#03 『soraya/BAKU – 耳を澄ませて』〜壷阪健登&石川紅奈

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Text by Hideo Kanno 神野秀雄

『soraya/BAKU – 耳を澄ませて』〜壷阪健登&石川紅奈


BAKU
lyric: Kurena Ishikawa  石川紅奈
music: Kento Tsubosaka 壷阪健登
bass & vocal: Kurena Ishikawa 石川紅奈
keys & arrangement: Kento Tsubosaka 壷阪健登
percussion: KAN
recording: Hanaho Kuroda 黒田 花穂 (Aobadai studio inc.)
recording & mix & mastering: Masayuki Yoshii 吉井 雅之(Aobadai studio inc.)
Illustration: Curico Momoto


耳を澄ませて
lyric: Kurena Ishikawa & Kento Tsubosaka 壷阪健登
music: Kento Tsubosaka 壷阪健登
bass & vocal: Kurena Ishikawa 石川紅奈
piano & arrangement: Kento Tsubosaka 壷阪健登
soprano sax: Nami Kano 加納奈美
drums: Hiro Kimura 木村 紘
percussion: KAN
recording: Hanaho Kuroda 黒田花穂 (Aobadai studio inc.)
recording & mix & mastering: Masayuki Yoshii 吉井 雅之 (Aobadai studio inc.)

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COVID-19によって突如ライヴ活動が制約された2020〜22年は日本のミュージシャンにとって苦しい時代となったが、他方、新しい出会いと新しいサウンドを産むきっかけともなった。バークリー音楽大学などを卒業してアメリカで活動していた20代のミュージシャンたちの一部は一時帰国を余儀なくされたり、黒田卓也をはじめアメリカ在住の中堅の日本人ミュージシャンの来日の機会が増えたりする中で、これまでにない音楽が熟成される機会が生まれた。

そういった中で、突如現れたのが、ピアニストの壷坂健登(つぼさかけんと)とベーシスト/ヴォーカリスト石川紅奈(いしかわくれな)によるデュオユニット「soraya」だった。1922年4月、結成を発表とともに『ひとり/ちいさくさよならを』リリースした。JAZZ TOKYOでもレビューを掲載し、sorayaについて解説したのでご覧いただきたい。

COVID-19による一時帰国組の中でも最も衝撃を受けたのが、ピアニストの壷坂健登だった。慶應義塾大学を経て、バークリー音楽大学で学んだ後、ボストンを拠点に活動していたが、COVID-19のため活動の機会が全くなくなって、配信と料理ぐらいしかすることがなかったと振り返る。他方、国立音楽大学ジャズ専修を卒業して都内を中心に活躍していたベーシストの石川紅奈、COVID-19下で配信を行なっていたが、その中でベースの弾き語りの動画に筆者も心を惹かれていたが、同じものをボストンの壷阪もたまたま見つけ出し、帰国したら一緒に何かやろうと連絡を取った。筆者が初めてデュオを観ることが出来たのは、1921年10月20日の「石川紅奈 デュオ with 壷阪健登 at HAMACHO DINING & BAR SESSiON」だった。このときはホテルのダイニングということもあってスタンダードとカヴァーをメインに上品かつ知的な演奏を聴かせてくれたが、すでにそれぞれの熱い演奏やオリジナルも知っていたので、ポテンシャルのある二人としてその先を楽しみにしていた。しかし、デュオで歌を全面に出してきたことには驚かされた。

本作の<BAKU>では、まず石川が夢を食べる動物「漠」を使命を持った存在として捉えながら、ユーモラスなストーリーを作り上げた。それに壷阪が曲をつけるが、BAKUという言葉に見事にグルーヴを織り込み、エスニックなポリリズムを何重にも敷き詰めて、メロディアスな歌が巧みに乗りながら、漠が生き生きと動き出す。

また特筆すべきはパーカッショニストKAN (Kan Yanabe)の参加で、タンバリン(パンデイロ)、トライアングルをはじめさまざまな打楽器を駆使して、漠と、子供たちの眠りの世界に鮮やかに不思議な色を添えている。KANはバークリー音楽大学時代からの壷阪の盟友で、石川紅奈とは、ギターの苗代尚寛とともに「レレレノトリオ」を結成している。2022年12月には小曽根真クリスマスコンサートに、11月に小曽根から声がかかりゲストとして参加した。No Name Horsesメンバーに引けを取らない活躍を魅せ、年末のオーチャードホールがKANの鮮やかなサウンドで満たされた。

<耳を澄ませて>では、パーカッションのKANに加え、ソプラノサックスの加納奈実、バークリー音楽大学出身のドラマー木村 紘が参加して、ジャズワルツのテイストを持ちながら、透明感のある不思議な世界を魅せる。

最近では、伝説のプロデューサー牧村憲一もsorayaを高く評価し、FM番組で取り上げた。大貫妙子の<くすりをたくさん>をカヴァーしていたのが、耳に留まったらしい。壷阪がこのユニットを結成するにあたって、COVID-19の閉塞感の中でニューヨーク・タイムズスクエアにいるときにSpotifyから偶然聴こえてきた<くすりをたくさん>がインスピレーションの一つとなったとも語っていて、重要なレパートリーだ。ともあれ、ここからもわかるように、ジャズミュージシャンという枠に留まらず、より広く深いヴィジョンと強烈な個性を持ちながら、日本のポップスシーンにも影響を与えていくのではないだろうか。他方、二人にはアメリカで、そして世界でも活躍してほしいところ。今後が楽しみなユニットで、早くも次作が待ちきれない。

soraya – ちいさくさよならを (Official Lyric Video)

soraya – ひとり (Official Music Video)

soraya live at ondo -digest movie-

壷阪健登 くすりをたくさん(大貫妙子)
※sorayaより前に、壷阪自身が歌っているヴァージョン

● 『Remboato/星を漕ぐもの』 (nagalu)

2020年頃〜22年にかけて、良質の新しいサウンドを提示してきた注目すべきレーベルに、福盛進也がプロデュースするnagaluと、沢田穣治がプロデュースしてきたunknown silenceがあり、2023年の動きも注目したいところ。福盛、沢田、望月慎一郎の『Trio 2019』関連ピアノトリオの共演があることも含めて、両者の人脈はオーバーラップする。福盛はECMからリーダーアルバム『For 2 Akis』(ECM2574)をリリースしているし、沢田もECMからの影響を公言していて、もちろん両者ともその先の地平を目指し、既視感のない音を創り出す。

nagaluからのアルバムでは、特に『Remboato/星を漕ぐもの』 (NAGALU-005/6)を挙げておきたい。メンバーは、福盛進也(ds)、藤本一馬(g)、栗林すみれ(p)、西嶋徹(b)。メンバーそれぞれの描く素晴らしいオリジナルの数々とインタラクティヴに生み出される自由で美しい響き。ライヴも精力的に行なっているので、ぜひ足を運んでいただきたい。

Remboato “Even In Darkness”
nagalu Festival 2021 at Cotton Club Day 3 (1st)

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

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