#01 『Chris Pitsiokos / Art of the Alto』
『クリス・ピッツィオコス / アルトの芸術』

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text by 剛田武 Takeshi Goda

CD/DL : Relative Pitch Records – RPRSS012

Chris Pitsiokos : Alto Saxophone

1. Dolomite(苦灰石)
2. Basalt(玄武岩)
3. Feldspar(長石)
4. Gabbro(斑れい岩)
5. Shale(頁岩)
6. Obsidian(黒曜石)
7. Sandstone(砂岩)
8. Anthracite(無煙炭)

Recorded by Jason Rostkowski at GSI studios January 12, 2022.
Mixed by Chris Pitsiokos
Mastered by Ryan Power at Fresh Pond Road, April 2022
Cover art by Keegan Monaghan
All music by Chris Pitsiokos (BMI)

chrispitsiokos.com

デビュー10周年、クリス・ピッツィオコスのサックス・ソロ実験最終報告書。

2022年はクリス・ピッツィオコスがウィーゼル・ウォルターとのデュオLP『Unplanned Obsolescence』(ugEXPLODE / 2012)をリリースしてから10周年に当たる節目の年だった。既報の通りピッツィオコスは2022年1月に活動拠点をベルリンに移し、現在ヨーロッパ各地で活発な演奏活動を行っている。彼がヨーロッパへ旅立つ直前の1月12日にニューヨークのGSIスタジオでレコーディングしたのが本作『Art of the Alto』である。《アルトの芸術》とは些か仰々しく聞こえるかもしれないが、ピッツィオコスが10年間の活動を通して探求してきたアルトサックス・ソロの集大成に相応しいタイトルに違いない。

彼はこれまで7作のサックス・ソロ作品をリリースしている。

2015  Oblivion/Ecstasy (MC/DL)
2017  Valentine’s Day ‎(DL)⇒Disc Review
2020  Speak In Tongues ‎(CD/DL)⇒Disc Review
2020  Aswoon (DL)
2021  Milquetoast ‎(DL)
2022  Two Live Solos ‎(DL)
2022  Art of the Alto (CD/DL)*本作

多作なミュージシャンは他にも沢山いるから、10年間に7作は決して多いわけではない。しかし音数の多さとスピードで測定したら、他の奏者のサックス・ソロ作の倍以上に濃縮された作品ばかり。1枚に2枚分の音が詰まってコスパ抜群!(笑)。冗談はさておき、音楽演奏がアスリート(競技者)に例えられることはよくあるが、ピッツィオコスのサックス演奏に色濃く感じられる醒めた視線と冷徹な意志は、むしろサイエンティスト(科学者)に近いように思える。サクソフォンという楽器から生み出すことのできる音の可能性を、自らの身体で実験しながら同時に分析しているのである。そう考えると、10年に亘るサックス・ソロ実験の最終報告書として完成した作品の楽曲タイトルに鉱物の名称を付けた意図が理解できる。

サーキュレーションブレス、フラジオ、フリークトーン、高速タンギング、ロングトーンのドローンなど卓越したテクニックを駆使してサクソフォンへの愛に満ちた実験を続ける若きマッド・サイエンティスト=クリス・ピッツィオコス。2023年春には大友良英とのデュオでのヨーロッパ・ツアーが決定しているというが、2017年の初来日以来、日本の地を踏んでいない彼の再来日公演が実現することを祈ってやまない。(2022年12月21日記)

 

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。会社勤務の傍ら「地下ブロガー」として活動する。近刊『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。 ブログ「A Challenge To Fate」、DJイベント「盤魔殿」主宰

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