当時すでにシンセサイザーのプログラミングができるようになっていたので、その素晴らしいサウンドを模倣しようとしました。
チックの突然の逝去は、私たちすべてにとって衝撃でした。誰も病気のことを知らなかったのですから。私はチックが永遠の命を持ち、ずっと若い心を持ち続けるかのように感じていました。その溢れる笑顔と、現代最高の天才的音楽家の智慧とともに、私たちが「大きな子供」チック・コリアを失った悲しみはあまりに大き過ぎます。
しかし、チックの遺産は時代を超えて引き継がれ、その素晴らしい音楽とともに、チックの笑顔がこの厳しい時代の世界を明るく照らし続けることでしょう。
アンドレ・メマーリ
Desert Air (Chick Corea)
played by 15 year-old Andre Mehmari, 1992
Chirdren’s Songs (Chick Corea)
André Mehmari アンドレ・メマーリ
pianist, composer, arranger, producer and multi-instrumental player
1977年、ブラジル・リオデジャネイロ近郊のニテロイ生まれ。5歳から母と音楽を学び始め、サンパウロ州リベイロン・プレット音楽院のオルガン課程を修了。10歳からジャズ即興演奏の独学と作曲を始め、15歳でオルガンを教えながら、キーボード初心者のための20曲からなる曲集を作曲する。1995年からサンパウロ大学でクラシック・ピアノを学び、その大学内の音楽コンクールMPB部門で優勝し、1997年にクラシック部門でも優勝。
1998年ブラジルで最も有名なVISA MPBコンペティションで優勝し、その賞品としてファーストアルバム録音の機会を得る。1999年自宅のスタジオで、全26の楽器を演奏、多重録音によるソロアルバム『Canto』を制作し2002年にリリース。2005年7月ブラジル人歌手のジョイス・モレーノと共に初来日。モーションブルー横浜で2日間の公演を行う。2008年自己のレーベルEstúdio monteverdiから『…de arbores e valsas』リリース。曲毎にゲストを迎えつつ、自身が多数の楽器を演奏し多重録音した作品が話題となる。自宅のスタジオで録音、ミックス、マスタリングを全て自分自身で行い、自分のレーベルからリリースした。
2011年4月ピアノソロ・ツアーで、10月ガブリエル・ミラバッシとのデュオツアーで来日。2011年11月多数の豪華ゲストを迎え全30曲の大作2枚組『Canteiro』日本盤を発売。アミルトン・ヂ・オランダとの共作では、2007年に『Continua Amizade』、2011年に『Gismontipascoal』をリリースしている。 2013年11月「ピアノ・エラ」を含むソロツアーで来日、その東京公演は『Tokyo Solo』(NRT)としてリリースされた。2016年のリオデジャネイロ・オリンピックの閉会式の編曲を担当した。2019年の来日ではピアノソロ公演に加え、ビッグバンドなどとも共演した。2020年末にも来日が予定されていたが、COVID-19のため延期となっている。
アンドレは演奏者としての国際的なキャリアに加えて、ブラジル国内で最も人気の高い作曲者、編曲者の1人。さまざまな楽器を演奏するマルチミュージシャンであり、ミキシングやマスタリングまでも行い、森の中にある「スタジオ・モンテヴェルディ Estúdio monteverdi」で、ジャンルやスタイルの境界なく常に音楽を創り出している。
アンドレ・メマーリ公式ウェブサイト(ポルトガル語/英語)
(日本語版Facebookとウェブサイトをもとに加筆作成)